ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』 2023年6月 (NHKテキスト)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142231522

作品紹介・あらすじ

今こそ知るべき、「衝撃と恐怖の資本主義」の正体

ジャーナリストのナオミ・クラインは、1970年代のチリの軍事クーデターに始まり、ソ連崩壊、アジア通貨危機、米国同時多発テロ事件とイラク戦争、また台風や津波のような自然災害など、社会を揺るがす大惨事に乗じて導入された過激な市場原理主義改革の事実を、歴史的な視点で丹念に追い、この「ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)」によって先進諸国が危機状況にある国の富を収奪する構造を明らかにした。新自由主義が世界を席巻し、私たちの暮らす日本も「ショック・ドクトリン」の標的となり得る現在、改めてこの本を読みとき、社会を裏側で動かす構造を見抜く方法や、それに立ち向かうためになすべきことについて考えていく。

感想・レビュー・書評

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  • レビュー
    Eテレ100分で名著で視聴し、ショックを受けたのでテキストも手にとって読んでみた。TVでは聞き流してしまったところもしっかり確認出来てよかった。
    リアルタイムで知っているラムズフェルド、チェイニー氏などが回転ドアで政府要人とドクトリンの恩恵にあずかる企業の要人との間を行ったり来たりしていたとは衝撃だった。原著も読まねばならないと思った。
    チリの政変、ソ連崩壊、中国の民主化弾圧の構図も単刀直入にわかりやすく説明されていたが、何事も鵜呑みにはせず自分の頭で考えようと思っている。なにせメディアも煽る存在なのだから。私自身この世で社会人生活してきて行き過ぎた規制緩和には違和感を大いに感じているので、言語化してまとめてくれたことはうれしい。
    国連機関も紛争解決に何にも役にも立っていないとイライラしていたが、IMFの話を読みなるほどやはり金の出どころに左右されている機関なのだということがよくわかった。
    満足度★★★★

    100分 de 名著ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』 2023年6月
    著:堤 未果
    ISBN:9784142231522
    。出版社:NHK出版
    。判型:A5
    。ページ数:116ページ
    。定価:545円(本体)
    。発行年月日:2023年05月
    。発売日:2023年05月26日

    内容紹介
    今こそ知るべき、「衝撃と恐怖の資本主義」の正体

    ジャーナリストのナオミ・クラインは、1970年代のチリの軍事クーデターに始まり、ソ連崩壊、アジア通貨危機、米国同時多発テロ事件とイラク戦争、また台風や津波のような自然災害など、社会を揺るがす大惨事に乗じて導入された過激な市場原理主義改革の事実を、歴史的な視点で丹念に追い、この「ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)」によって先進諸国が危機状況にある国の富を収奪する構造を明らかにした。新自由主義が世界を席巻し、私たちの暮らす日本も「ショック・ドクトリン」の標的となり得る現在、改めてこの本を読みとき、社会を裏側で動かす構造を見抜く方法や、それに立ち向かうためになすべきことについて考えていく。

    著者紹介
    国際ジャーナリスト。東京都生まれ。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券などを経て現職。

    以上アマゾン、Books出版データベースより

  • ショック・ドクトリンという単語は東日本大地震の時によく耳にしたので知っているつもりだったが認識が甘すぎたのを本書にて思い知った。歴史認識もちょいちょい変わるくらい「ショック」を受ける内容だ。

    つくづく災害便乗型資本主義(新自由主義)の人非人ぶりには恐れいる。CIAの拷問プログラムを参考にしたやり方というのがまずすごい。ほとんど敵国と戦う時のような戦争時の姿勢ではなかろうか。

    何らかの事件や災害によりショック状態に陥った国や地域にミルトン・フリードマンの弟子シカゴ・ボーイズを派遣し、国民の頭がまともに働かない間に電光石火の勢いで、普段だったら非難轟轟になるような多国籍企業や外資を優先する政策「規制緩和・民営化・社会保障削減」を無理矢理通してしまう。住民の幸せや国の未来など踏み潰して、自分たちだけが効率よく儲けられたらそれでいいという図々しい完全無責任スタイル。

