宇宙探査機迷惑一番 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-28)

著者 :
  • 早川書房
3.52
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本棚登録 : 254
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306991

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのは光文社版。多元平行宇宙横断探査機の、本体そのものではなく言語発生機であるところの、名づけて「迷惑一番」と呼ばれるもの。機械でありながら非常に脳天気な彼が多元平行宇宙を飛び回り言語記述していく物語と、彼の物語に巻き込まれた(と言える)脳天気な宇宙戦闘機パイロットたちの物語が、ごくごく軽いテンポで描かれる。よく考えたらシリアスな状況でありシリアスな設定なのに、“脳天気”をキーワードに軽く描かれているのが、しょーもなく楽しい。何より「迷惑一番」が可愛らしくて読んでいて気が抜ける(笑)。
    言語発生機が編み出す言葉が現実を作る、というのはいかにも神林的な目線だが、そこに加えて、各多元平行宇宙に存在するそれぞれの言語発生機が作る物語はそれぞれに違う(から、ある宇宙で描かれた現実は、他の宇宙ではただの「お話」になる)という結論が面白い。冒頭ページの「生きている限りこの世はある この世の主人公はいつでも私だ」という言葉が、まさにこの作品のテーマなのだろう。ストーリーの軽やかさを楽しむもよし、テーマについて考えを巡らすもよし、神林エンタメらしい一冊。

  •  生きている限りこの世はある
     この世の主役はいつでも私だ

    マニア向けの愛すべき一冊
    面白さは保障しない

  • 宇宙探査機 迷惑一番 (ハヤカワ文庫JA)

  • 平行宇宙間を移動する探査機と、彼に遭遇した地球軍の一小隊の巻き起こす騒動を描く。ストーリーとしてはよくよく考えると浮かばれない話だが、登場人物の「脳天気」さのおかげで話が辛気臭くならず、最後まで調子よく読み進められてしまう。小隊員らは彼らの浮かばれない状況を認識しつつ、それでもあくまで楽天的。彼らの人生観について意識させられた。

  • 地球連邦軍の小隊が月付近の中空で見つけたものは、見るものによって形を変える謎の物体だった。月に墜落したそれ、言語化思考装置「迷惑一番」の一部を回収して月面へ帰還するが、そこは小隊員たちが知っている世界とはなにかが少しずつ、しかし決定的に「違う」世界だった…。86年、つまり『完璧な涙』や『今宵、銀河を盃にして』と同時期発表された作品の復刊。言葉を書くこと、どこまでも楽観的でご都合主義な、だけど実は悲惨な物語、というテーマは神林小説の十八番だけど、本作では特にライトに描かれていてスラっと読めた。

  • 最初に断っておきます。
    これから書く感想は、個人的なノートに書いたものを転載しているだけなので非常に分裂的な文章になっているが、オレの頭は正常である(はず)のでご安心ください。
     
     神林作品の登場人物たちは皆、何かしらの独特なユーモア感覚を持っているのだが、この作品に登場するキャラクターは全員共通して「能天気」だ。この脳天気という性格、つまりは個人の希望的観測をポジティブな方向に考えられる人間と言うのは、神林作品では次第に強調されていくことになる。
    例えば、初期作品では「踊っているのでなければ踊らされているのだろうさ。」と言う文に代表されるように、自身が何か別の存在に操られていたり、自意識は幻想であり、それらを悲観的な形で表現する話が多かった。
    しかし、徐々にそういう状況下においても「それがどうした。」と、開き直り、自分が納得できるように力強く生きていくキャラクターが目立つようになってくる。
    つまり、能天気なキャラクターが異常な世界に対する対抗策になるのだ。
    今作もまさにその通りの話である。物語序盤で主人公たちは死ぬ。そして平行世界へ飛ばされ、迷惑一番と名乗るタヌキのぬいぐるみと行動を共にする。状況は実にシリアスである。生きるか死ぬか。自身の存在が危機的状況に置かれているにもかかわらず、主人公たちはギャグを連発し、面白おかしく、臆することなく、突き進んで行く。実に能天気だ。
     特筆すべきなのは、主人公たちはなにも冗談を言って眼前の事実から目を背け、思考停止しているわけではないのだ。自分たちの置かれた現実を受け止め、考察した上で、能天気さを失わずに行動する。クーデターを起こし、銃撃戦をしている最中でさえもユーモアたっぷりな思考をし続ける。
     結局、飛ばされた並行宇宙から戻ることは出来ないのだが、それでも自分の居場所を作り出し、生きていこうと決意できる強さは見習いたいと思う。
     平行宇宙を移動できる迷惑一番から元の宇宙次元へと送られてくる情報は何の信頼性も持たず、SFを自動で書く機械を造っただけだと言うアイデアは面白いなと思った。

  • 地球連邦軍の月面基地に所属する“雷獣”迎撃小隊、通称「脳天気小隊」が遭遇したのは、「?」や「!」や「恥ずかしいもの」に見える不審な物体だった。

    あっけらかんとしていますが、SF肝を悉く捉えていてすばらしいです。

  • 氏の初期作品。

    後の敵は海賊シリーズの能天気さが伺える。

    ユーモアたっぷり、皮肉と不条理をスパイスにした氏の原点、楽しんで欲しい。

  • カワイイのが出てくる。光文社版を持っている。

  • 帯のコピーには泣かされました(泣) コメディーなので笑えますが、最後はちょっぴり感動。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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