キリンヤガ (ハヤカワ文庫 SF レ 3-4)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112721

作品紹介・あらすじ

絶滅に瀕したアフリカの種族、キクユ族のために設立されたユートピア小惑星、キリンヤガ。楽園の純潔を護る使命をひとり背負う祈祷師、コリバは今日も孤独な闘いを強いられる…ヒューゴー賞受賞の表題作ほか、古き良き共同体で暮らすには聡明すぎた少女カマリの悲劇を描くSFマガジン読者賞受賞の名品「空にふれた少女」など、ヒューゴー賞・ローカス賞・SFクロニクル賞・SFマガジン読者賞・ホーマー賞など15賞受賞、SF史上最多数の栄誉を受け、21世紀の古典の座を約束された、感動のオムニバス長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 西暦2120年代、ケニアに暮らしていた民族たちは白人に追われ、サバンナを失い、やがて地球を旅立つ。
    旅立った先の星を古代からの言い伝えとともにキリンヤガと名付け、その場所をユートピアとして暮らしていく祈禱師と住民や地球からやって来る人たちとのストーリー。
    その場所の純潔を守るためには揺るがない掟は大切だが、川が流れるように時代は流れていく、その川の流れを掟で止めたり変える事は良いのだろうか?考えさせられた。
    SFに民族文化を融合させた秀作

  • SF。連作短編集。
    初めてのレズニック作品。
    一言で、傑作。なんでこの作品が絶版なのか。
    テーマは"ユートピア"と"伝統"と"変化"か。
    とても面白いが、読後感は正直良くない。読んでいて、とにかくもどかしい。
    経営者や政治家のような、上に立つ立場の人が読むべき一冊。
    むしろ、全人類が読んだほうが良いとすら思える。
    物語を通して、不偏的な教訓や知識が示唆され、滅茶苦茶に考えさせられる。

    評判の良い「空にふれた少女」も素晴らしかったが、個人的ベストは「マナモウキ」。
    ムンドゥムグの語る物語が、ムンドゥムグ自身に跳ね返ってくる結末が、非常に切れ味鋭い。

  • 初めて読んだのがSFマガジンに掲載されていた「空にふれた少女」で、図書館だったというのにもうボロボロに泣いてしまった。

    たとえそこが楽園であったとしても、その場で停滞することをよしとしない、人間の宿業のようなものを感じた。
    楽園というものは知恵の実を食べた者をとどめておけば崩壊してしまうものらしい。
    途中までは住民個人に関する悲喜劇のエピソードが続くが、「ロートスと槍」あたりからキリンヤガの構造そのものに話が及んでくる。
    日本だってどちらかと言えばここに出てくる「ケニア」に近いから全くの他人事ではない。似たテーマのSFもいくつかあったように思う(「金春屋ゴメス」など)。
    でもさすがに国民の大半がヨーロッパ系の名前を持つとか、日常的にヨーロッパ系の言語を話すとか、キリスト教会が社会的に重要な位置を占めるというところまではいってない。
    日本がアフリカほど徹底的に文化破壊されなかった理由はいろいろあるだろうけど、もしキクユ族がこのへんで止まっていればコリバは妥協できただろうか?

  • 寓意に満ちたオムニバス長編SF。絶滅に瀕したアフリカの種族・キクユ族は自らのユートピアを築くため小惑星・キリンヤガに移住する。文明社会で教育を受けたコリバは祈祷師として、その楽園を護るため孤軍奮闘するのだが・・・。
    伝統的社会と文明、村と個人、理想と現実等、様々な対立や問題がコリバの語る寓話やキリンヤガでの出来事を通じて読者に問いかけられ、深い余韻を残す。

    卑怯だなと思いつつも、「空にふれた少女」はやっぱり素晴らしい。

  • 「絶滅に瀕したアフリカの種族、キクユ族のために設立されたユートピア小惑星、キリンヤガ。楽園の純潔を護る使命をひとり背負う祈祷師、コリバは今日も孤独な闘いを強いられる…ヒューゴー賞受賞の表題作ほか、古き良き共同体で暮らすには聡明すぎた少女カマリの悲劇を描くSFマガジン読者賞受賞の名品「空にふれた少女」など、ヒューゴー賞・ローカス賞・SFクロニクル賞・SFマガジン読者賞・ホーマー賞など15賞受賞、SF史上最多数の栄誉を受け、21世紀の古典の座を約束された、感動のオムニバス長篇。」

  • 表紙が理由で買ってなかったのを後悔、アフリカの一部族 × SFというのも新鮮だったけど考えさせられる内容で面白かった

  • 色んな賞を総なめにしたのはわかる、面白い。わかるけど...連作として読んでると、崩壊への最初の兆しが見えてからあとは読むのが辛かった。早く終わらせて欲しくて一気読みした気がする。
    結局外界を知って出戻る、先祖帰郷するインテリは狂信者にしかすぎないのか、むずい。終わりはおじいちゃんは救われてるようでよかった。のか?むずい。

  • 西洋文明に侵される前の、民族文化を、テラフォームされた惑星で保存しようという試み。
    短編のオムニバス形式で進んでいく。
    かなり示唆に富んで面白いというか、結局は予定調和だったという面も感じた。
    何より、西洋文明を排除しようと言いながら、他の惑星に移住する技術はその西洋文めに依存している。祈祷師も、その西洋文明を最大限利用することで奇跡を実現させている。はなから、矛盾があるのだ。

