ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140056035

感想・レビュー・書評

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  • テーマとタイトルで面白そうだ!と期待して、ページを捲ったら色々な企みがしてあって、すごいわくわくして読んだら超肩すかしを食らった。
    まず(原文を読んでないけど)翻訳が良くない。「なんぞ?」って…。子供の言葉遣いじゃないよ。

    • 怠さん
      そう、そう。あの企みには参ったよね。
      そう、そう。あの企みには参ったよね。
      2012/07/28
    • kwrlogさん
      コメントありがとうございます!
      そうですね、文字がギューって詰まっていくのなんかは、特に面白いと思いました。ただ、肝心の中身があんまり…
      コメントありがとうございます!
      そうですね、文字がギューって詰まっていくのなんかは、特に面白いと思いました。ただ、肝心の中身があんまり…
      2012/07/29
  • 9歳の少年、オスカーは、9・11のアメリカ同時多発テロで、最愛の父を失い、それ以来、家族からさえもどこか距離を感じるようになってしまう。

    父の葬儀からしばらく経ったある日、オスカーは家にあった花瓶の中に封筒に入ったカギを見つける。
    家じゅうの鍵穴を試してみるが、合うものはない。

    唯一の手がかりはカギの入っていた封筒に書いてあった「ブラック」という文字。
    どうやら人の苗字らしい、という事だけは分かったので、オスカーはニューヨーク中の「ブラック」さんに会いに行って、父の事を、鍵穴の事を知らないか、聞いて回る事を決心する。

    鍵穴が見つかった時、父がどのようにして死んだか分かる、そうすれば、父の死の瞬間をあれこれ想像する必要もなくなる、と信じて・・・。


    この作品は、主人公オスカーの鍵穴を探すエピソードの中に、オスカーの祖父が息子(オスカーの父親)へ書いた手紙、オスカーの祖母がオスカーへ書いた手紙が交互に語られる。
    オスカーの祖父、祖母はドイツからの移民なので、英語のタイプの仕方が独特、という設定で、2人の手紙は「。」の代わりに「、」が使われていたり、文と文の間に空白があったりして、少し読みにくい。
    また、意図的にかもしれないが、人の名前があまり出てこないので、誰から誰宛なのか、最初、分かりにくいのが難点。


    ところで、本作品でのオスカーの鍵穴探しは「謎解き」という程のものではない。
    そもそもカギが父親のもの、というのはオスカーの思い込みでしかないのだ。

    次第に明らかになるが、「鍵穴探し」そのものが、父親を偲ぶ行為となっている。
    確かに熱心に毎週末「ブラック」さんに会いに行くが、どこか必死さを感じない。
    むしろ、相手の話をじっくり聞いて、最後にカギについて聞く事が多い。
    聞きたいのはカギの事か、相手の話なのか、分からないこともしばしば。

    それでもラスト近くになって鍵穴は見つかる。
    が、オスカーは、そのカギが花瓶の中に入れられた経緯については詳しく聞くが、そのカギで開けたものの中に何があるかについては、興味を示さない。
    むしろ「鍵穴探し」が終わってしまう事に不安を感じる。

    「さよならもいわずに」(上野顕太郎)の中で、「弔問客には来てもらうだけでいい」と言う著者に対して、葬儀社の人が花かお線香をあげてもらう方がよい、と勧めるシーンがあった。
    葬儀社の人が言うには「何か形があった方が送り手の方が安心するもの」だから、だという。

    オスカーにとっての「形」が、この「鍵穴探し」だったのだろう。

    ところで、「鍵穴探し」は、オスカーにとって、当初、父親を偲ぶ行為であったが、次第に家族(特に母親)との「絆」を思い知る行為にもなった。
    どこか距離がある、と思っていたのはオスカーだけで、実は「ありえないほど近い」距離にいたのだ。

  • この作家さんの表現の仕方がすごかった。
    主人公の男の子がすごく魅力的で、彼を取り巻く人々も愛に溢れていた。
    心の傷、トラウマ、家族を失う悲しみ、支え合う人たち。
    9.11によってお父さんをなくしたことがメインだけれど、それだけじゃない。たくさんの感情をこの本から受け取った。

