稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884607

感想・レビュー・書評

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  • 全体を通して通底している筆者の考えは、「民間は稼ぐ事業を、行政はその環境整備を」かな。読んでいて、気づかされることが多かった。いくつかピックアップ。

    ①活性化とは「事業を通じて経済を動かし、まちに新たな利益を生み出すこと」
    →地域活性化というと、一過性のイベントやゆるキャラを想起することが多いかもしれないが、そんなことは活性化とは言わないと筆者はいう。大事なのは、持続的な利益を生み出すことと言う。たしかに、これまでの地域活性化の議論は、「まちににぎわいを」とか「盛り上げよう」とか抽象的な出口が設定されていた。そうではなく、小さくとも確実に利益をだす事業がいくつそのまちに増えたかを目標設定すれば、これまでの地域活性化と称する取組みの選別ができそうな気がする。たとえば、毎年する夏祭りも、単なる一過性のイベントではなくそのまちを普段まちに来ない人に知っておらうビジネスチャンスとして捉えられれば、その祭りの位置づけも違ってくるのではないだろうか。

    ②地域を活性化をするうえでは、事業と金融という二つの側面で考える必要がある
    →全国チェーンがだめなのは、金融の面から地域にメリットがないからだと筆者は言う。まさにそのとおりで、初期投資も外部からの調達で行われることが多かったり、そのため投資後の利益も外部にもっていかれてしまうため、地域に資金循環しなくなる、ということである。消費者にとって便利に、という目的からするとたしかに全国チェーンが地方にくることはいいことである。ただ、地方でのお金が外部に出て行ってしまうと、その地域で経済が回らなくなってしまうだろう。そうなると、消費もされなくなってしまい、結局誰もいなくなるという結果を起こってしまう。地域が持続的に経済が回るような仕組みが大事ならば、いかに地元資本を増やしていくのかがカギであることがよくわかった。

    ③縮小社会において活性化に取り組む行政の役割は、変わりました。民間の「やりたい」ことを、「やれる」ことに変えるための環境整備が求められています。
    →公務員にとっては、心に突き刺さる言葉。公務員をやっていると民業が本当によくわからないのは確かである。だからこそ、地域にでて民間の方々と交流することが大事になってくると思う。ただ話し合うだけではなく、もはや一緒に何か活動したほうがいいと思う。

    この本は、とても勉強になった。とくに同じ公務員の方に読んでもらいたいと思った。

  • 何事にもだが、「やれるか、やれないか」ではなく、「やるか、やらないか」、これが自分には刺さった。

  • 「まちづくり」に対する考え方を、従来の「行政が作って民間に波及させる」考え方から、「民間が稼いで行政に還元する」考え方に改めるべきとしている点が画期的。本書では全編を通じてこの趣旨を貫いている。

    特に共感したのはp.131「稼ぎを流出させるな」の項である。ここで筆者は、事業を行う者と資金を融通する者を地域内で調達することで、域内経済が活性化するという主張を唱えている。特に、金融面における域内調達の重要性を説く。
    理由として、域外から資金を調達した場合、地域経済が、事業拡大の際に増えていく投資利回りの恩恵に浴することができない点を挙げている。

    「原資が地元の資本なら、誰かの消費が同じ地域の誰かの消費になります。それが地域での新たな事業への再投資に向かえば、利益は地域内で循環しながら複利で膨らむわけです。これは、地域経済を豊かにするうえで大変重要なポイントです。」p.133

    非常に示唆に富む内容で面白かったです。

  • ※メモ

    【きっかけ】
    著者のプレゼンを聞いて関心を持ち、氏の考えるまちづくり方法論をより知りたいと思ったため。

    【概要】
    民間の力でのまちづくりという視点から、失敗と経験を通じて見出した法則を紹介。

    【感想】
    不動産オーナーを核として考えることで、話がスッキリしてくる。
    官側の方しか見えていなかったので斬新。
    投資事業とは言っているが、案外小さい規模でもできるものはあるものだ。
    これからの「パブリック」のあり方を考えていくのはおもしろい。

  • まちづくりを、行政がやってくれること(自分は税金という代金を支払ったお客さん)と考えるのではなく、自分ごととして行おう、と呼びかける。
    主だった主張については、ここ半年くらいネットでフォローして読んできたので新鮮味こそなかったけど、どうしてそう考えるようになったのかもいう背景経験がたっぷり書かれていてすごく説得力があった。
    また、著者によるまちづくりの10の鉄則は、まちづくりに限らず全ての組織活動に共通するもの。読みながら「あれにも当てはまる」「ここも同じ」という事例がいくつも思い出され、そしてそのうち何割かでは自分はあちら側、つまり活性化を邪魔している側だった。ん〜、まさか。でも、これに気づけたのは大きい。

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著者プロフィール

木下斉
1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、00年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。08年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、09年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。15年から都市経営プロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学、公民連携事業機構等と設立し、既に350名を超える卒業生を輩出。20年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。著書『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

「2021年 『まちづくり幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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