現代ロシアを見る眼 「プーチンの十年」の衝撃 (NHKブックス)

  • NHK出版
3.36
  • (2)
  • (3)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 76
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911624

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • プーチンの10年間(プーチン時代)を評価した本。その評価は、総じて否定的。特に、Beforeプーチンに起因するプーチン時代の裏の顔が紹介されている。 筆者は、<プーチンの10年間は、原油価格高騰という偶発的かつ幸運な事象によるところが大きい>という立場で、Afterプーチン(メドヴェージェフ時代)を憂慮している。ロシア社会の裏がリアルに描かれていた。

  • プーチン政権誕生から2000年代の政情解説は2022年のウクライナ侵攻の背景を理解するのにも役立ちました

  • シリア内戦のアクターであるロシアが何を考えているのか、を勉強。原油価格が下がっている今、ロシア経済の疲弊がどのように影響するのかが焦眉であるとともに、彼らの外交がいかにロシア帝国と地続きであるかを再認識。やはり歴史を勉強することが一番の近道。

  • ロシア本2冊目。

    プーチンが大統領代行となってからのロシアについて。

    ゴルバチョフ、エリツィン時代からの大混乱をなんとか収めて
    BRICSの一角となったロシア。

    しかし、経済は地下資源への依存が極めて大きく
    2000年代の資源価格高騰で潤った国家財政も、社会インフラへの還元はなされていない。

    現在、世界中で金融緩和がなされていて、資源価格もまた上昇傾向にある。
    しかし、ハッキリ言って資源価格はバブルだ。
    新興国の成長が減速した時、2008年の時と同じような資源価格の暴落が起きるに違いない。

    そういう意味で、経済面でのロシアの春は
    BRICSからロシアを除いた、ブラジル・インド・中国・南アフリカの成長頼みという事になる。

  • 読んだ。

  •  プーチンの10年間のロシアを再考する本。ロシア情勢に関する大家2名とNHKの記者の共著。

     その名の通り「プーチン政権誕生後の約10年間のロシアを理解する」には、役立つ本だと思う。また、ロシアを安易に権威主義的だと批判するのではなく、筆者達が思うその論拠をわかりやすく提示するのも(特に、「プーチンの10年」を経たロシアには課題が山積しているとの理解も)、重要だと思う。というのも、メディアのロシアを見る目が一面的であるとして、ロシアの多様な実情を強調するあまり、権威主義的な側面や様々な問題点を過小評価している、そのように読者からは読み取れる記述をする人々もいるので(→但し、彼らはあくまでも少数派であり、それ故に一面的な理解がなされている現状に強く反発するのだが)

     本書に関しては、上記のような意義を認めつつも、構成上、論理展開上、そして分析上の観点から残念な点を指摘したい。

     第一に、構成上の問題である。共著作品をいかに分かりやすく、しかも各執筆者の内容が連動し、議論が展開されるようにするのかは、悩ましい問題で、多くの共著でこれに苦しむわけである。こうした問題を改善する為に、一冊の本として必要な内容構成とし、用語法を統一し、重複を避け、前や後ろの記述と各章の関連に留意する必要が求められるわけである。本書は、章立てを見ると、そこで言及される内容が抽象的には、「ああ、ロシア社会についての言及か」などと分かるのだが、これが曖昧で、各章のまとまりや重複が見られる。もう少し、構成を吟味する必要があるだろう。例えば、各章の内容を分野ごとにまとめると、歴史、政治(大統領、体制、支配エリート)、社会、経済、外交、安全保障に分類出来る。これらにきちんと分類し、各章を整理構成すれば、不要な重複を減らす事も出来る

     第二に、論理展開上、分析上の問題である。少なくとも、ある一定の時期の、それも比較的長い期間にわたる政治体制を分析し、付随する社会、経済、安全保障などを理解しようとする場合、当該分野における多様な議論を出来るだけ包括する形で理解を試みる必要がある。ここでは、出来事に対する個別の評価や意見の収集というよりも、構造やシステムに対する多角的な分析や理解、そしてのその根拠となるエビデンスの収集が重要になる。またそこで主張される議論が、他の国とは異なる特異なものであるとするならば当然、比較政治学(同経済学、社会学etc)などの視点で語られなければならない。なぜならば、これは変化する事象にとりあえず現状でわかる範囲で理解を試みる情勢分析と異なり、ある程度確定した時期のある程度特定出来る事象に対する体系的分析であるからである(→タイトルを見る限り、サブタイトルの「プーチンの10年」はそれを物語っているし、序章でもそういった主旨の事が書かれている)

