NHK「100分de名著」ブックス 万葉集

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816738

作品紹介・あらすじ

七世紀初め、飛鳥時代の舒明天皇の治世から、八世紀半ば、奈良時代までの百三十年間の歌およそ四千五百首が収められた日本最古の歌集『万葉集』。五七調で紡がれる定型詩は、いかにして成立したのか?額田王、柿本人麻呂、大津皇子、山部赤人、大伴旅人、山上憶良、大伴家持…。大きく四期に分けられる作風の変化を代表的歌人の歌でたどりながら、日本人の心の原点を探る。書き下ろし特別章「相聞歌三十首選」収載!

感想・レビュー・書評

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  • 佐佐木幸綱
    万葉集

    個々の歌の理解は進まないが、万葉集の体系や背景は十分理解できた。130年かけて作られただけあって、たしかに壮大。年表を見るかぎり、記紀の存在が小さく見える


    五穀豊穣を予祝する春の歌で始まり、よき未来を予祝する正月の歌で終わる構成は、ハレの神事とケの稲作農耕を思わせる。時代が変わるとともに 公的(政治的、儀礼的)な歌から、私的な歌に変化しているという指摘は なるほどと思う


    4つ時代区分のうち、一番興味深いのは、最後の4期。大伴家持、大伴坂上郎女、東歌を解説とともに読んでみたい。古語すら読めないのに、東歌の方言まで出てきて カオス


    *初期万葉集に見られる混沌
    個人が短歌という定型歌を作る前に、集団の歌〜複数の声を抱き込んだ歌があった〜個人の歌にみられない混沌

    *おのがじし
    人それぞれ、めいめいの意味
    おのがじしの生き方が現れてさ、個の抒情が芽生える
    万葉集の多彩さ

    *気分
    後期万葉集の時代は、個の自覚が進み、孤独を歌う歌が多くみられる
    気分という流動的かつとらえどころのない心の状態

    3つの部立
    *雑歌〜儀礼、行幸、旅、宴席など公的な場で作られた重要な歌
    *相聞〜男女の恋を歌う私的な歌
    *挽歌〜葬送の歌、辞世の作

    挽歌
    いかさまに思ほしめせか(どう思いになったのか)は、挽歌のキーワード

    万葉集第1期
    *舒明天皇から壬申の乱(672)
    *宴席の歌〜コミュニケーションツール(共通言語)としての挨拶歌、季節歌
    *言霊の宿る歌 額田王
    *天智天皇挽歌

    言霊信仰〜言(言葉)の持つ霊力が事(現実)を引き寄せる

    国つ神(山の神、川の神)と次元の違う天つ神(天皇)が全国を統一し、神々の中央集権制度をしいた

    旅の楽しさ、旅愁がうたわれはじめたことが万葉集の旅の歌の特徴


    万葉集第2期
    *奈良還都(710)まで
    *壬申の乱を勝ち抜いた天武天皇の讃歌
    *柿本人麻呂 持統天皇の吉野行幸(吉野讃歌)

    持統天皇の吉野行幸
    大化の改新、壬申の乱を経て、律令制が軌道にのる。吉野は、天武・持統王朝の聖地

    万葉集第3期
    *山上憶良 没年(733)まで
    *都市生活と個
    *長歌から短歌へ


    万葉集第4期
    *天平宝字759年正月まで
    *大伴家持
    *大伴坂上郎女〜女性で最も多い歌を万葉集に残した

    大伴家持 共通テーマ
    音、声によって物悲しさ、愁いが深められていく。春愁の「気分」

    東歌(東国で採集された歌)の特徴
    *東国の方言の入った歌〜一時一音表記
    *序詞のある歌〜意味のある序詞と意味がない序詞がある
    *労働の民謡の歌
    *防人歌(東国から徴集され九州で沿岸の防備についた者たちが作った歌)
    *人妻に恋する歌
    *若い恋人同士が親に反抗しつつ恋愛をしている歌
    *愛を誓う誓約の歌
    *恋歌のなかによく出てくる雨の歌がない〜都の人は雨が降ったら逢えない
    *潮の歌〜東歌では、潮が満ちてくると逢えない
    *月の歌〜月が山に入ったらもう逢いにいけない〜東歌も都の歌も変わらない



















  • 有名でおいしいところを非常にわかりやすく紹介してくれています。

  • 詩がどういう場で詠まれたかについて考察している視点があるのに驚いた。

  • たまに触れなきゃいけないもの。

  • 混沌(集団不定形歌の名残)、おのがしし(1回限りの生の自覚から生まれた個の抒情)、気分(個の自覚が生む孤独)
    →日本における時の誕生

  • 日本短歌の世界観。心が洗われました。絶品です!

  • 全体の歴史や意味がわかるので把握しやすい

  • 「混沌」、「おのがじし」、「気分」という3つの観点から万葉集がどんなものか大掴みに味わうことができる。これを読むと、もっと万葉集に収録された歌の「万の時代」を知りたくなる。

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著者プロフィール

昭和13年、東京都生まれ。歌人・国文学者。早稲田大学名誉教授。「心の花」主宰。雑誌「文芸」編集長をつとめたのち、早稲田大学政経学部で長く教鞭をとる。歌集に『百年の船』(平17 角川書店)、『ムーンウォーク』(平23 ながらみ書房)、評論集に『柿本人麻呂ノート』(昭57 青土社)など多数。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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