    いろんな賞を取っている作品だそうだ。
    かなり地味だけど。

    自分の理想郷を、他人を犠牲に実現しようとした男の没落譚。

  • 社会と言うものをトートロジーに陥らないで定義できないままに、これが学問だと言い張るのが社会学。という指摘をTwitterのどこかで目にした覚えがあります。

    とはいえ、敢えて一時的に定義するなら
    『社会とは、生まれ生まれて死に死にゆく人々の、流動の中に形成された、共同体』
    と申せましょう。
    しかし『ユートピア』という語は違う。その言葉が固定したがる”状態”は、”構成員が生まれ、死に、入れ替わることで変化する”社会ではない……。

    静かなエンディングには禅の境地を感じます。

  • ユートピアを”維持する”ってどういうものなのか。変化のない世界はユートピアと言えるのか、と難しい問題を提起する作品でした。

  • 成長と変化、歴史と進化。年代や役割、時代と共に変わる主張と頑に変えられない考え。リーダーはいずれ老害に。自分の今の居場所とこれからを考えさせられる物語。

  • オムニバス短編集。個々の作品の発表年はバラバラ。

    【書誌情報】
    『キリンヤガ』
    原題:Kirinyaga: A Fable of Utopia
    著者:Mike Resnick
    訳者:内田 昌之
    出版社:早川書房
    シリーズ:ハヤカワ文庫SF
    出版年月:1999.5
    版型:文庫版(16cm)
    頁数:479p
    ISBN:415011272X
    価格:820円

    【目次】
    献辞 [003]
    目次 [005]

    プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに One Perfect Morning, with Jackals  009
    1 キリンヤガ Kirinyaga  025
    2 空にふれた少女 For I Have Touched the Sky  059
    3 ブワナ Bwana  105
    4 マナモウキ The Manamouki  183
    5 ドライ・リバーの歌 Song of a Dry River 243
    6 ロートスと槍 The Lotus and the Spear  281
    7 ささやかな知識 A Little Knowledge  315
    8 古き神々の死すとき When the Old Gods Die  369
    エピローグ ノドの地 The Land of Nod 415

    作者あとがき [465-474]
    訳者あとがき(一九九九年四月) [475-479]

  • 古書購入

  • これがSFかと目から鱗が落ちるような作
    表紙   7点田口 順子  内田 昌之訳
    展開   8点1998年著作
    文章   7点
    内容 730点
    合計 752点

  • 世界の先住民族は入植者に依って駆逐され、殺害された歴史がある。入植者達の技術や思想、全てが悪なのだろうか?

    ユートピアとは何なのか?を、今では形骸化し、ヨーロッパの文化に晒されてしまったケニアのかつての部族民の生き残りを通して描いた大作。

    舞台は近未来で、主人公である祈祷師自体も欧米での教育を受け、更に自身が生まれた時点でケニアは近代化していたため、時代錯誤も甚だしい話ではあるが、かつての欧米文化入植前の世界=ユートピアを追い求めるが、段々と老害化してしまっているのが悲しい。
    トータル500ページ近くの容量だが、複数の短〜中編で成り立つ「火星年代記」を彷彿とする構成に加え、会話中心の物語でかなり読みやすい。

    「ある社会がユートピアでいられるのはほんの一瞬なのだ。一旦完璧な状態になった後は、どんな変化があってもそれはユートピアではなくなってしまうのだが、社会というのはそもそも成長して進歩するものなのだ」

  • ソクラテスの本を読んでいるみたい。いろんな寓話と問答を読むだけでも楽しめる。
    主人公はどう考えても狂信者でしかないんだけど、なんだか感情移入してしまって、徐々にユートピアが崩壊していくさまははかなく、切ない。なるほど、こういうSFもあるのかと思わされる。

  • 古き良き時代を懐古する…。子供を永遠に子供のままにしておきたい気持ちと似ている。でも子供はいつしか成長し、変化していく。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

  • ムンドゥムグと呼ばれる、村の呪術師という役割を、呪術ではなく、テクノロジーで解決する。これは、ありだと思う。つまり、それを知るかどうかという知の力なのだから。
    でも、呪術の力というのは、本来は人が信じるところに由来するのだから、彼が、村人からの信頼を失った最大の原因が、テクノロジーの行使から来るというのが皮肉。
    そして、彼の成功を祈っていただけに、虚しくなる。
    「ヤノマミ――国分拓」を思い出す崩壊。

    ユートピアが個人の描く幻想であり、それらを束ねた共同幻想なら、人の理想が完全にかみあうことはないのだから、この世には、理想の夫婦も生活とないと思えば、楽にならないか。

    知識を欲しただけだったのに、環境のせいで、女だからって、それが得られない少女。
    ムンドゥムグの言い分もわかる。が、それで押し込められる人間の精神、それは、虐待だ……
    人の心を壊すのは簡単だけれど、何かを求める心を殺すのは、簡単ではない。
    つらい話。

  • 無くなってしまったアフリはキクユ族伝統社会を宇宙でユートピアとして再現しようとする男の話
    ユートピアを作る話がいつもそうであるようにこの社会は恐ろしげなディストピアになる(伝統にしたがって逆子は殺され、双子は殺され、女は所有物となり,病は放置され,井戸を作ることすらままならない).一応いつでも星を出ていけるという点でやや希望があるが伝統にしたがって皆文盲でキクユ社会に完全依存しきっているためほとんどのものは出て行かず中には死を選ぶものもいる.
    最終的に主人公の老人は地球に帰って自分一人の王国を作るがそこまで到達するのにどれくらい人を不幸にしたのだろうか虚しい男の話だったこの男に必要だったのは実は息子に認められることだったのではないか。現代社会の代表である息子はちゃんと父親の蘇らせようとしている社会の悪を、ダメなところを、矛盾点を完膚なきまで指摘すべきだったのだろう。

  • 2001.1.31 読了

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