哲学とは何か (NHKブックス 1262)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912621

作品紹介・あらすじ

竹田哲学の最新版にして総決算がこの1冊に!

 著者はNHKブックス『現象学入門』刊行以来30年以上にわたり、平易な語り口の哲学書によって幅広い読者を獲得し続けてきた。フッサール現象学の革新的読解に始まり、カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガー、ウィトゲンシュタインを中心に、あらゆる哲学書を「哲学とは何を行う営みなのか」という問題意識のもとに読み解き、一般書にまとめて刊行していくなかで、哲学本来の意義は「誰もがこう考える以外にない」という物の見方――すなわち「普遍認識」を追求することにあること、イオニアのタレス以来、この思考がリレーされてきたことを理解する。同時に、20世紀半ば以降はこのリレーが実質的にストップしていること、多様な哲学理論の開花にもかかわらず知的パズル解きを超える成果が残されていないことに気づき、哲学の途絶えた流れを復興させるべくフッサールの全著作の解読を進めてきた。その成果として自由論、資本主義論、そして大著の「欲望」論などを書き継いできた末に、決定版として、さらなる一歩を踏み出した挑戦的な著作が本書だ。
 哲学全体をとらえようとする本は往々にして、哲学者を並列して解説を加えていく平板な構成になる。これに対して本書は、「哲学本来の力と功績は何か」という明確な観点から重要度を基準に評価し、読者にクリアなビジョンをもたらす。すなわち、哲学の方法とは何か、真に重要な功績は何か、を明らかにしたうえで、著者が初めて本格的に「いま哲学は何を考えるべきか」を宣言するのだ。
哲学の方法の特徴は、世界を説明する際に、概念と原理を使うこと。かつて宗教は世界説明に物語を使っていたが、哲学はこれを革新し、宗教を超える普遍的な説得力を持つに至った。物語を信じない者も排除されず、言葉を使って他人を納得させることがルールとなる。
 哲学の功績の1つは、このルールにのっとって自然哲学(のちに自然科学と呼ばれる)を創始したこと。ニュートンの著作のタイトルも『自然哲学の数学的基礎』だった。自然科学の隆盛を受けて19世紀に勃興した「実証的社会科学」はしかし、コント以後マルクス主義や社会システム理論に至るまで、理論は花咲けども議論の一致を見出せない迷宮に入った。人間関係の総体である「社会」を自然科学の手法でとらえようとしたことに問題があったのだ。
 これを克服するための方法を確立したのがフッサールの現象学であったが、このことはすっかり見落とされていると著者は言う。本書ではこの「社会を捉えるための基礎理論」としてフッサールの功績を、オリジナルのユーモラスな図版も多用して明確に示す。そしてこれを踏まえ、今の哲学の使命であると同時に哲学本来の仕事であったはずの「人間がより自由に生きられるための社会の構築」を進めることを提唱し、その基礎的な考え方を示す。
本書は、ビッグネームたちの功績を重要度別に一括して理解し、哲学全体への一貫した展望を提供する、類例のない“哲学入門”であり、今後の哲学徒が避けて通れない記念碑的な著作である。

感想・レビュー・書評

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  • 哲学の課題を「認識の謎」「存在の謎」「言語の謎」の3つに整理し、ニーチェとフッサールの思想をベースにして、3つの謎に対する答えを誰でもわかりやすく解説した著作。

  • わかりやすいが、かなり荒っぽい議論を進めている。
    たとえば、存在の普遍性を間主観性だというのは私も同意。
    ただ、内容は「新しい哲学の教科書」のほうが整理されていて分かりやすいと思う。

  • p.2020/12/2

  • 哲学を「普遍認識」の方法であるという著者の考えが示されるとともに、そうした課題を喪失している現代哲学の諸潮流を批判している本です。

    著者は現代における哲学の混迷が、「認識の謎」についての正しい理解が欠けている点に求めています。そして、ニーチェとフッサールの二人によってこの謎が解明されたと主張するとともに、彼らの仕事の意義についての理解を欠いているために、あいかわらず相対主義と独断論の両極に引き裂かれているポストモダン思想や言語分析哲学、新しい形而上学などの批判をおこなっています。

