ロメオ・ダレール戦禍なき時代を築く (NHK未来への提言)

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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812204

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  • ・人間の価値は等価か?という課題
    ・自己充実と共感

  • 課題図書

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    1 ルワンダ大虐殺の悲劇に学ぶ(国家間の戦争から内戦の時代へ;目の前で起きたルワンダ大虐殺;世界がルワンダを見捨てた日 ほか)
    2 「保護する責任」と中堅国家の連携(国家主権を超える「保護する責任」;中堅国家の連携への期待;安全保障理事会と中堅国家の関係 ほか)
    3 21世紀の平和構築と日本の役割(超大国アメリカとどう向き合うか;カナダにおける平和維持活動;平和維持活動発祥の地 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 今ロメオ・ダレールの手記を読んでいるのだけれど、軍人らしさになじめなくてなかなか進まない。
    この人に興味を持とうと思ってまずは読みやすそうな対談に手を出してみた。

    大国(国連安保理常任理事国)とは違った立場での支援、大国のブレーキ的な位置で働くことができる中堅国家としての力が重要だよ、中庸の国はそこまでガツガツしてないから、中堅であるカナダや日本は外交に良心を持ち込むことができるはずだよ、という話がメイン。
    ルワンダ虐殺やフランスやベルギーがやってことの話ではなかった。そういうのが目当てだったんだけど。

    伊勢崎賢治は軍人じゃないけれど国連で戦争にかかわったりしているから一応軍関係といってもいいだろう。
    軍事力の見方に合意があるから余計な質問をはさまず語りたい部分聞きたい部分を直に聞く。話がサクサク進む。
    ただその二人が共有している前提が私の思想とは違うから、結構もやもやする。

    言っていることは理解できる。わかりやすく語ってくれている。
    しかも現実的で正しいと思う。答えに異論はないけれど計算式が気に入らないというかなんというか。

    たとえば政府に自国民を守る力がないときに、他の国は危機にさらされている国民を保護する義務がある、という「保護する責任」。
    それはその通りだし、保護するとみせかけて大国が口出しする危険についても触れられている。
    だから問題はないんだけど、この人たちの語る責任や義務は「困っている人を助けなければならない」という「大人の責任」、やったら責任感があるねと誉められるような責任のみ。
    ひっかきまわしたり火種をまいたり、してしまったことを贖う責任ではない。

    「宗教や民族争いで殺しあう人たち」というのがまずいて、それを正義の我らが善意や倫理でとめて「あげる」というつもりでいるように見える。
    自分たちのもつ力についても、「諸刃の剣だけど軍事力も必要」ではなく「軍は基本的にいいものだけど間違うこともある」という善が基本。
    一歩間違えれば十字軍やグリーンピースになりそうな危うさがある。

    たとえばダレールのメッセージ。「リーダーシップについて語ることは、未来について語るということです。なぜならリーダーは、将来について深く考える人間のことだからです。そしてリーダーの能力とは、無難にやっていくことではなく、周囲に影響を与えることです。(中略) リーダーシップの要素のひとつに、『参加する』ということがあります。つまり、そこに踏ん張り、責任を全うするということです。もし参加しなければ、たんに誰かほかの人にやらせて、何とかやり過ごすということになります。
     リーダーシップとは未来をつくること。指導者として未来をつくり、動かすのです。未来を、成りゆきでやってくるものにしてはなりません。そのために、いかに行動すべきか、考え方の基本となる枠組みを提示するのがリーダーの役目なのです」
    それはそうだけどジェノサイドの首謀者も周囲に影響を与えて未来を変えようとしたはずなんだ。
    この人の言葉の正しさはこの人の人格の正しさに依拠していて、論理としては危うい。どうとでもとれる。

    何度もでてくる「古典的な戦争」というやつも、歴史の中ではついこの間やりはじめたばかりの冷戦のローカルルールでしかない。つまり、「私の知る戦争。
    「最近の若いもんは」と同じような、自分を中心においた「今」という曖昧なものを基準にして語る論は足場がグラグラしてる。

