カント『永遠平和のために』 2016年8月 (100分 de 名著)
- NHK出版 (2016年7月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
- / ISBN・EAN: 9784142230655
感想・レビュー・書評
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2022年4月3日再読。ヒトラーに喩えること問題で多少燃えてしまった感のある先生だが、そんなバイアスを別としても何か例えばネトウヨを過度に恐れるような解釈が目立ってどうもやっぱり釈然としないところはある。絶対平和主義や理想主義、難民政策の寛容などの博愛主義を過敏に否定しすぎているのではないか。カント本人にしたってある程度の理想がなければそもそも本書は書かれてなかった。
とはいえ短いながらも難解なこのエッセイを一つ一つパラフレーズしてくれてより理解を深めてくれたことは確かでその点は大いに感謝している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この時期の平和の本である。どんな本かと思ったら意外なトーンである。相手を信じれば平和になる(こういうことを主張している人に限って,どうしても信じられない人がいたりするからうまくいかないのだろう)ということではなく,形式という道徳から考えていくという視点は斬新だと思ったし,全員のそれぞれの想いが実る解決案がない以上,有効ではないかと思った。
それでも平和になるのは難しいだろうけれど,日頃にも参考になる視点もあった。気に入らない人,うまく付き合えない人に対する期待である。はじめから期待度が高くなり過ぎない,そういうものだと思って発想するとちょっと違ってくる。そういうのは諦めではなくて,それが当たり前なのだから。 -
世界平和について哲学者が考えてみた。という感じの本。
カントなので綺麗ごとで終わるのではないかと思ったが、実際には合理性や妥当性を考慮されており、とても良い本。
・そもそも人間は邪悪な存在で戦争が起きて当然。平和を作るほうが難しい。
・戦争を起こしても、経済的なメリットがない状態を作る
哲学が様々な問題に応用できることを証明しているとも思う。
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/57_kant/index.html -
知的5
かかった時間40分
以前にジュニア新書のカント入門を読んでいたので、それをさらにダイジェストにした感じの本書は、わりと苦労せずに読めた。
カントの考える道徳は、悲観的人間観から生まれたものであると同時に、だからこそ語ることができるのだと思った。
道徳の、内容ではなく形式。
定言命法で語られる、それこそが道徳。
それは、ロールズの正義でいうところの「無知のベール」と同じである。
これを理解し、さらに本心から実現できるエリートたちが、世界をリードする日が来たらいいなあ。
結局、私利私欲のためにいろいろ画策することは、お得ではないのだよ。 -
(2016.09.14読了)(2016.07.28購入)
Eテレの放送テキストです。
『永遠平和のために』は、カントの著作の中では、薄くて比較的読みやすい本です。僕も大学生の時に読んでいます。
カントの生まれたのが、1724年で、亡くなったのが1804年ということですので、日本だと江戸時代に当たります。今から250年ぐらい前の人です。
『永遠平和のために』が刊行されたのは1795年です。フランス革命が1789年ですので、フランス革命の後ということになります。プロイセンとフランスがバーゼル平和条約を締結したのが、1795年ですので、本の刊行はこの年ですね。
ナポレオン戦争は、1799年から1815年までですので、それよりも前ですね。
18世紀は、ヨーロッパで多くの戦争が行われていますので、何とかしたかったのでしょうね。国際社会は、まだ、カントの提言を生かし切っていないのが残念です。
【目次】
【はじめに】 哲学的視点から戦争と平和を考える
第1回 戦争の原因は排除できるか
第2回 「世界国家」か「平和連合」か
第3回 人間の悪が平和の条件である
第4回 カントが目指したもの
●動機(13頁)
カントに『永遠平和にために』を書かせる直接の動機となったのが、1795年4月にフランスとプロイセンの間に交わされた「バーゼル平和条約」です。
●傭兵の禁止(21頁)
カントは王が自らの軍隊として傭兵を雇うことを禁じてはいますが、国を守るための国民による自発的な国民軍の存在は認めていたのです。
☆関連図書(既読)
「永遠平和の為に」カント著・高坂正顕訳、岩波文庫、1949.02.20
「啓蒙とは何か」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1950.10.30
「道徳形而上学原論」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1960.06.25
(2016年12月27日・記)
内容紹介(amazon)
難解さで知られる哲学者カントの『永遠平和のために』は、道徳的・理想主義的なきれい事を述べているだけだという誤解がよくなされる。しかし実際には、よりリアルな人間理解と現実認識に基づき、「永遠平和」を可能にする条件を考察した書であった。終戦から71年目を迎える8月に、この名著を読み返す。 -
発売日 2016年07月25日
価格 定価:566円(本体524円)
判型 A5判
ページ数 116ページ
雑誌コード 6223065
Cコード C9498(外国文学その他)
ISBN 978-4-14-223065-5
刊行頻度 月刊
NHK テキスト
平和を可能にする“条件”とは何か?
難解さで知られる哲学者カントの『永遠平和のために』は、道徳的・理想主義的なきれい事を述べているだけだという誤解がよくなされる。しかし実際には、よりリアルな人間理解と現実認識に基づき、「永遠平和」を可能にする条件を考察した書であった。終戦から71年目を迎える8月に、この名著を読み返す。
<https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062230652016.html>
はじめに 哲学的視点から戦争と平和を考える
第1回 戦争の原因は排除できるか
第2回 「世界国家」か「平和連合」か
第3回 人間の悪が平和の条件である
第4回 カントが目指したもの
《「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」という哲学史に残る名著を著し、近代哲学の骨格を築いた18世紀の哲学者イマヌエル・カント(1724 - 1804)。彼が確立した哲学は「ドイツ観念論」と呼ばれ、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんなカントが最晩年、戦争が絶えないヨーロッパ情勢を憂い、「世界の恒久平和はいかにしてもたらされるべきか」を世に問うたのが「永遠平和のために」です。終戦記念日を迎える8月、この本をあらためて読み解きたいと思います。/「永遠平和のために」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、国家間の紛争が頻発。民衆たちが戦争を忌避し平和を希求する一方で、国家間のエゴが対立しあい、一部権力者たちによる軍備拡張や戦費の増大がとめどなく進んでいました。巨大な歴史の流れの中では、戦争を回避し、恒久平和を実現することは不可能なのかという絶望感も漂っていました。そんな中、「国家」の在り方や「政治と道徳」の在り方に新たな光をあて、人々がさらされている戦争の脅威に立ち向かったのがカントの「永遠平和のために」です。そこには、「常備軍の廃止」「諸国家の民主化」「平和のための連合創設」など、恒久平和を実現するためのシステム構築やアイデアが数多く盛り込まれており、単なる理想論を超えたカントの深い洞察がうかがわれます。それは、時代を超えた卓見であり、後に「国際連盟」や「国際連合」の理念を策定する際にも、大いに参考にされたといわれています。/哲学研究者、萱野稔人さんは、民族間、宗教観の対立が激化し、テロや紛争が絶えない現代にこそ「永遠平和のために」を読み直す価値があるといいます。カントの平和論には、「戦争と経済の関係」「難民問題との向き合い方」「人間の本性に根ざした法や制度のあり方」等、現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。/番組では、政治哲学や社会理論を研究する萱野稔人さんを指南役として招き、哲学史上屈指の平和論といわれる「永遠平和のために」を分り易く解説。カントの平和論を現代社会につなげて解釈するとともに、そこにこめられた【人間論】や【国家論】、【政治論】などを学んでいきます。》
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/57_kant/index.html -
16/08/05。