南からの日本文化〈下〉~南島農耕の探究 (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140019818

作品紹介・あらすじ

「南島農耕文化」という文化クラスターが南西諸島に古くから存在し、南島の生活文化の伝統を長く支えてきた。「農耕」は古い時代に、南から北へ伝播したものである。本書は、南島農耕論を構築する上で基礎となったバタン島、台湾山地先住民、そして沖縄諸島のフィールドワークの記録である。日本文化の基層にある「北からの文化」と同様に「南からの文化」の伝統を提示し、単一・同質と捉えられてきた日本文化の豊かな多様性・多文化性を指摘する。

感想・レビュー・書評

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    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    下巻は主に東南アジアの農業のフィールドワークの調査結果をまとめた内容になっている。
    主にバタン島、台湾のアワやイモが中心の農業は日本の農業とは全く異なり、大変に興味深い内容だった。
    特に生産量の多いサツマイモよりも生産量の少ないアワの方が重要視されていることが、これらの地域の農業の歴史が反映されているというのは、なるほどと感心した。

  • 2003年刊。上下巻中の下巻。

     タイトルに比し、本作は
    ① 沖縄を中心に、オーストロネシア型稲作が如何に展開したか、
    ② その中でイモ(地域によりサトイモ・ヤマイモの差はある)の澱粉供給元としての重要性、
    ③ 稲作といいつつ、その実は、イモとの両建ての、粟を中心とする雑穀(陸稲含む)畑作、即ち焼畑、
    ④ 水田稲作型とオーストロネシア型稲作の差は顕著、
    ⑤ 17世紀以降に新世界より流入したサツマイモが変えた当地の農業と食性
    などを叙述する。

     それゆえ、
    ⑴ オーストロネシア型稲作(播種前、家畜による踏耕耘が特徴)の特徴が日本農業に残滓?。
    ⑵ 日本の、特に山地・山間地に残存した焼畑農業・雑穀畑作の縄文期以降の展開(水田稲作以外の遺構の分析)、
    ⑶ 水田稲作地域における、粟ほかの雑穀栽培の実際と、それのオーストロネシア型稲作との異同、
    ⑷ オーストロネシア型稲作、その源流たる照葉樹林農業と不即不離の漁撈方法に関する、本土水産業への影響と残滓の検討

    が必要だろう。
     が、熱帯ジャポニカの本土流入と人為的交配、そのハイブリッドが本州北方の水田稲作を生んだこと以外、描かれるものはない。
     かように、タイトルから想起する内容を期待すると若干肩透かしを食う。

     しかし、オーストロネシア型稲作、あるいはマレー型焼畑農業と、これらの沖縄・南西諸島への伝播と展開、農耕儀礼の特徴ということに限れば、これほどの労作もないだろう。
     換言すれば、沖縄の文化的基底たる農業・農耕儀礼を見るに適した書といえそう。

     なお、下巻は①沖縄及びその周辺、②その前提足る台湾山間地と南シナ海のバタン島での農業・農耕儀礼その他の生活実態を詳述している。

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著者プロフィール

出席者
佐々木高明(前・国立民族学博物館館長/財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構理事長)
野村義一(北海道ウタリ協会前理事長)
榎森 進(東北学院大学教授)
加藤一夫(静岡精華短期大学教授)
常本照樹(北海道大学教授)
大塚和義(国立民族学博物館教授)
尾本惠市(国際日本文化研究センター教授)
吉崎昌一(静修女子大学教授)

「1997年 『アイヌ語が国会に響く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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