    もっとひどいのは伊勢崎のあとがき。
    イラク戦争の自衛隊派兵は、アメリカが民間でやっているような安全な場所に限られていた。軍事力が必要な場所だから軍が必要なはずなのに、そんなもので「イラク国民は自衛隊に感謝している」「自衛隊のおかげで平和な」云々と報道するマスコミもそれを鵜呑みにする国民も民度が低い。
    みたいなことを散々書いている。
    (マスコミの大本営発表はともかく、軍事力が必要な時しか使わない軍なら災害派兵はなんなんだ?)
    それだけ民度が低いといっているのにODAの条件付け(これをやれば・やめれば援助するよ)はOKだと思っているのが不思議。そんな民度の低い国に適切な条件付けができると信じているんだろうか。
    「世界の貧困と社会保障」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4750336378の、ワーカーの思想信条しだいで援助が変わるアメリカの「福祉」を思い出した。

    民間委託を語るなら、戦争をビジネスにしちゃうことの倫理はどうなんだ?ってところも書いてほしかった。
    単にこの人は問題にしていないのかもしれないけれど。
    イラクやアフガンで「保護する責任」というならまずアメリカから保護しなくちゃいけなかったんじゃないの?とか、アメリカの攻撃をとめられなかった(むしろ加担した)立場で中立を保てるなんてことがあるのか?とか、「守ってやる」以前に「害さない」責任があるんじゃないのか?

    正義のダブルスタンダードに言及しているにもかかわらず、自分の正しさが都合よくコロコロかわるのが理解できない。
    ふたりとも自分のかかわっているところしか見えていない感じ。

    いろいろ考えるきっかけにはなったけれど、良くない意味で疲れる読書だった。

  • 新たな平和構築の形の一つとして「保護する責任」の概念が国連サミットで提唱された。

    古典的な紛争や安全保障の概念に囚われたままだとより現実的なPKO活動やNGO活動を行うのは難しいと感じた。

    これから平和構築論に求められている変化の概観がつかめた。

  • 2010年22冊目。

  • 映画『ホテル・ルワンダ』を観た人であれば、ロメオ・ダレールを知っているはずだ。ニック・ノルティが演じたオリバー大佐はロメオ・ダレールがモデルになっている。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20101130/p6

  • ナイーブなカナダ軍人へのタフな日本人学者のインタビュー《赤松正雄の読書録ブログ》

     「これ以上どんなおぞましいことを伝えることが出来るというのか。灼熱の太陽のなかに立ちこめる死臭…。死人に群がり、死人をむさぼるハエ、ウジ虫、ドブネズミ…。神はいったいどこに行ってしまったのか」―ロメオ・ダレール(元国連平和維持部隊司令官)は、著作『悪魔との握手』で、ルワンダで虐殺を止められない自らへの怒りと、介入を拒みつづける国際社会への憤りを綴っている。そして、その後彼は自責の念から精神障害を患い自殺未遂事件をおこしてしまう。もっとも今では、それを克服しカナダで上院議員を務め、「保護する責任」の考え方を提唱している。

     ダレール氏に対する伊勢崎賢治氏(東京外大教授)を聞き手としたNHK未来への提言シリーズ『戦禍なき時代を築く』を読んだ直後に、党の外交安全保障調査会に伊勢崎さんを講師として招き、話す機会があった。数ある著作のなかでもこの本が一番好きだという。インタビュー仕立てだから彼自身が書いているくだりは少ないのだが。自殺しようとした彼の心の葛藤にショックを受けたむねを私が伝えると、「軍人のくせにナイーブなんですよ」との答えが返ってきた。同じような現場をシェラレオネやアフガンなどで遭遇してきても、けろっとして次々と紛争地を求めて歩いてきた彼とは随分と違う。「全くタフですね、伊勢崎先生は。むしろナイーブな人の方に私は共感を感じますよ」と口走ってしまった。決して嫌味ではない。超人ですねと言いたかったのだ。

     21世紀の平和構築を考え、日本の役割を模索するなかで、実際に地獄の渦中に飛び込んで悪戦苦闘してきた二人の対談は、私たちにとって強い刺激になる。

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