    昔から火事場泥棒ってのはいたが、現代の火事場泥棒は海を越えて押し寄せるのが恐ろしい。もう規模が違う。イナゴが大量発生して農作物が全滅するイメージに近い。

    エリート男性が書いている新書『リバタリアニズム』では、先進的でフロンティア精神に満ちた街と紹介されていたサンディ・スプリングス市も、金の切れ目が縁の切れ目、新自由主義者の富裕層だけで固まって周りが荒廃している街と身も蓋もない書き方でちょっと笑った。でも、そりゃそうだよねとしか言いようがない。こっちの方が新自由主義のあり方を端的に表していると思う。

    竹中平蔵氏がフリードマンの弟子というだけで色々納得できた。日本はまさに進行中なのだな。

    それに新自由主義者の旗振り役としてのメディア。『アメリカの原爆神話と情報操作』でも、悪い意味で活躍したニューヨークタイムズ紙がここでも活躍しており、こちらも色々と納得(それにしても、こうしてちょこっと本を読めば手に届く範囲内にこうした情報がゴロゴロ転がっていたのに、何も知らずに、何の問題もなく生活できてしまう現代社会の怖さを感じる。SNSにある「マスゴミ」というスラングからは感情以外何も伝わってこない)。

    それでも最後の章にはちゃんと新自由主義に対抗して成功してる人たちの実例もあり、希望が持てる内容だと思う。できればナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』も読んでみたい。

    カラーページや写真、同ページ記載の用語解説などもあり、番組を視聴してなくても問題なく楽しめる充実した内容だった。600円でこの情報を効率よくゲットできるのはお買い得です。などと新自由主義的な物言いをしてみる。

  • NHK
    ナオミクライン氏
    カナダ出身のジャーナリスト
    2007年出版
    1970年代から現代に至るまで世界経済の裏側を暴き出した本

    指南役は堤未果氏
    ジャーナリスト、同時多発テロに遭遇

    《内容》
    ○ショックドクトリンとは、造語
    ショックとは災害、テロ、戦争等の大きな災害
    ドクトリンとは政策
    大惨事をチャンスとばかりに過激な経済改革を断行すること
    火事場泥棒の意味

    ○惨事便乗型資本主義と定義し、ルーツとなる人物はフリードマン
    政府が介入せず全く規制のない状態にあれば、市場は自らバランスを取るという新自由主義を説いた

    ○災害等の危機によって民衆がショックになっている間に、規制緩和 民営化 社会保障の削減、強制的に行われていたことを暴き出していった
    民間が入って短期的にはよくなる、しかし民間は悪くなったら撤退する
    こぼれ落ちた人はどうするかという視点がない

    ・1970年チリのショックドクトリン実験
    ・1980年代イギリスのフォークランド紛争
    ・1997年アジア通貨危機
    ・1991年ソ連崩壊 エリツィン
    ・2001年9.11アメリカ同時多発テロ

    《感想》
    堤氏の解説はとてもわかりやすかった
    著書も読んでみたい

    こういう現実があることがわかった
    しかしもっと先があった
    アメリカ政府は、今後攻撃を受けるであろうと想定して、復興計画を立て、国の予算をつけお金を民間へばらまいていくという
    まるで戦争を仕掛けるようだ
    普通に暮らしている地域に復興?住民は知っているのか?
    やってもいないのに予算を上げ民間へ流す?
    そんなことがまかり通っている

    真っ先に脳裏に浮かんだのはロシア
    ここはやられる前という体裁で戦争を仕掛けた
    もしかしてウクライナの復興計画を独自に立てているかもしれない
    何とも怖い現実だ

    最後に伊集院さんが面白い視点を言っていた
    伊集院氏:
    深刻なのは、スマホというのは自分の好みや自分に合う考え方しか出てこない
    気をつけないとコントロールされちゃう
    自分が冷静でないとさらわれちゃう気がする

