- Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
- / ISBN・EAN: 9784142230600
感想・レビュー・書評
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漸くテキストを入手しました!映像も磯田さんの解説も最高でした、改めて司馬さんの素晴らしさを確認しました
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司馬遼太郎の作品の魅力について語られている。
精緻で立体的に時代の空気感、歴史上の人物を再現しているその文章は一緒に幕末の京都や明治維新の東京を歩いている気分になるほどだ。
また、歴史観は「司馬史観」と呼ばれるほどで、歴史の見方を養うのに、どれほど役立ったかわからない。旅の本は数あれど、歴史を旅できるのは司馬作品ぐらいなもの、と思うことすらある。
人間の描き方も秀逸で登場人物を100%好きになる。始めはどこかダメダメなんだけれど、いいやつが多い。そして、成長する中で事を成し遂げていく。
気をつけなけらばならないのは、あまりにリアルで史実と見紛うことだ。司馬氏の脚色や推測で描かれている部分ももちろんある。(そこも面白いところなのだが)だから、多角的に歴史を評価する自分なりの目が必要なのだけれど、それでも大好きで全作品を読みきってしまった。
司馬遼太郎には感謝してもしきれない。 -
昭和という「鬼胎の時代」の淵源を、司馬作品から読み解く。
司馬遼太郎は、戦争体験から、この国を滅ぼしたものの正体を突き止めたいという問題意識をもって執筆活動に打ち込んだ。『国盗り物語』『花神』『明治という国家』『この国のかたち』を中心に、磯田は司馬からの未来に向けたメッセージを見出そうとしている -
16.3.3
津田沼丸善 -
司馬遼太郎の各文学を平和で読み解く一冊。というよりも平和(=昭和前半の状況)を司馬遼太郎の文学から考えるという一冊,という表現の方が正しいかな。どうしてそうなってしまったんだろう,と思うところはあるけれど,司馬遼太郎の文学そのものの魅力がもうちょっとあっても良かったかなと思う。
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(2016.04.01読了)(2016.02.26購入)
Eテレの「100分de名著」の放送テキストです。
今回は、司馬遼太郎さんの著作を取り上げて、司馬さんが読者に日本の歴史からどんなことを学んでほしかったのか、を読み解いてくれています。
主に取り上げている作品は、『国盗り物語』『花神』『「明治」という国家』『坂の上の雲』『この国のかたち』といったところです。
NHK大河ドラマを見ながら、いつの間にかたくさんの司馬遼太郎さんの作品を読んできましたが、『花神』は、まだ読んでいなかったので、この機会に読んでみようかなと思います。
【目次】
【はじめに】司馬さんからのメッセージ
第1回 「戦国」から読み解く変革力 『国盗り物語』を中心に
第2回 「幕末」に学ぶリーダーの条件 『花神』を中心に
第3回 「明治」という名の理想 『「明治」という国家』を中心に
第4回 「鬼胎の時代」の謎 『この国のかたち』を中心に
●歴史をつくる(8頁)
司馬さんは、ただの歴史小説家ではありません。「歴史をつくる歴史叙述家」でした。
歴史というのは、強い浸透力を持つ文章と内容で書かれると、読んだ人間を動かし、次の時代の歴史に影響を及ぼします。それをできる人が「歴史をつくる歴史家」なのです。
●歴史に影響を与えた歴史家(9頁)
小島法師『太平記』
頼山陽『日本外史』
徳富蘇峰『近世日本国民史』
●動態の文学(14頁)
司馬さんの文学というのは、時代のダイナミズムや社会の変動を描く「動態の文学」です。徳川幕府や全国の諸藩があるとするならば、それがどうやってできたかに考えをめぐらせ、それをつくる諸々の力を描く。あるいは、幕府や藩が逆にどのように壊れ、敗れていったのか、どんな力がそこに働いたのかを考察し、その様子を描いていく。動態のエネルギーがどのように生じるのかということを国民の眼前に見せる文学です。
●信長(19頁)
すべては、信長からはじまった。近世の基本については信長が考え、かつ布石した。
信長は、すべてが独創的だった。
●「国盗り物語」(31頁)
司馬さんがこの物語で描きたかったのは、その後の日本、あるいは日本人の在り方の二つの側面だと思います。ひとつは、合理的で明るいリアリズムを持った、何事にもとらわれない正の一面。そしてもうひとつは、権力が過度の忠誠心を下のものに要求し、上位下逹で動くという負の一面。
●大村益次郎(43頁)
変動期には大村のような合理主義的な人物が登場して日本を導くが、静穏期に入ると日本人はとたんに合理主義を捨て去る。
●リーダー像(46頁)
司馬さんが描きたいリーダー像というのは、国を誤らせない、集団を誤らせない、個人を不幸にしない、ということに尽きると思います。
☆関連図書(既読)
「国盗り物語(一)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1971.11.30
「明治という国家」司馬遼太郎著、日本放送出版協会、1989.09.30
「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
「この国のかたち(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1993.09.10
「龍馬史」磯田道史著、文藝春秋、2010.09.30
「NHKさかのぼり日本史⑥江戸」磯田道史著、NHK出版、2012.01.30
(2016年4月6日・記)
内容紹介(amazonより)
二十一世紀を生きる私たちへ
作家・司馬遼太郎が亡くなって20年、日本はいま大きな転換期にある。『国盗り物語』『花神』『「明治」という国家』『この国のかたち』を題材に、日本と日本人の未来について考える。 -
多様性尊重のうえに自己確立 磯田道史著『司馬遼太郎スペシャル』.
「100分 de 名著」番組テキストが、「100分 de 名人」に転じたかの、感.
没後20年を期して、一作品を論ずる内容が作家一人(いちにん)を論ずる視野を示す.
戦国、維新、戦中・戦後.
4作品を軸にその関連深い作品も、豊富にとりあげる.「なぜ日本は失敗したのか」「なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか」.
著者は、司馬の戦争体験に思い馳せつつ、そこを思いめぐらす.
『国盗り物語』は、「日本陸軍の『先祖』が濃尾平野から生まれてくる過程」(31p)
『花神』は、「陸軍が誕生時にもっていたはずの合理性は
どこへ行ったのだ」(42p)
『「明治」という国家』は、「(薩長土肥の)この多様さは、明治初期国家が江戸日本からひきついだ最大の財産」(59ー60p)
『この国のかたち』は、「(敗戦までの十数年)日本史のなかでもとくに非連続の世界」「『異胎」「鬼胎」=自分のこどもではあるが親に似ていない」(74&75p)
司馬のリーダー像
「国を誤らせない、集団を謝らせない、個人を不幸にしない」(46p).
一方で対極にあるのは、「仲間だけでしか通用しない異常な行動を平気でとってしまうこと」(47p).
ここを読んで、頭の痛いのは国民のほう、か?.
筆者はまた、最も有用な財産となったのは「江戸の多様性であると司馬さんは言います」(50p)と、書く.
本書表紙の副題には、「自己を確立して、他人をいたわるーそういう人になってほしい」、と.
あわせて.「多様性尊重のうえに自己確立」ということなのかと、うけとめたのである、が.(日本放送出版協会 2016年).