壺の中にはなにもない

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140057131

作品紹介・あらすじ

破天荒な陶芸家の祖父との交流と、26歳にして訪れた初恋に、笑って、笑って、少ししんみりして、そして心が温まる。
疾走感溢れる筆致でユーモラスに描く、鬼才・戌井昭人の真骨頂にして新境地を拓く、至極の長篇大衆小説。

*これぞ、生きてる実感!! 《高橋久美子/作家・作詞家》
*「カツ丼くだしゃい」とギターで唄う煙の少女。 《大森立嗣/映画監督》
*戌井昭人が多様性を描くとこーなる。最高の「ダメ」人間賛歌!! 《伊賀大介/スタイリスト》
*オイ! この壺、口が塞がってるし、おまけに底が抜けてるぞ! いい加減にしろ!! 《髙城晶平/cero》
*何事もなかったかのように世界は大変容し人は寝首をかかれ動物たちは腹をかかえて笑う。 《湯浅 学/音楽評論家》
*壺の中身は……戌井さんのお父さんがいると思います。お父さんが入るような大きい壺かはさておき、とにかく中身はお父さんなのです。 《浅田政志/写真家》
*絶体絶命の危機に陥った勝田繁太郎は壺の中に逃げ込んで――。ついに鬼才の手でハクション大魔王誕生秘話が明らかに! 《豊崎由美/書評家》
*彼のゴツゴツした手の印象から、採石場などの労働者に近いものを感じて、どうしてもテレビの『はたらくおじさん』を鑑賞している気分で接している人を見かけますが、それはぜんぜん間違っています!! 《中原昌也/作家》

※上記の各コメントは、「タイトル」「あらすじ」「鉄割アルバトロスケットの舞台上の戌井昭人氏のイメージ」をヒントに、好き勝手にお寄せいただいたものです。本作がどのような物語であるかは、ぜひページをめくってお楽しみください。

《あらすじ》
数々の事業を立ち上げて財を成した曽祖父、高名な陶芸家として知られる祖父、考古学者で大学教授の父。そんな一家にして勝田繁太郎(26歳)は、趣味もなく、働く意欲もなく、恋人もいない、ただのんびり平穏な生活を過ごすことが楽しみな男だった。いつもピントがずれていて、人に気を遣えず、仕事でミスをくり返しても微塵も気にしないマイペースさゆえ、周囲からは疎まれていた。
しかし、祖父・繁松郎だけはそんな繁太郎の人間性を気に入り、ことのほか愛情を注いでいた。それは、繁太郎の陶芸の才覚を見出し、後を継がせたいと考えていたためでもあった。祖父はことあるごとに繁太郎の世話を焼き、興味を引き出そうと試みるものの、当の本人にはまるでその気がない。
そんなある日、祖父とともに銀座の高級クラブ「ギャランコロン」を訪れた繁太郎は、そこのホステス・ミナミに出会う。ミナミが繁太郎に好感を持っていることを察した祖父は、繁太郎とミナミをくっつけようと、繁太郎とミナミ、そして自分とクラブのチーフママであり愛人の蘭の4人で茅ヶ崎にある別荘へ旅行する計画を立てる。繁太郎以外の3人は楽しみに胸を膨らませるが、果たして祖父の思惑どおりに事態は進むのか? そして、繁太郎の成長のときは果たして訪れるのか——。

感想・レビュー・書評

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  • 「繁太郎の良いところは、人の悪口を言わない、あくせくしたところがない、おおらかであるところ」とあるが、これはもう実家が太くてコネがあるから、おおらかで気遣いゼロで済んできた、本人がぼーっとしてても、親や祖父がなんとかしてくれるからおおらかでいられただけのことと思ってしまった。ただ、ダルヌル研究所に入ってからの営業っぷりは、「人は居場所のためならがんばれる」という感が強く。「祖父の壺なんて、そもそも不可解なんですよ。元をただせば、ただの土です。そこに祖父の手が加わったからといって、何百万円とかの値段がつくのがおかしいんです。壺なんて、ただの容れ物です。壺の中なんて空洞じゃないですか。その空洞部分にお金を払っているようなもんですよ」には笑ってしまった。ただ、最後に、自分でやってみることによって、その見方もかわっていくのだけれども。繁太郎とまわりのひととのやりとりは、落語的なおかしみも。

  • 朝日新聞の文庫書評で知る。演劇出身らしい著者の細かいディテールと大雑把で大胆なストーリー展開の組み合わせがとても面白い。
    横道世之介風の勝田繁太郎(26歳)がいい味を出していて、思わず応援したくなる。3.9

  • 主役が嫌い
    ぼんやり生きてんじゃねーよ
    とイライラしたけど
    ほんとは羨ましかったりしてー
    うまく転がってく人生、いいなー

  • 勝田繁太郎、26歳、独身。南米で財を成した家系の子孫。祖父は高名な陶芸家である。性格はマイペースで人を気遣うところがない。思ったことは口に出してしまい、仕事もどこか抜けていて、あらゆる人から疎まれる。そんな繁太郎の才能を見出し、祖父は陶芸を継がせようとする。破天荒な祖父とマイペースな繁太郎の会話が面白い。タイトルと物語の関係も好き。
    いろんな生き方を肯定している物語にも感じた。

  • なんだかとても癒された物語でした。
    繁太郎、最高!そして祖父の大きな懐・・・
    また、繁太郎に会いたい。

    そして帯もユニーク、読む前、読んだ後に2度楽しめる。

  • 戌井さんの本はニヤニヤしながら読んでます。

  • 2020年、日々忙しく仕事に明け暮れた一年だった。やっとお休みでゆっくりこたつに入りながら読めた一冊。心温まり、登場するキャラクターもヘンテコだけど親しみ深く、心豊かになる物語でした。次の「さのよいよい」も読むの楽しみだなー。

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著者プロフィール

1971年東京都生まれ。劇作家・小説家。97年「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。2009年小説『まずいスープ』で第141回芥川龍之介賞候補、14年『すっぽん心中』で第40回川端康成文学賞受賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で第38回野間文芸新人賞受賞。

「2022年 『沓が行く。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

戌井昭人の作品

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