     個別のストーリーを繋げ、自己の分析や主張を補強する事は、その主張や分析の作業にとって有用な事は事実だが、個別の事実とその解釈の積上げという作業だけでは、これは分析とは言えない。加えて大きな問題は、その個別の出来事の集積だけでは、命題に対して答えがいかなるものなのか、読者に理解を必ずしも提供する事が出来ないという事である。端的に言えば、各章でもう少し分析やまとめを展開し、その上で終章や「おわりに」でこれを鳥瞰的に示す必要がある。おそらく多くの読者が感じる繰り返しは、個別のストーリーの繰り返しだから、無意味で不要なものと考えられるわけである。各章で語られている個別の事象が本書全体にとっていかなる意味を持ち、そしてそれはなぜ重要なのか、その点を分析枠組みやアプローチの提示なりで示せば、まとまりも出ただろう。

     厳しい言い方をすれば、忙しい大家がバラバラに思うところを書き、それを1、2度相互の原稿を確認して、強調すべき点や「これは次章を参照」などと書き込んだ上で、そのまま出版しちゃったという印象を持つ本である。

  • 込みいった洞察はないが表題どおり10年間のプーチン時代総括としてウェルメイドなまとめ。

  • プーチンは大統領になる前から大統領に等しい仕事をしていた。
    ゴルバチョフはソ連体制自体に、つまり内の世界に危機意識を抱いた。
    プーチンは下級階層の出身。
    プーチン式人事は、窮鼠猫をかむ。徹底的に追い込むのではなく、じわじわと追い込む。さすがKGB.
    プーチンが赴任していたドレスデンはKGBでもエリートの行くところではなかったが、そこで西側の世界を見た。
    プーチンは寡黙でスパイ向きの性格をしていた。
    ソ連邦の解体は20世紀最大の地政学的な大惨事である、というのはプーチンの名言。
    プーチンは強いロシアの再建を目標に掲げた。
    現代ロシアでは村上春樹が人気ある。作品には普遍的な現代性があり、孤独な主人公が頼りないながらもしぶとく生きるところが、連邦崩壊後、生き方を見失ったロシア人の共感を呼んでいるのではないか。
    新興財閥集団のリーダーの多くはユダヤ人だったから徹底的に懲罰的に強硬姿勢を示したが、国民は喝采した。
    まだロシアではユダヤ人は差別されているのだ。今だにスケープゴートにされている。
    北京オリンピックのときのグルジアへの軍事介入は世界から批難された。
    米ロ関係は悪化していた。ロシアはNATOの拡大が嫌いだった。どうしてワルシャワ条約機構が無くなったのに、NATOは拡大するのか理解できなかったのだろう。

  • プーチンの10年についての本でした。ここ数年は一年ごとに首相が変わる日本と違って他国の首相や大統領はどうしても長期政権だと見てしまいがちで(事実そうですけど)プーチンは実質10年の間エリツィンに指名を受けて以来低迷するロシアを復興へと導いてきた。実際プーチンのついた10年でGDPは驚くほど増え、これは石油価格の高騰が関係している、首都モスクワは北京に次ぐ交通渋滞の都市。91年にソ連が崩壊してルーブルが紙くずとなったころと比べると格段の成長である。現在はG7に加わりG8と呼称が変わったほどだ。
    さてそれは経済の一部分からのはなしだがすべてが良かったとは言い切れ無いとこの本の筆者。経済は浮上しても格差は広がっている。民主化したがプーチン政権の元で報道の自由や言論の自由は著しく制限された。しかしそれを大部分の国民は容認しているところも面白い、民主主義のあり方を最高するのによい。グルジアやチェチェンやウクライナやポーランドやバルト三国などのCIS諸国との対外関係も悪化したり改善したりの繰り返し。それに付随して欧州や米国との関係も変わってきた。しかし基本的に国内でのプーチンの支持率はずっと高いままのようだ。政権運営半年で支持率が50%をきる日本の内閣には見習ってもらいたい。
     内容としては事実に基づいているだろうし、しかし一部筆者のインタビューや私見などもあるが、ある程度客観性のある著書でさすがNHKといったところ。私は大学の生協でこれを買ったのだが巻末に索引があったのが非常に助かる。あとで見返すときに大変重宝する。残念なところは300Pの重厚な記述に繰り返し同じ内容のことが書かれているのが目につき、うんざりした。章ごとに対外関係、プーチンの生い立ち、ソ連崩壊の様子、グルジア侵攻、などトピックごとに描かれているので時代が重なると「また九一一事件の引用か」と辟易する思いだった。ページ数が多いのはそのせいもあるのでもう少し吟味した内容ならもっと軽い本になったのでは?

    全体としてみたら良書の類で現代ロシアを知らない人は読んでみる価値ありのものだ。本の中での引用で印象的だったのがマックス・ウェーバーの言葉で善からは善だけが、悪からは悪だけが生まれるとは限らない。これを知らないなら政治的には赤子である、という部分。政治以外の哲学全般に言えることだ。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

北海道大学名誉教授 


「2007年 『アジアに接近するロシア その実態と意味』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木村汎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×