    著者のフッサール解釈は、アカデミズムにおけるフッサール研究になじんでいる読者には不満を感じるところがあるでしょうが、『現象学入門』(1989年、NHKブックス)などの著作を通じて「竹田現象学」に触れている読者にはおなじみのものだと思われます。現代哲学の相対主義に対する批判も、これまでの著作でおこなわれてきた主張と同様のものですが、とりわけ「普遍認識」の重要性を強調しているところに本書の特色があると見ることができるかもしれません。

    他方、本書の最後でとりあげられる社会哲学・倫理学・実践論にかんしては、主著となるべき『欲望論』の第三巻で本格的に論じられることになるであろう内容の展望が示されています。

  • ニーチェとフッサールを足場にこれまで哲学が成し遂げて
    きたこと、これから哲学が何をしなければならないかを
    まとめ上げた野心的著述。その言説の是非はともかく、
    竹田青嗣の著作は実にわかりやすく、私の中に素直にストン
    と落ちてくる。氏の本を読むと、「哲学」とはいかにわかり
    にくく言い換えられるかという競争ではないかと思って
    しまうほどだ。まぁ、単に著者と私の波長が合っていると
    いうことなのかも知れないが。マルクス・ガブリエルを
    読んだ時に感じた「何かが違う」感じも上手くまとめられて
    おり、これからもその著作を追い掛けていこうと思わせて
    くれる良い1冊であった。

  • いままで読んできた哲学を論旨とする書籍の中で最高級。
    フッサールとニーチェのことだけ軽くしっておけば、哲学を学ぼうとする誰にでも有用な本です。

    「認識の謎」「存在の謎」「言語の謎」の3つに整理し、
    ・哲学の力
    ・哲学の功績
    ・いま哲学は何を考えるべきか
    を明確に記載して、哲学全体をとらえようとする本がありがちな哲学者を並列して解説を加えていくスタイルとは一線を画します。

    序盤からして「宗教は物語、哲学は言語ゲーム」という惹きが魅力的。
    哲学について学ぼうとしなくてもよいので、そして流し読みでも良いので、教養として当著を読んでみてほしいです。
    当たり前と当たり前の矛盾について、深く考察する良い機会になります。

  • うーん、なんかすごいことが書かれているんだろうなあ、と思いつつ、半分以上理解できないまま読み終えた。竹田先生の弟子だという苫野一徳さんがツイッターで紹介していたので手にとってみた。そもそも、哲学の本はどうしてそういうことを考えることになったのか、それが分からないので、なんかしっくりいかないでいた。それが、100分で名著でカントをとりあげていて、西研さんが、そのそもそもの理由を話されていたので、なんとなく納得した。ガリレオとかニュートンとかの話。本書の中でも、本質観取とか自由の相互承認とかが大事なことはわかった。もともとこれは、先に苫野さんの本で読んでいたからだ。で、とにかくフッサールとニーチェをしっかり読まないといけないということはわかった。読まないと思うけど。それで、竹田先生はどうしてこうも、フーコーとか他の思想家のことをけちょんけちょん?に言えるのか。まあ、その辺がおもしろいと言えばおもしろいのだが。世の中に対する具体的な話になってくると、ぐんと分かりそうになるんだけどなあ。ネットでお話を聴ける機会がありそうなので、まあ聴いてみたい。うーん、でも相互承認できないことがいろいろあって、世の中大変なのではないのかなあ、と思ったりしてしまう。頭の中はモヤモヤなのだ。

  • ありがちな昔の哲学者の紹介だけでなく、哲学に新たな視点を付け加えるという意気込みはよく伝わってくる本でした。

    でも、結局のところ「本質観取」と「熟考」、「普遍認識」と「熟議を通じたコンセンサス」に違いはあるの?という身も蓋もない読後感を持っております。私の読解力の問題かもしれませんが。

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著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者、文芸評論家。著書に『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)、『人間的自由の条件ーヘーゲルとポストモダン思想』(講談社)など。

「2007年 『自由は人間を幸福にするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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