NHK「100分de名著」ブックス 荘子

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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140817056

作品紹介・あらすじ

一切をあるがままに受け入れるところに真の自由が成立すると説く『荘子』は、今から約二千三百年前の中国で成立した古典である。禅の成立に大きな役割を果たしたほか、西行や芭蕉、鴎外・漱石から湯川秀樹に至るまで、多くの人々に影響を与え続けている。「渾沌七竅に死す」「胡蝶の夢」「蝸牛角上の争い」など、想像力を刺激する数々の寓話を読み解きながら、その魅力の源泉を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 番組アーカイブも含めて修了しました。最初はふむふむ、と学んでいましたが、最後は宗教に近いのかな?孔子の教えの方が腹落ちしました。まだ人生修養が足らないということ。

  • :最も強い主体性は完全な受け身である
     荘子の最大の関心ごとは主体性であった。逆説的だが、自分の外側で起こる変化を全て受け入れられる柔軟性を持ち、完全に受け身に徹した時こそ完全な主体性を得ることが可能なのである。精神分析学においても、完全に身を任せられることが完全な主体性の確立であるとされているという。
     この受け身の姿勢は、一般的に「待ち」の姿として理解されているものとは似て非なるものだろう。なぜならば、完全な受け身の姿勢においては常に変化に合わせて動かなくてはならず、何かを待っていることなどできないからである。つまり受け身でいるというよりは、流れに逆らうような意識がないから上手く流れ流されることができるという、無意識の状態が受け身だと表現されているのだろう。一言で言えば無意識に能動的であることこそが完全な主体性なのだ。

    :「遊」の境地
     遊とは時空間に縛られない世界のこと。老子から受け継いだ道と違い、荘子独自の概念である。これは名人と言われる人たちが行き着く境地で、一言で言えば無意識にできてしまうことである。そして何かを無意識にできるようになるには反復練習をするしかない。理屈を忘れるほどの反復練習によって到達できる無意識の境地が遊である。そしてこの境地がありのままでいるということなのである。

    :フロー
     遊の境地に至る反復練習は、知性や理性を抑制する。受け身ではなく、能動的に本気で反復練習を行うことで、この境地に達することができる。このような没我の時間は今風に言うと「フロー」である。これは歓喜を伴うクリエイティブで想像力豊かな時間だ。そして自己の狭い視野を破る訓練(反復練習)によって、私たちは驚くほど平静に変化する世界を眺められるようにもなる。読書はこのような自己の視野から抜け出すことを助けてくれる。
     なぜそんなに努力家なのか?と周囲から恐れられているのに、本人は全く努力だと思っていないということはよくある。おそらく努力は意識的であるのに対して、反復練習(継続)は無意識的な遊びなのである。両者の認識の違いは行為の継続に意識が介入しているかしないかということなのだろう。

    :総評
     荘子の思想の概観ができる良書。また近年注目が集まる「フロー」やマインドフルネスなどの現象に、科学的な側面からではなく思想的な側面から光を当てている点は評価されるべきだろう。従って荘子の入門書としてだけではなく、自己啓発の書としても楽しむことができる1冊である。

  • 荘子の本を過去に1冊読んだのですが、イマイチ腑に落ちなかったので、この本を手に取って読んでみました。

    荘子が何を書いているのか、を様々な角度から丁寧に説明しており、荘子が目指した事がとてもよく理解できた気がします。文章もコンパクトにまとまっており、文章量も手頃なので、荘子に興味がある方の入門書として、とても良い本だと感じました。

  • 「荘子」は倫理で昔習ったが、この本を読んで「荘子」のことをより深く理解することができて良かった。この本を読んで、物語が人に必要な理由がわかった。P68の庖丁の話が1番印象に残った。この本は読んですぐに役に立つ即効性は無いが、今のやり方に行き詰った時に新しいアイディアの元になりそうな本だと思った。

  • 荘子と聞くとハードルが高いかもしれません。
    そんな方にはこの本から入っていただけたらと思います。さすがNHKさん、ふんわり導入本として最適ですね。

  • 兎に角大好きで紙で6回読んで今Kindle版なんだ!

  • 道…渾沌に満ちた生産性の原理
    攖寧(えいねい)…万物と触れあいながら安らかでいること。→両行(片方を選ばず、敢えて両方を肯定する)
    天鈞…天から見れば釣り合っている。現在の視野から脱するほどリアルな想像力や創造力が発揮される環境はない。
    無何有の郷、不言の弁、渾沌七きょうに死す、ハネツルベの老人、哀駘だ(和して唱えず)、坐忘、不測に立ちて無有に遊ぶ、庖丁の牛刀さばき、曲なれば則ち全し、万物斉同、明、胡蝶の夢

    ”ただ人の形に笵して、而も猶おこれを喜ぶ。人の形のごとき者は、万化して未だ始めより極まりあらざるなり。
     其の楽しみたるや、勝げて計えべけんや”

  • 良寛や松尾芭蕉も学んだ『荘子』。万物斉同を知りたくて読んだ。この本は読みやすく分かりやすいが奥が深いため、入門書のように取っ掛かりとして、他の文献で深めていくのが良さそう。禅についても学んでいきたい。

  • 効率性を重視するな、など生きていく上で普段自分が考えてる事とは真逆の事が説かれている。

    確かに天から見たら、1人の人間が色々と考えてもしょうがないのかもしれない。

    色々と気付きを与えられた気がする。もう少し自分も楽に生きてみよう。

  • #史上最強の哲学入門 から興味を持った #荘子 について分かりやすいかと思い、購読。TVの4回放送のテキストが元なので、TV観てないと少々分かりづらくは感じた。
    時代も場所も違うところで、同じようなことを言っているのが哲学の面白さというか、突き詰めると同じところに行き着くのかなと思う。
    #胡蝶の夢 は自分の存在すら疑問を持った #デカルト の #我思う、ゆえに我あり だし、 #蝸牛角上の争い は全てのものに意味などないと言い切った #ニーチェ かな。
    荘子の何がすごいって、デカルトやニーチェよりも全然昔の人だってこと。東洋の哲人たちは本当にすごい。

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著者プロフィール

一九五六年福島県生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒業。八三年、天龍寺専門道場入門。現在、臨済宗妙心寺派福聚寺住職。花園大学仏教学科および新潟薬科大学応用生命科学部客員教授。二〇〇一年「中陰の花」で芥川賞を、一四年「光の山」で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に、『禅的生活』(ちくま新書)、『荘子と遊ぶ』(ちくま文庫)、『やがて死ぬけしき』(サンガ新書)、『竹林精舎』(朝日新聞出版)などがある。

「2020年 『なりゆきを生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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