「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883648

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  • ①日本画の遺伝子ー屛風絵、村上隆、奈良美智、落合多武、アニメーション②出会う場所でアートは変わるー草間彌生、オラファー・エリアソン、レアンドロ・エルリッヒ、マイケル・リン③アートが科学を越えるときージェームズ・タレル、池田亮司④「見る」ということーソフィ・カル、河原温、アンリ・サラ⑤身体性を呼び覚ますーエリオ・オイチカシ、リジア・クラーク、エルネスト・ネト、サラ・ジー⑥アートのポリティクスーマシュー・バーニー、フランシス・アリス、ロバート・スミッソン、蔡國強⑦越境するアートーSANAA、石上純也、トビアス・レーベルガー、リクリット・ティラバーニャ、シムリン・ギル、wah、フセイン・チャラヤン
    目次に出てくる作家たちは、著者が実際に組んで企画を立ち上げた人たちだそうだ。だから、彼らの意図するところがよく分かっていて、文章が明晰だ。いろいろなことが書かれているが、他との関り、社会との関り、様々な現代の要素との関り(テクノロジー、科学、、政治、場、時間等)なしには現代アートは成り立たないようである。デュシャン以後、アートははっきりと変貌したのだ。
    マシュー・バーニーがビョークの旦那さんとはね。やっぱりビョークって変わってるわな。

  • この本にはアートとはについては書いてありません。著者はアートは私にはこう映っているということについて語っている。”とは”論を敬遠したいという気持ちと、アートの定義は現代において人によって様々であるという態度であるように思えます。

    MOTのチーフキュレイターである著者が、本書で取り上げた作品について、なぜ面白い作品なのか?アートの文脈でなぜ重要なのかが解説してあります。それらを通して現代アートへの理解を深めることができます。

  • 本書は2011年11月に発行されました。現代アートを代表するアーティストの作品を紐解きながら、文章が進んでいきます。発行されてから既に10年が経っていますので、日本でも個展が開かれるなどすっかり有名になっている方々ばかりです。現代アートをジャンルとして括ってしまっていいのか疑わしいですが、鑑賞するのに敷居が高いと感じることもある現代アートの見方のヒントが詰まっています。
    そして、最後まで読むとタイトルの意味が実感できます。この「なぜ?」は作品に向けられるだけのものではありません。どうしても、作者が作品に込めた意味とか、作った理由とか、そんな「なぜ?」に気を取られてしまいがちです。けれども、もっとシンプルな「なぜ?」があります。なぜ、私はこの作品の前で立ち止まっているのだろうか。それは作品を通して自分に向けられる「なぜ?」です。ひとまず、作家本人のことは忘れてしまいましょう。純粋に作品が投げかけてくる何かを受け止めて、投げ返し、また飛んできたら受け止める。その体験を繰り返すことが、現代アートの私のオリジナルの鑑賞につながるのではないかと、本書から読み取りました。
    ただし、これを私だけの読み方かもしれません。でも、現代アートはみんなと同じ答えを求めなくていいのでしょう。私だけの世界を掘り下げること、そう考えると現代アート鑑賞も気が楽になるはずです。ときおり、読み返してみたい本です。

  • 歴史の中で勝ち残って来た、過去名作を賞賛するだけでなく、今現在、自身が生きて身近にあるアートに寄り添う事の重要性を感ず。

    過去賞賛から、現在を生きる自己の時間を見つめる事。

    一回性、瞬間美であると言えるのか? アートへの向き合いを変えるきっかけとしたい。

  • 始めて東京都現代美術館にて、作品鑑賞をした日に購入。

    現代アートには様々な楽しみ方があり、見るたびに違った見方が出来ることに魅力がある...

    そんな事に気づかされる1冊です。

    また、キュレーターという仕事にも興味を持つきっかけになりました。

  • 写真も豊富でわかりやすく、現代アート入門にいい感じ。ブラジルのトロピカリズモのくだりはそういう流れだったのかと納得した。あとやっぱ草間彌生はすごい。

  • 現代美術と向き合う視点について。自分の中にあった、もやもやした「なぜ、なに?」という感じながらも惹かれていた部分が「そうか!」に変わる。するすると読めた。

    ・アートは時を越えて生き残る「通時性」と、共有する現在をときめかせる、いまをともに生きるという「共時性」の、二つの力をあわせもっている。
    ・アートは人と人、領域と領域の隙間を埋めていくための、「隙間装置」「関係装置」の性質をもっている。歴史につながり、世界とつながる。目と体をつなぐ。色々なメディウムとつながる。
    ・草間作品は、ポップアートとミニマルアートのかけ橋。孤立の恐怖を過剰なまでに世界へ押し返していく力がある。
    ・観客の記憶と体験を混乱させないこと。もっと身体意識に浸透性の高いものは何か。
    ・アートのポリティクス。日頃から社会状況に対して意識的な人が、モティーフとしてはただ女性のヌードだけを描いているとしても、作品にはおのずとポリティクスがにじみ出てくる。
    ・アートの文脈にリスクはつきもの。タブーや障害だとされているものについて考え直させる契機。
    ・wahの写真は消費されるイメージと違って、不思議と心に残る。

著者プロフィール

京都大学法学部卒業、東京藝術大学大学院修了。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授、金沢21世紀美術館館長。これまでイスタンブール、上海、サンパウロ、シャルジャ、モスクワ、タイなどでの国際展を手がける。主な著書にKazuyo Sejima + Ryue Nishizawa: SANAA (Phaidon Press, 2006)、"Performativity in the Work of Female Japanese Artists In the 1950s-1960s and the 1990s," Modern Women: Women Artists at the Museum of Modern Art. (MoMA, 2010)、『破壊しに、と彼女たちは言う──柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』(東京藝術大学出版会、2017)、「新しいエコロジーとアートーClouds⇄Forests展にそってー」、『東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科論集 第1号』(東京藝術大学大学院、2020)、『ジャパノラマ:1970年以降の日本の現代アート』(水声社、2021)など。

「2022年 『新しいエコロジーとアート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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