黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル (ハヤカワ・ミステリ)

  • 早川書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019976

作品紹介・あらすじ

ストックホルムで女性の刺殺体が発見された。交際相手の男は服役中だったが、事件当夜は仮釈放されていた。警察は男が犯人と確信するが、ヴァネッサ警部の元に「彼は殺していない」と訴える女性が現れる。ネットで蠢く「インセル」が現実社会に牙を剝く暗黒ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 超絶★5 スウェーデンで発生した女性殺害事件の背景に何があるのか、憐憫と憤怒と怨恨と… #黒い錠剤

    ■あらすじ
    スウェーデンの首都ストックホルムで女性が殺害された。一番の動機がある容疑者は、刑務所に服役中の身であったが、事件当時は仮釈放で出所をしていたのだ。主人公である女性刑事ヴァネッサが捜査を進めていくが、彼は犯人ではないという女性が現れる。警察内部で捜査方針が混沌とする中、さらなる殺害事件が発生してしまい…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    超絶★5 この本はもっと話題になって欲しいなぁ~

    ただ事件の描写や背景がドギツイので、不愉快な気分になる人もいるかもしれません。しかしそこが一番の魅力なので、ぜひ毒を飲む覚悟で読み進めてください。

    本作は事件を中心に大勢の視点で物語が進行する群像劇です。しかもテンポよく次々場面展開していくので止まらなくなるんですよ。いやーおもろい。登場人物が多くて困惑しがちですが、そんな時は何度も何度も人物表を見ましょうね。(めくりやすいように、人物表ページに大きめの付箋を付けときましょう)

    群像劇はいかに人が魅力的かが大事なんですが、これがしっかり書けてるのよ。主人公の女性刑事ヴァネッサなんて、超クールなんよ。真のしっかりしたギャルよろしく鬼美人で色気抜群。頭も切れて行動力もあるし腕っぷしも強い。でも、時折見せる背中が寂しい。

    新聞記者のジャスミナも勇気がある女性だし、元軍人のニコラスと少女セリーヌの関係性なんて何度胸がキュンキュンしたか。
    忘れちゃいけないホームレスの男女。様々な人生を経て劣悪な環境にまで落ちた二人のエピソードなんてもうっ…
    そうそう、犯罪者や悪者もしっかり描けてますよ。久しぶりにこんなハッキリとしたクズを見ましたよ。クズofクズですね。

    彼ら人物像もそうなんですが、なによりひとつひとつの場面で、しっかり情念が突き刺さってくるんですよ。強い単語が使われているだけでなく、センテンスの塊として厚みがありまくり。

    本作メイン一番の謎解きは動機、そして犯人とそれぞれの結末。後半まで、まるで見当もついていなかったのですが、徐々に真相が見えてくると…こわっ

    私には全く考えられない動機。ただ現代の優しいふりをした厳しい世の中を見てみると、なんとなく理解できてしまう。欧米で発生した事件は、数年後に日本で発生すると言いますが、本当にやめてね。

    ■ぜっさん推しポイント
    それにしても本書のタイトル「黒い錠剤」ですか、なるほど… そして章ごとの導入に挟まれる一文の意味が分かった時、マジ怖かった。日本に住んでると平和ぼけしちゃいますね、海外ミステリーを読むといつも勉強になることばかりです。

    そういえば昔、サンボマスターが主題歌を歌っていたドラマがあったなぁ。みんなに手を差し伸べてあげられる、優しい世の中になって欲しいですね。世界はそれを愛と呼ぶのでしょう。

    • autumn522akiさん
      月詠さん、こんばんは。お元気ですよ!

      選書の基準は以下の通りです。まず大きな枠組みとしては、以下の通りでして。

      ・ミステリー
      ...
      月詠さん、こんばんは。お元気ですよ!

      選書の基準は以下の通りです。まず大きな枠組みとしては、以下の通りでして。

      ・ミステリー
      ・新作
      ・翻訳もの

      理由はまずミステリーが大好きですし、新作を追いたいためです。そしてこれまで既刊作品の国内ものは、それなりに読んできているため、海外翻訳ものを優先して楽しんでます。

      具体的な選書は、ミステリーの書評家先生のレビューを見てあたりをつけることが多いです。特に以下の先生は知識や情報量が多く、考察も深いので信頼できます。そして新刊発売からレビューまでが速いです。

      杉江松恋、川出正樹、若林踏、千街晶之、酒井貞道(敬称略)

