- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140819111
作品紹介・あらすじ
究極の謎を解き明かし、未来への指針を示す!
30万年近く前にホモ・サピエンスが誕生して以来、
人類史の大半で人間の生活水準は生きていくのがぎりぎりだった。
それが19世紀以降に突如、平均寿命は2倍以上に延び、
1人当たりの所得は地球全体で14倍に急上昇したのはなぜか?
この劇的な経済成長の鍵は“人的資本の形成”だったことを前半で説く。
それを踏まえて後半では、なぜ経済的な繁栄は世界の一部にとどまり、
今なお国家間に深刻な経済格差があるのかを検討する。
制度的・文化的・地理的要因に加え、“社会の多様性”が根源的な
要因だったと論じる。人類史を動かす根本要因に着目した
〝統一理論〟にもとづいて、究極の謎を解き明かした世界的話題作!
人類史の二つの謎
第1部 何が「成長」をもたらしたのか
第1章 最初の一歩
第2章 停滞の時代
第3章 水面下の嵐
第4章 蒸気エンジン全開!
第5章 停滞から成長へ
第6章 約束の地
第1部のまとめ――成長の謎を解く
第2部 なぜ「格差」が生じたのか
第7章 光と影
第8章 制度の痕跡
第9章 文化的な要因
第10章 地理が落とす影
第11章 農業革命の遺産
第12章 出アフリカ
第2部のまとめ――格差の謎を解く
感想・レビュー・書評
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■人類史における「成長の謎」と「格差の謎」を解明
■人類はいかにして「マルサスの罠」から脱却したか
■そして成長し格差ができたのか。良書。
■2つの謎と人類進化論との強い関連性
■P177の朝鮮半島の衛生画像は衝撃的詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルは「格差の起源」だが、むしろ、「なぜ人類は、ここ200年程度で急速に繁栄したのか」が真髄だと思う。格差(繁栄度の違い)については、「重・病原菌・鉄」などでも分析が試みられているが、本書はそれらの議論を網羅的に踏まえ、一つの完成品と言って良いと思う。大まかに言って格差とは、より生産性の高い技術いち早くを導入し(そのためには既得権益を手放さなければならない)、それを使いことなすこと(そのためには広く教育を行わなければならない)で、付加価値を生み出し続ける(営業や認知向上を行わなければならない)ことができたものが繁栄し、できなかったり留まったものが置き去りにされるということ。これを、文化や制度が加速するということも重要。今の日本、自分は大丈夫か。
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現在の社会は21世紀になっても未だに国家間・地域間の経済格差が生じている。
この大きな格差を生み出した要因とは何か?
という問いに答える本書。
テーマとしてはダイアモンド博士の鉄、銃、病原菌と重複する部分は多い(実際引用も多い)が、それよりも近代の産業革命以降に多くのページを割いているのが特徴的。
子どもがよく言う「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」
というという問いに一番納得できたのが本書だった。
本書を通じて面白いのは「生活水準」に重きを置いていた点である。
人類全体の所得に着目するのでなく、人口一人当たりの所得に着目すると、19世紀以前の世界では、世界のどこでも生存ギリギリの生存水運が普通であった。
(もちろんごく一部の特権階級や、発展した都市では別だったのだろうが)
それまではマルサスの罠と呼ばれるすべての生物が陥る貧困のスパイラルから人類も逃れられなかった。
(技術革新で余剰食糧が生まれても人口を増やして食いつぶしてしまうこと)
それを乗り越えたのが産業革命であった。
これにより市民は人的資源(つまり基礎・高等教育)の重要性を認知し、子供に教育を受けさせるようになる。
教育には金がかかるので、出生率は低下した。
これにより人類はマルサスの罠を抜け出し、余剰所得はそのまま人々に分配され、それが更に人的資本に注入され、技術・社会制度革新を生むという正のループに入るというのが、豊かになった国々の特徴といったお話。
後半では、なぜ欧州では人的資本に注力できたかを様々な視点から紐解き、歴史をさかのぼって探求していく。
こちらもなかなか面白い。
ただし、現在の経済構造や国家間の経済格差には触れられていないので、そちらはどちらで気になる点はある。 -
産業革命まで人類の生活レベルは生存水準から抜け出せていなかったが、産業革命後、人的資本への投資、人口転換などによりマルサスの罠から抜け出して、生活レベルが急激に上昇した。しかし、産業革命が早く始まった地域とそうでない地域には大きな格差が生じた。では、なぜ産業革命が西欧で始まったのか。本書は、その原因を制度、文化、地理、人の多様性に求め、それを人類の旅として検証していく。歴史的、地理的な壮大なストーリー。
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人類の「発展」にこれだけの格差がついた理由を解き明かす一冊。まずは素直にそうだろうなと読める。気候、それがもたらす害虫などの生態系も人類の発展に大きな影響をもたらした。また、人類の誕生の地であるアフリカから遠くなればなるほど、集団の多様性が薄れていくという指摘には驚いた。漫然と逆だと思っていた。すると、日本人の均一性、移民を忌避する気質にも、人類誕生の日からの必然性がともなっているのだろうなというのが感想。
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副題がしめすように、経済成長と不平等の起源に関する壮大な人類史。
本の前半では、まず経済成長の起源について説明がなされる。大まかには、産業革命や技術発展が原因なわけだけど、著者は産業革命で全く違う原理で世界が動き始めたとはみていなくて、産業革命以前からの変化が積み重なって一種の相転移のようなものがおきたとする。そのドライバーとして人口の役割を重視している。産業革命の前と後の連続性を指摘するところはなるほどな議論ではあるが、それほどの驚きはない。
後半では、格差の起源ということになるが、ここで扱われるのは、ある社会のなかでの階層的な格差ではなく、国ごとの経済格差。なぜならば、そちらのほうが大きな差があるからとのこと。
若干の疑問は残るが、とりあえず著者の議論に乗っかって、先を読み進めていくと、現代社会から、格差の起源をもとめて、歴史を遡り、制度、文化、地理、農業革命、そして最後には人類の出アフリカということになる。
一つ一つの議論には、なるほどな面もあるし、経済的な要因だけでなく、文化的な要素など多様な側面に格差の原因を求めるのは、健全な議論ではある。
で、この本の狙いである「経済成長」と「格差」を一つの統一理論によって説明するという展開になって、ここでも人口や人の多様性ということに議論は整理される。
本を最後までよめば、そういうこともあるだろうなとは思うものの、なんだか後付けの説明のようにも思えて、全体としては、あまり説得力のある議論とは思えなかった。
とはいえ、いわゆるワシントン・コンセサス的な「発展途上国も経済発展することで貧困をなくし、人々の幸せを作り出すことができる。そのためには、自由主義的な経済政策が有効」みたいな処方箋からは、一歩、前進して、国の文化、歴史などにも配慮した政策が必要という結論には至るので、そのあたりは評価できるかな?
が、格差の説明要因に、さまざまな文化、歴史要因を入れたからといって、国の経済格差を発展度合い・スピードの違いで理解しようという姿勢は、相変わらずのワシントン・コンセンサスの世界観。
マルクス的な搾取の構造とまでは言わないにしろ、豊かな国があるため貧しい国が構造的に生み出されてしまう、そして、国内でも豊かな社会階層があるので、貧しい階層が生み出され、構造的に再生産されるという視点もやはり必要なんじゃないかと思った。