深読みジェイン・オースティン―恋愛心理を解剖する (NHKブックス No.1246)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912461

作品紹介・あらすじ

英文学史上最大のリアリズム作家の一人とされるオースティン。分別を失って多感になることで報酬を得た「耐える女」エリナ、成り上がる戦略として偏見を武器にした「賢い女」エリザベス、無垢の殻に激しい情念を押し込めた「おとなしい女」ファニー、勝手な思い込みで誤解を反復する「わがままな女」エマ…など、個性的な6人のヒロインの"認知の歪み"という観点に着目し、その言動分析から普遍的な人間の心情に迫る画期的アプローチ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の深読みに、
    岡田斗司夫さんのアニメや映画の解説に近いものを感じ、
    小説の面白がり方が広がった。


    例えば、
    ーー
    『説得』の女主人公アンが
    元カレのウェントワースと8年ぶりに再会する場面(p.286)。

    「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った。一方が会釈し、もう一方が膝を曲げて挨拶した。アンにはウェントワースの声が聞こえた。彼はメアリに話しかけ、礼儀正しい挨拶の言葉を述べた。マスグローヴ姉妹にも、打ち解けた調子で何か言った。」

    上記の小説の文章に対して、著者は以下のように考察する。
    「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った」から、
    アンはまともにウェントワースを見ていない。
    お辞儀を交わしたあとは聴覚情報に移行していることから場面の視野が狭められていることがわかる。

    このように、視覚情報を制限し、視覚以外の知覚や心理・思考内容などの描写に移行することで、彼女がウェントワースへの思いをいまも引きずっていることが、明らかになる。
    ーー

    文章を読んだときに、アンが元カレに未練があることが何となくなぜ分かるようになっているのか、どういった表現をしているから伝わるのか。意識したことも考えたこともなかったけれど、こういう表現って映画の撮り方にも通じているところだと思う。


    【ジェイン・オースティンの魅力まとめ】
    (p.315 エピローグより抜粋)

    ・哲学でも思想でもなく、ひたすら人間を描いた「純粋な小説」

    ・地味な日常からも「ドラマ」は展開し、些細な人間関係をとおしても、人間とは何かという「真実」は明らかになる。そうした側面を重視するイギリス的特性を、代表する作家

  • ジェイン・オースティン作品の主人公の恋愛心理を解きほぐしてくれる。人間のものの見方の歪みに焦点を当てて、作品を深く分析している。それぞれの作品の女主人公、エマとかエリザベスなど、の物事や世の中のとらえ方を「スキーマ」と呼び、「認知の歪み」を詳しく見ていく。さすが、オースティンは人間をよく見ているのだな。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=10029

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著者プロフィール

廣野 由美子 (ひろの・ゆみこ):一九五八年生まれ。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学文学部(独文学専攻)卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(英文学専攻)単位取得退学。学術博士。専門はイギリス小説。著書に、『批評理論入門』(中公新書)、『小説読解入門』(中公新書)、『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)、『謎解き「嵐が丘」』(松籟社)、『ミステリーの人間学』(岩波新書)など。

「2023年 『変容するシェイクスピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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