      調べているサイトの例)
      ■書評七福神の十一月度ベスト!
      https://honyakumystery.jp/24103
      ■リアルサウンド 2024年1月のベスト国内ミステリ小説
      https://realsound.jp/book/2024/02/post-1573932.html
      ■本の雑誌 #杉江松恋
      https://www.webdoku.jp/newshz/sugie/
      ■You Tube杉江松恋チャンネル「ほんとなぞ」
      https://www.youtube.com/@user-hontonazo

      また新刊で買う場合もあれば、図書館で借りる場合もあります。図書館だと、借りられる順番次第ですね。
      2024/02/22
    • autumn522akiさん
      私のレビュアーとして心掛けは「作品のココが好き!」を伝えることですかね。これは書評家の三宅香帆先生の受け売りです。三宅先生は、本への愛情ぶり...
      私のレビュアーとして心掛けは「作品のココが好き!」を伝えることですかね。これは書評家の三宅香帆先生の受け売りです。三宅先生は、本への愛情ぶりは半端なくて大好きなんです。

      あと重要なのは、どんな作品でも前向きに楽しんで、前向きになることを書くようにを心がけてますね。
      2024/02/24
    • 月詠さん
      ありがとうございました。
      精進します。
      ありがとうございました。
      精進します。
      2024/02/24
  • FEMICIDE – Nordin Agency
    http://www.nordinagency.se/portfolio-item/rattkungen-feminicido/

    Pascal Engman
    https://www.pascalengman.com/

    黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル | 刊行年月,2023年,11月,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015642/

  •   強烈な劇薬のような作品が登場。1986年の若手作家だが、スウェーデンの警察小説らしく実際に起こった事件をモデルにした社会的に無視し難い特別なテーマを題材にしたショッキングとも言える作品である。章立てが短く猫の眼のように切り替わる視点が最初はとっつきにくいが、徐々に数多い登場人物たちの個性が際立ってきて、それぞれがこの作品中で果たす役割がページを進めるにつれ明らかになってゆく頃には、一気読みできるほどの酩酊感と疾走感で脳がいっぱいの読書を体験できるのではないかと思う。

     聴き慣れないであろうスウェーデンの名前の登場人物たちだが、主たるキャラクターは女性捜査官ヴァネッサとその友人で元軍人、本書では組織には所属していないが腕っぷしではとても頼りになるニコラス。またジャーナリストのグループも本書では重要な役を果たす。

     そして市井の人々がなぜか描かれるが彼らがどう関係してくるのかは、ページを進めるにつれ明らかになってゆく。主に事件の加害者たちだったり、被害者であったり、証人や目撃者であったりもするが、刑務所の様子や、女性関係で何かと物議をかもすTV司会者など、随所の軋轢が断片的に登場することにより、真相は多くのオブラートにくるまれてとてもわかりにくくなっている。ミスリードたっぷりの迷路のような作品とも言える。

     各人が各所で小さなエピソードを積み上げてゆくような描写によるいわば群像小説と呼べる一面もある。いわばエド・マクベインの87分署のようなイメージである。そういえばスウェーデン版『87分署』と言えば、シューヴァル&ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズであった。デンマーク版87分署とは言い切れぬものの『特捜部Q』などデンマーク版北欧ミステリの警察シリーズとしてぼくは今も楽しんでいる。本書もまた、未だ一作の邦訳ではあるが、スウェーデン・ミステリのお家芸のような作品である。

     ただ、本書のテーマは少々掴みにくい。親しみにくいとも言えるテーマである。そのテーマは<インセル>。女性と関係が持てぬばかりか女性から蔑視され女性に近づけない人生を送るうちに女性という性そのものを激しく憎んでゆく男性の存在であるらしいことが読み進むにつれわかってゆくが、彼らがグループ化して女性に対する銃撃など、見過ごせぬ重犯罪が実際にスウェーデンでは発生しているらしい。女性という性だけを対象にした無差別犯罪である。日本では考えにくいが、個別にはこうしたサイキックとも思える性差別犯罪は認定されないだけであって発生していないとは断言し難い。

     本書では上記のテーマであるが、作品毎にこうした社会的テーマを扱いながら警察組織やジャーナリズムなどを主としたレギュラー・キャラクターを軸に本シリーズは本国では人気シリーズ化しているのだと言う。作者は1980年代生まれの若手作家と見えるがジャーナリズム出身者ということもあり、活気ある記者たちが捜査キャラたちとは別の動きで現場に登場し、さらには事件被害者ともダブルリンクしてゆくなど、誰がいつどこで巻き込まれるかわからぬ一大犯罪迷路のような作品にも見える。

     最後の銃撃シーンが派手過ぎるきらいはあるが、そのうち映画化やドラマ化も有りかと思わせる過激さとスケール感に満ちていながら、現実に起きた事件に材を取っているところなど如何にも北欧ミステリらしい。一作目も続編もこれから邦訳される可能性があるならば、是非読みたい。そんな注目すべき作家の一人が登場してくれた本書である。

