- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150301262
感想・レビュー・書評
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石原博士の60ページにわたる解説が熱い(解説のほうが面白いかもしれない)。著者は多忙なエンジニアで会社員生活の傍らの創作。名作とされる表題作も新婚旅行期間の執筆だそう。定年退職後の活動は期待できるだろうか╱現在理系で一番儲けている金融工学は「賢い者は大きな責任を任され大きな失敗をする」リスクがある。ゲーム産業とともにSFは未来をシミュレーションすると思う。/人体と社会という二つの超巨大複雑オブジェクト。宇宙、深海(深地下も)という二つのフロンティアを開拓する未来テクノロジーの果て。未来の変貌を垣間見る思いのする本作品群のようなハードSF(小説)の市場は(物理法則を無視した荒唐無稽な魔法世界、転生異世界)ファンタジーに比較して少ないのが残念/映画化されんと話題にならん╱ノンフィクションライターは文系が多い。立花隆程度で理系知識に詳しいと言ってもねえ?
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北野勇作の「ウニバーサルスタジオ」を読みかけてたら、「梅田地下オデッセイ」の名前が出てきて、そのとたん、何年も前にNHKのラジオドラマを聞いたことが、ぱっと記憶によみがえりました。不気味な嬰児を抱いて、封鎖された梅田の地下街を歩く男の話。あれ、最後は結局どうなったんだろう・・・
気になり出して調べてみると、すでに絶版になっており、図書館で取り寄せてもらったんですが・・・こんな本格ハードSFの短編集とは知らんかった。いきなり解説に「ハードSFのわからんやつは読むな!」みたいなことが書かれててビビりましたが、むずかしい理論とかよくわかんなくても、けっこう面白く読めましたよ。とか言うとハードSFの人は怒るかもしれないけど。
古典ホラー「猿の手」から題をとった「宇宙猿の手」は、宇宙に浮かぶ切り落とされた手のイメージも鮮烈だし、望む結果があたえられる世界を選ぶために、情報量の少ない世界に移行していく、という逆説が面白い。人類が未来世界へのワープをくりかえすことで、未来を貧しくしていってしまう、という「熱の檻」も、印象に残りました。
そして、数十年ぶりに結末を知った「梅田地下オデッセイ」。そういう話だったのか・・・とても満足です。 -
あらゆるシャッター、スプリンクラー、照明などがコンピュータにより自動制御された梅田地下街。そこに、突如として異変が発生した。次々と降りるシャッターは複雑な迷路を形成し、外部への脱出は不可能となった。野獣と化した者たちの争い……限られた小世界での苛烈な生存競争、そして生まれた胎児の如き外見の奇怪な子供ーー近未来という設定でハードSFを書きあげるという、野心的な試みの表題作ほか、堀晃ならではのイマジネーション豊かなハードSF群を結集する意欲作品集! 巻末に石原藤夫氏による80枚にもおよぶ堀晃論収録。
(1981年)
— 目次 —
アンドロメダ占星術
塩の指
無重力の環
宇宙猿の手
猫の空洞
地球環
熱の檻
連立方程式
梅田地下オデッセイ