- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150306991
感想・レビュー・書評
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読んだのは光文社版。多元平行宇宙横断探査機の、本体そのものではなく言語発生機であるところの、名づけて「迷惑一番」と呼ばれるもの。機械でありながら非常に脳天気な彼が多元平行宇宙を飛び回り言語記述していく物語と、彼の物語に巻き込まれた(と言える)脳天気な宇宙戦闘機パイロットたちの物語が、ごくごく軽いテンポで描かれる。よく考えたらシリアスな状況でありシリアスな設定なのに、“脳天気”をキーワードに軽く描かれているのが、しょーもなく楽しい。何より「迷惑一番」が可愛らしくて読んでいて気が抜ける(笑)。
言語発生機が編み出す言葉が現実を作る、というのはいかにも神林的な目線だが、そこに加えて、各多元平行宇宙に存在するそれぞれの言語発生機が作る物語はそれぞれに違う(から、ある宇宙で描かれた現実は、他の宇宙ではただの「お話」になる)という結論が面白い。冒頭ページの「生きている限りこの世はある この世の主人公はいつでも私だ」という言葉が、まさにこの作品のテーマなのだろう。ストーリーの軽やかさを楽しむもよし、テーマについて考えを巡らすもよし、神林エンタメらしい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生きている限りこの世はある
この世の主役はいつでも私だ
マニア向けの愛すべき一冊
面白さは保障しない -
宇宙探査機 迷惑一番 (ハヤカワ文庫JA)
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平行宇宙間を移動する探査機と、彼に遭遇した地球軍の一小隊の巻き起こす騒動を描く。ストーリーとしてはよくよく考えると浮かばれない話だが、登場人物の「脳天気」さのおかげで話が辛気臭くならず、最後まで調子よく読み進められてしまう。小隊員らは彼らの浮かばれない状況を認識しつつ、それでもあくまで楽天的。彼らの人生観について意識させられた。
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地球連邦軍の小隊が月付近の中空で見つけたものは、見るものによって形を変える謎の物体だった。月に墜落したそれ、言語化思考装置「迷惑一番」の一部を回収して月面へ帰還するが、そこは小隊員たちが知っている世界とはなにかが少しずつ、しかし決定的に「違う」世界だった…。86年、つまり『完璧な涙』や『今宵、銀河を盃にして』と同時期発表された作品の復刊。言葉を書くこと、どこまでも楽観的でご都合主義な、だけど実は悲惨な物語、というテーマは神林小説の十八番だけど、本作では特にライトに描かれていてスラっと読めた。
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地球連邦軍の月面基地に所属する“雷獣”迎撃小隊、通称「脳天気小隊」が遭遇したのは、「?」や「!」や「恥ずかしいもの」に見える不審な物体だった。
あっけらかんとしていますが、SF肝を悉く捉えていてすばらしいです。 -
氏の初期作品。
後の敵は海賊シリーズの能天気さが伺える。
ユーモアたっぷり、皮肉と不条理をスパイスにした氏の原点、楽しんで欲しい。
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カワイイのが出てくる。光文社版を持っている。
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帯のコピーには泣かされました(泣) コメディーなので笑えますが、最後はちょっぴり感動。