  • 舞台はストックホルム。事件は女性の連続斬殺。
    警部のヴァネッサ、タブロイド紙記者のジャスミン、元軍人のニコラス、TV司会者のオスカル、路上生活者のポリエ、そして女性とつきあえないトム。そして殺された女エメリと元交際相手で服役中のカリム。殺人の周囲でこれら登場人物たちが絡まってくる。冒頭にけっこう読んでてキツイ描写があるので辟易するのだが、後半になりヴァネッサが犯人を割り出してゆく過程は手に汗握る展開。

    暴力、女性嫌悪、これがずっと底に流れる。描写は読んでいてつらい。そこまで描かなくてもと感じるが、犯人がこの犯罪に至った経緯、後半になって描かれる犯人の心理の噴出点が冒頭の描写なのかもしれない。最後はさらにおぞましい犯罪となる。誰も犯人みたいになろうと生まれてくるわけではないだろう。そうなってしまう病理を描きたかったのか。

    2019発表 スウェーデン
    2023.11.15発行 図書館

  • 構成が上手く、同時並行で幾人かの話が進んでも整理されていて読みやすかった。
    しかしなぁ…。
    フェミサイドの加害者に、その身勝手な動機を声明になど絶対させないと言う主人公の姿勢は好きだった。
    けれど、この本自体がどうなのか。
    加害者は言いたい放題なのに「生い立ちに色々あって仕方ないとこもあるんですよ〜」というような逃げが用意され、更にネットの書き込み的な女性嫌悪発言の引用があちこちに置かれる。
    対して被害者は、皆ほぼ何も自分の口で語れず、人物描写もほぼなく、ただ殺される。
    主人公の姿勢と逆だと思う…。
    作者はフェミサイドを許せないと思っているだろうとは思うものの、それ以上に加害者を題材として面白いと思ってしまったんだろうな…。
    あなたが軽んじて面白がっているそれは私にとっては辛い現実だ、とこれも登場人物の一人がはっきり言っていることなのに。
    残念だ。

  • これもまた面白いシリーズになりそう。

  • ストックホルムで女性の刺殺体が発見された。交際相手の男は服役中だったが、事件当夜は仮釈放されていた。警察は男が犯人と確信するが、ヴァネッサ警部の元に「彼は殺していない」と訴える女性が現れる。ネットで蠢く「インセル」が現実社会に牙を剥く暗黒ミステリ。

    新しい警察小説。シリーズ2作目らしい。
    邦題を見て、医療ミステリかと勘違いしていた。エグい描写もあるもの、抜群のリーダビリティで、堪能いたしました。

  • 新たな北欧ミステリー。ヴァネッサフランクと言う警部が主人公。めちゃ面白くてあっと言う間に読めた。社会の問題点のヤクやDVや人種差別、等を複合的に収めている。始めはパラパラに散らばったパズルを最後にはしっかりまとめる感あって良かった。

  • SL 2023.12.1-2023.12.3
    視点がくるくる変わるのではじめは読みにくいけど、少しずつ、だんだんと繋がってくるとパズルを嵌めていくような快感があって読む手が止まらない。
    警察小説なんだけど、主人公ヴァネッサのやみくもに法を守ろうとしない柔軟なやり方が好きだ。
    これが2作目なのでヴァネッサが警察組織で浮いていることがわかりにくいし、前作ではニコラスが重要な役割を担っていたことがわかるので、1作目を邦訳してほしい。

  • 良質なミステリーを輩出するスウェーデンミステリー界に新たなる傑作シリーズが、誕生しました。
    それが、国家警察殺人捜査課ヴァネッサ・フランク警部を主人公とする今作です。
    まず、登場人物が良いです。主人公のヴァネッサを始めとして、クライマックスで大活躍するニコラス、ニコラスの隣人の少女セリーネ、記者のジャスミナと皆、芯を持った人物として描かれています。ヴァネッサとニコラス、ニコラスとセリーネのそれぞれの関係性が非常に良く、上手く丁寧に描かれています。そして、ボリエとエーヴァの悲しい物語も有ります。
    最初は、各登場人物の短いシーンが続き、話がどのように繋がって行くのか見えないかもしれませんが、全貌が明らかになるにつれ、読書のスピードが上がります。そして、クライマックスに繋がるスタジアムへ向かうシーン以降は、ページを捲る手が止まらなくなります。かなり劇画的です。映像映えするのではとも思います。
    ☆4.7今作は、シリーズ2作目です。

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