  • 圧倒的に溢れだす言葉、そして各所に挿入される視覚的表現によって全くもって小説の枠に収まりきらない読書体験をもたらしてくれる一冊。

    主人公オスカーの統合失調症的な思考から繰り広げられるシュールな展開と、行き着く先のわからない2者による手紙が何とも言えない倒錯感をもたらすのだが、絶妙な感覚で意味をなす物語となっている。

    「家族の喪失」という根底にあるテーマを巧みに表現し、随所でぐっと切なさを感じる作品だった。国内作品だとこんなに感情の渦巻く完成度の高い作品には出会えない。やはり翻訳ものはいいと感じた。

  • 全米ベストセラー、人気若手作家による9・ 11文学の金字塔、ついに邦訳。9歳の少年オスカーは、ある鍵にぴったり合う錠前を見つけるために、ママには内緒でニューヨークじゅうを探しまわっている。その謎の鍵は、あの日に死んだパパのものだった……。全米が笑い、感動して、心の奥深くから癒された、時代の悲劇と再生の物語。ヴィジュアル・ライティングの手法で編まれる新しい読書体験も話題に。

  • 映画に興味津々でしたが見損なってしまったとき、本屋さんで出会った一冊。仕掛けがいっぱい?どんな効果が?なぜこういった構成に???
    と、本にも一目ぼれ。

    さて、内容といえば、その構成、仕掛けを最大に生かして、視覚的にもページを繰ることもできるし、オスカー少年の悲しみにも、9.11の事実にも感情を這わせることができる。

    何より、3.11を経た私たちは、突然大きな何かを失った悲しみに同調してしまう。

  • 一読した感想をまとめると「ものすごく読みづらくて、ありえないほど痛い」というところ。
    さまざまな写真が挿入され、誰が誰に語りかけているのか分からない手紙も頻繁に登場し、混沌としています。
    なんだかよくわからない、ごちゃごちゃした情報を与えられ続けて頭が混乱しますが、これは9.11同時多発テロ体験後の自己制御が難しいメンタリティを表しているのかもしれません。

    もともと、現代アメリカ文学が得意でない私は、あまりにも斬新で実験的なこの本に早々に苦手意識を持ってしまったため、漠然としか読めず、理解も中途半端だろうとあきらめてしまいました。

    NYの聡い少年という設定からして『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が原型となっているような気がします。
    時代も人物もごちゃごちゃになって登場しますが、読み進むうちに、どうやらそれが一本の線の上での共通点がある複層的なものだとわかってきます。
    悲しみの連鎖のよう。人は、あまりにつらい体験をすると、話したくなくなるか、話せなくなるか、とにかく上手に消化できずに苦しむのでしょう。

    主人公の少年の、利発で明るい日常が、実は情緒不安定で破綻だらけだということにもそれは現れています。
    父と息子の関係。父を失った息子、息子を失った父親。息子と父、そして祖父。
    個人の生活とは関係ないところで戦争は起こり、それが個人の生活をめちゃめちゃにするという悲劇。

    9.11で突然父親を失った家族。9歳の少年には重すぎる現実を、もがきながらも自分なりに受け止めて、納得していこうとする様が描かれますが、とにかく予想のつかない発想と行動をとる子のため、読者はあっちこっちに振り回されっぱなし。
    しかし、タンバリンでリムスキー=コルサコフの「くまんばちの飛行」が演奏できるなんて、ただ者ではない9歳です。

    混沌とした文章が、少しずつ統一性を持って最終章に至るという流れは素晴らしく、ドレスデン爆撃や広島原爆の話にさえ言及しているため、この作家の力量がうかがえますが、私の好みではありませんでした。
    読む人を撹乱させる仕掛けがあまりに多すぎます。
    単純に、装丁上で文章の周りの空白が少なく、個人的に読みづらかったというのも理由の一つです。

    さまざまな掲載写真は、その話が出ているページではなく、半端なところでまとめて挿入されているため、該当箇所を思い起こしているうちに更に話の地点が見えなくなってしまいます。

    カラーの落書きページがあったり、文章に赤線や丸が引かれていたり、伏字だったり、実に4ページ分に渡る数字の羅列だったり、かなり読んでいてつらかったのですが、(もう無理だ)と思ったのは、どんどん行間が狭くなってきたかと思うと、文章が重なって、少しずれた形でプリントされていたかと思うと、次のページではさらにそのずれた文章が増え、最終的には読めない文章の重ね印刷でページが真っ黒になっていた時でした。(P369からP382辺り)

