- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140886274
感想・レビュー・書評
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相変わらず驚異的な編集能力・要約能力を持ち合わせておられる。
題名の通り、この本で20世紀の哲学の要点は大体掴むことが可能でしょう。
単なるすぐれた要約にとどまらず、初学者が疑問に思うような点(例えばロールズの正義論の何が画期的だったか?というように)に視点を向けようと努力している点も素晴らしく、その意味で痒いところに手が届く感触があります。
また個人的には思弁的実在論については無知だったのでとても勉強になりました。
しかし、ある程度の前提知識を要求するような面があると思われ、全くの初心者がこの本を読んで理解できるかどうかは分かりません。
著書もこの点に関しては本書の中で釘を指しています。
いずれにしても、20世紀の哲学・思想を大雑把に把握する上で抜きん出た書物であることは変わりありません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
E Oウィルソンの『知の挑戦』が解説される哲学関係の書籍というのはただそれだけで満足を得られたりする。
期待して読んだのは第4章「心の哲学 「心」はどこまで説明可能か?」
自分としては(大雑把にいって)自由意志と行動主義が同時に存在する感覚を、今ここで感じられること(事)が「こころ」と呼ばれるものだと思ってるのだけど、どっちかでないとダメみたいなところで議論しているみたいで、なんで両立しないのかが気になった。
あと、たとえば視神経の2つの異なる系の存在や、そうした神経と脳の関係が生物の進化の過程でどのように獲得されてきたのかというあたりは哲学ではあまり考えていなくて、純粋な思考によって「こころとは何か」「主観を客観で説明できるか」というあたりの話が中心なんだなという感想。
そのあたり、眼球の構造や視覚の研究をしていた科学者としての「デカルト」から、心の哲学はどんどん離れていくんだなという寂しい印象もある。
こころというものは現実にはどこにも無いのだけど、こころが自分の中に存在すると感じたり、そした信念を持つことによってその人が救われるのであればそれでよいと思う。こころとは私のことである、でもいいと思う。
でもなんかそうなると宗教になってしまうような気もするし、道具的な「こころ」ってどうなの?とか。いろいろ考えさせられはするのだけど。