    それに対して堤氏:
    あえて自分の考えと真逆のブログを見る
    いろいろな考え方のあいだを取って議論するのが民主主義
    究極いくと民主主義も面倒になってくる、トップダウンが楽になってくる
    脳トレをした方がいいですね

    伊集院さんのいう通り、スマホで我々洗脳されてしまっている節がある
    事実を知っておくことは大切だ

  • NHKがこの本をこの番組で取り上げてくれたことで、払いたくなかった視聴料を払ってもいい気になった。

    堤未果は、この薄い書物の中に、ナオミ・クラインの大部の名著のエッセンスを見事に盛り込んでいる。

    そして第3回のところで、ナオミ・クラインが書き込んでいなかった(少なくとも私の記憶では)驚くべき事実を暴露している。
    イラク戦争で生み出された「戦争と再建の民営化モデル」はブッシュ政権以後、アメリカの外交政策に組み込まれ、イラク占領から一年半後、アメリカ国務省は次のような発表をしたというのである。
    「将来なんらかの理由によりアメリカ主導による攻撃を受ける可能性のある世界二十五カ国(ベネズエラからイランまで)について、その詳細な国家復興計画の作成を民間事業者に発注する」と。
    惨事が起きる前に、事前にドクトリンを準備するということ。
    そして、戦争を惹き起こす気満々、ということ。

    新自由主義=グローバル資本主義、ここに極まれり。

    第3回の番組で、この事実はオンエアされるのであろうか。
    楽しみだ。

  • Eテレでやってるのを録画してみた

    社会に壊滅的な惨事が起きた際に、人々が茫然自失している時を、チャンスとして捉えて巧妙に利用するする政策手法

    1,ショックドクトリンの誕生
    フリードマン理論 シカゴボーイズ
    チリの民営化 サッチャーの民営化

    2, 国際機関というプレイヤー
    アジア通貨危機 IMF
    中国 改革開放 人民武装警察 格差拡大 搾取工場
    ロシア ソ連崩壊 創造的破壊何単なる破壊に オリガルヒ

    3, 戦争ショックドクトリン
    政府中隔までの民営化 911 イラク戦争 新植民地主義 

    4, 日本、そして民衆のショックドクトリン
    ハリケーンカトリーナ 学校の民営化ビジネス化 復興特区 
    日本の民営化 有事の時に機能するか? 数値で価値が測れないところは? 地域の参画は?
    スマトラ沖地震 被災者自身による復興 政府との交渉 自力復興 

  • ずっと心にひっかかっていた国際情勢の裏側の部分があぶり出されていくように感じた。自分の頭で考えて、行動することの大切さを実感する。

  • さすがに偏りすぎではないか。ナオミ・クラインもここまで偏っているのかわからないけれど、少なくとも著者のアンチ新自由主義は酷い。
    確かにフリードマンに代表される新自由主義には酷い面があるのは事実なんだけど、効率化やイノベーションに資する面もあり、例えば国鉄や電電公社のままでいま日本が享受している便利さは実現できただろうか、、、。
    なので全面否定ではなく必要なのは是々非々の態度で、むしろ著者のような立場の人が採用すべきはそのような対話もできずにただ対立構造に陥ってしまう現状であって、全面的な対抗の姿勢ではないと思うのだけれど、、、、。

  • 端的に、わかりやすくまとめてくれている。
    良著です。

    いまの世の中を誰が作っているのか。
    何が必要なのか。
    これらを知ることが出来る。
    ただ、これは入門書なのでここからの勉強は必要。

  • 戦争や自然災害などの危機に乗じて多国籍企業などが富を奪うメカニズム「ショック・ドクトリン」。その構造を明らかにした書を詳しく解説。早い時期からこの書から影響を受けて警笛を鳴らし続けてきた堤未果による解説は分かりやすい。この番組がNHKで多くの視聴者が見ることで社会の意識が変わるきっかけとなるだろう。

  • 恐るべき真実。恐ろしい戦略。資本主義と底なしの欲望。世界を操る一部の人たち。それが、日本の同盟国である。すでに日本にもシカゴボーイズは存在しているのだろう。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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