    (もうこれは読むなということなんだろうな)と思って、一読者として落胆しました。
    文章の印字そのものに視覚的なトリックは必要ないというのが私の考えなので。

    それらの表現全てが、9.11以降コントロール不能になった喪失の辛さに苦しむ心理状態を表しているというのなら、仕方がありませんが。
    ホーキング博士が少年からの手紙に返信する形で、実名登場したのには驚きました。
    やはり世界的な宇宙物理学者であるだけに、故人の死の受容にもがき苦しむ地上の人々から、もっとはるか高みからの視点で語られた内容でした。

    最後に乗っていた、世界貿易センタービルから飛び降りた男性の写真。
    顔を背けたくなりますが、この写真が、連続して撮られていました。
    それを、逆に載せているのです。
    男性の身体が下から上に上がっていき、ついには見えなくなったところまで。
    あとがきで、訳者はそれが「安らかな読後感がある」と書いていましたが、私は悪趣味にしか思えませんでした。

    この作家の、もう少しスリムで凝縮された話を読んでみたいものです。
    映画化され、有名な俳優が名を連ねているため、観たいと思います。
    この前衛的な原作がどんな風に映像化されたかも気になります。
    むしろ、映像化しやすい作りとなっているような気もします。
    映画から先に入った方が、抵抗が薄かったかもしれません。

    映画を見て、気に行ったら、再読してみようと思います。
    その時にはこの文章にも慣れて、詳細まで楽しめることでしょう。
    悩み苦しみ、愛する人を探し続ける人物たちの中で、少年の鍵探しを手伝う、言葉を一切語らない「間借り人」の存在感が印象的でした。

  • 甘糟りり子さん主催のヨモウカフェに参加した時の課題本。

    不謹慎かもしれないが、僕にはこの話は理解できなかった。あらすじを簡単に書くと9.11のテロで完全に人生が変わってしまった家族の話である。

    主人公は多感であるが、お父さんの死をきっかけに精神的に病んでしまっている。テロが起こったときに学校を強制的に帰らされ、家に戻った時にお父さんから電話があったにも関わらず応答できずにそれをずっと引きずっている。そして少しいらだつことがあれば自分にあざを作る(自分を傷つける)。

    この話は悲しいことをとてつもなくシニカルに描いている。カートヴォネガットの影響を受けたのではないかと参加者が仰っていたが、そうなんだろうな。僕は彼のことをよく知らなかったので、彼の著作を検索してみたが彼の著作は絶望をシニカルにかく作品が多いそうだ。そして村上春樹をはじめかなり多くの作家に影響を与えたそうだ。

    僕は読んでいて感情移入ができなかった。本の構成が3点から構成されており、オスカーの話、お祖父さんから息子に語りかける話、そしておばあさんからオスカーに語りかける話というように頭の中を整理するのがすごく難しかった。しかし最後に3つの視点が収束していって話が終わっていく。

    3.11に共通する話であるというが、僕にとって3.11は人生を変えたというほどのものではない。いや正確に書けば事件を忘れようとしている自分がいるのかもしれない。人は嫌なことがあれば、それを忘れようとする脳の機能があるからだ。本当に被災した人には失礼を承知で書くが、直接自分の周りに起きた事件(家族が被災したとか)ではないので、自分の中ではかなり事件が風化してきている。それでもあの時の映像を見ると目を背けたくなる自分がいるのも事実だ。同じ日本人として悲しい気持ちがあるが、でも涙は出なかった。

    僕は逆に日本人としてどうかと悩むことがある。あれだけの惨事に関わらず悲しい気持ちはあるが、涙は全く出ない。僕は昨年実際に被災地にはボランティアに行った。あの時の状況は被災した人にはとても申し訳なく思っている。なぜなら自分がいかに恵まれている環境で生活できているからだ。

    でもこれだけは言える。僕は震災で被災した東北の復興には期待しているし自分が出来る範囲で協力はするつもりだ。ただ復興に向けて政府の対応が著しく遅いことには苛立ちを隠せない。だから市民自ら手を上げて復興を進めようとしている、こういう取り組みは非常に重要で、国を頼るという考えを根本的に変えるきっかけになればいいと思う。

    明治以降変わっていない政治システムが東北から変わることを期待する。

  • 読みづらくて序盤で断念しかけてたけど、主人公の男の子がかわいくてなんとか読んだ。けれど後半までのめりこむ感じはなかった。
    面白かったけど、読んでて楽しくはない。
    きっと日本語訳には限界があるんじゃないかな。原書で読みたい。

    映画は全く知らないから、子役が出るなら観てみたいなあ。
    っていうか映画のレビューをここに書いてるひと何なの。見づらいよ。

  • 主人公の少年オスカー・シェルは9.11で大切なパパを失った9歳の少年。彼はある日、パパの部屋でひとつの鍵を見つける。パパが残した鍵、そしてそこに書かれていた”ブラック”という名前。このブラックと言う人を見つければ、パパが残した鍵がどこの鍵なのかわかるはず。オスカーはニューヨーク中のブラックを訪ね始める・・・。
    ちょっととりとめなくなるかもしれないが、感じたことを書き連ねていくことをお許し頂きたい。

    「9.11文学の金字塔」という売り文句にはいろんな意見があるだろうが、一方で9.11という題材だけでなく、第二次大戦中に英米が行ったドイツのドレスデン爆撃なども交差させながら、唐突にして圧倒的な死の到来に対峙する人々(少年だけでなく、若者や老人も含む)を描くことによって、9.11をいたずらに悲劇化していない点は評価できる。

    オスカーを始めとして、ここに登場する人々が恐れるものは「死に対峙する人間の行動」だ。オスカーは必ずしも死を恐れてはいない。彼は夜中に墓地に入っていくし、ハムレットの劇も恐れない。
    彼が恐れるのは「死に対峙した時の人間」だ。その時に人はどう感じ、どう考え、どう行動するのか? 誰も確かに答えてはくれない問いを彼は恐れている。(何故彼がその答えを恐れているのかは、物語の最後に明らかになる)
    オスカーが「パパがどんなふうに死んだか知る必要があるんだ」と言うのは、そのためだ。(そして、死んでしまったパパはその答えを知っている)
    オスカーがスティーブン・ホーキングに憧れているのも、ホーキング自身がその持病(筋萎縮性側索硬化症)によって余命いくばくもない状態にあることが、倒壊しつつあったワールドトレードセンタービルにいた人々と同じ状態であり、死に対峙した時にどう行動するべきかを知っている天才と感じているからではないだろうか。そして、そこからどうやれば救われるのかも。
    オスカーは物語の中で、彼の空想の発明を沢山する。彼はそうやって日々持ち上がる問題を少しでも解決しようとしている。しかし、ワールドトレードセンタービルから落ちていく人達を救う発明をしようとはしない。なぜなら彼はそれが出来ない自分を知っているからだ。

    読み終わってみて、なんとうまく練られた物語なんだろうと感心した。

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著者プロフィール

1977年、ワシントンDC生まれ。プリンストン大学在学中に作家のジョイス・キャロル・オーツに才能を認められ、2002年に『エブリシング・イズ・イルミネイテッド』(ソニー・マガジンズ。電子版はNHK出版)で作家デビュー。全米ベストセラーとなった同書はガーディアン新人賞、全米ユダヤ図書賞など多くの賞を受賞、世界30カ国で刊行された。2005年に発表した長篇2作目『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(NHK出版)も各方面で絶賛され、ロサンゼルス・タイムズ、シカゴ・トリビューンなど各紙でベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーに選出。同書はハリウッドで映画化され、アカデミー賞にノミネートされた。2009年に食をテーマとしたノンフィクション『イーティング・アニマル』(東洋書林)を発表し、アメリカの食肉・水産業界に一石を投じる。本書『ヒア・アイ・アム』は11年ぶりに上梓された小説で長篇3作目にあたり、前2作と異なり自伝的要素を踏まえ、多視点で登場人物たちの心情をリアルに描くという新機軸の構成が各メディアに絶賛された。ニューヨーク、ブルックリン在住。

「2019年 『ヒア・アイ・アム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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