時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

  • 早川書房
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  • / ISBN・EAN: 9784150412289

作品紹介・あらすじ

クレアはタイムトラベルで会った未来の男と、奇妙な恋に落ちていった。やがて、謎の武器で胸に大きな穴を開けられた死体が発見される。犯人の調査を開始したウエルズは、現場の壁に、書き上げたばかりで誰も知らないはずの小説『透明人間』の冒頭が記されていることを知り、愕然とする。そして、さらなる殺人事件が起き、意外な犯人とウエルズ自身の想像を絶する秘密が明らかに!愛と冒険と仕掛けに満ちた驚愕の小説。

感想・レビュー・書評

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  • タイムトラベルの話。偽のタイムトラベル体験を設定したり、本当のトラベラーが出現したり、ごちゃごちゃしている感じはあるが、コニー・ウィリスとはちがったおもしろさがあり楽しめた。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    クレアはタイムトラベルで会った未来の男と、奇妙な恋に落ちていった。やがて、謎の武器で胸に大きな穴を開けられた死体が発見される。犯人の調査を開始したウエルズは、現場の壁に、書き上げたばかりで誰も知らないはずの小説『透明人間』の冒頭が記されていることを知り、愕然とする。そして、さらなる殺人事件が起き、意外な犯人とウエルズ自身の想像を絶する秘密が明らかに!愛と冒険と仕掛けに満ちた驚愕の小説。

  • 上巻より下巻の方がおもしろい。ストーリーとして好きなのは、第2部だな。

  • ロマンティックなSFなのかなーと思って読んだらば、途中でびっくり、あきれる。なんじゃこりゃ、と思った。これってSF~?

    19世紀のロンドンの雰囲気がよくわかるのが楽しかったし、エレファントマンとの話とかも興味深かったし、細かいエピソードにわくわくする要素がたくさんあっておもしろいのだけど、なんだろう~、まとまりがない感じで気が散るというか、いまひとつ入り込めないというか。なんか惜しい感じ。
    第三部あたりからますますほんとにSFなんだかどうなんだかわからなくなってきて、(読む力もなくなってきて)どうでもよくなってしまった(笑)。
    でも、ラストのウエルズの思いみたいなところはけっこう感動的でしみじみした。

  • タイムトラベル物。
    科学的というよりは、まやかしを含めて途方もないが、19世紀末当時流行した小説の傾向を加えて、捻った構成。エピソードはけっこうロマンチック。

    上流階級の娘クレアが未来に憧れ、時間旅行社が宣伝している未来の将軍に恋してしまう。
    2000年に自動人形に人類が滅ぼされそうになり、人類を率いて闘い、最後の決戦に臨んだという。
    デレク・シャクルトン将軍は長身で筋骨たくましく、美しい緑の目が暗く鋭く品がある表情で、まさしく人類を救済するように見える頼もしい男。ところが…?

    時間旅行社を主催するギリアム・マリーは、かってウエルズに憧れ、自分が書いたへたくそな小説を読んで貰いに来た男だった。
    ウエルズに冷たくあしらわれて憤慨し、ある思いつきを実行に移す…
    誰も興味を持たないだろうと酷評された内容を、もし人々が信じたら?
    因縁ある展開に悩むウエルズ。

    ウエルズに加えて、ヘンリー・ジェイムズにブラム・ストーカーまで、タイムトラベルに関わってくるのが面白い。
    上流階級で気むずかしい紳士ジェイムズ、感情的なアイルランド人のストーカー。
    まだ大ヒット作を発表する前の時点で、未来からの使者が、本当に連絡を取ってくるのだ…はたして?!
    時間旅行は何故出来るようになったのか?
    めくるめくタイムパラドックス。
    かいま見える未来と、未来からの手紙。
    意外な深みも見せて、面白かったですよ!

    面白さを伝えるにはどうしてもちょっとネタばれになるんだけど~なり過ぎないように~微妙に注意を払って書いています。
    作者は1968年生まれ。
    スペインの新人作家登竜門であるセビリア学芸協会文学賞をこの作品で受賞、ベストセラーに。

  • このひねり技! 第三部でパズルのピースが次々にはまっていく驚き。いや、まいりました。小ネタや作中話にもくすぐられます。

  • うーむ。最後が失速。突然SFになって、わけわからん話の閉じ方だった。もうちょっと違う結末を期待していたので、評価が下がった。

  • ☆4.4

    1896年ロンドンにて、アンドリューは切り裂きジャックに殺された恋人を忘れられず命を絶とうとしていた。
    その時、2000年へのタイムトラベルを提供する旅行会社の存在を知る。
    過去へ行けば恋人を救えるとかすかな希望を持つが、旅行社を訪ね時間を遡りたいと掛け合っても得られた答えは否。
    このツアーのタイムトラベルの方法では指定の過去へは行けないらしいのだ。
    そこで、世に話題となった小説「タイム・マシン」を発表した作家H・G・ウエルズならその方法を持っているかもしれないと、協力を求めることにしたのだが…

    というのがまずは第一部のあらすじ。
    この第一部だけでも、ロンドンの夜の肌にまとわりつくような不穏な空気や、アンドリューのある意味人間味が溢れすぎる若き恋、タイムトラベルにまつわるあれこれと、読みどころがたくさん。

    第二部ではテイストの違う恋愛のかたちが読めるのもとても良い。
    上流階級の令嬢クレアがタイムトラベルツアー先で出会ってしまった未来の男との刹那の恋は、とても即物的で不純なのに実は観念的で純粋で。
    思わぬほどに心震わせてくれる。

    第三部になると殺人事件が起こる急展開。
    話をつなぐ存在だったウエルズが、自らの過去と持っていた秘密に向き合うこととなる。

    全編通して面白いなと感じたのは、ひとりひとりに"見えているもの"が違うこと。
    登場人物同士はもちろん、読者である自分も、狂言回しな創作者も。
    そのすれ違いが生み出すものがドラマになっている。
    思惑が絡んで転がるその先がどうなるか、気持ちよく振り回されて読んだ。

  • スペインの作家「フェリクス J.パルマ」の長篇作品『時の地図(原題:El mapa del tiempo)』を読みました。

    タイムトラベルを扱った作品は、7月に読んだ『ドゥームズデイ・ブック』以来ですね。

    -----story-------------
    〈上〉
    1896年ロンドン。
    恋人を「切り裂きジャック」に惨殺され、大富豪の息子「アンドリュー」は失意の底にあった。
    彼は西暦2000年へのタイムトラベル・ツアーを催す時間旅行社を訪ねた。
    時間をさかのぼり、「切り裂きジャック」から恋人を救おうというのだ。だが旅行社は過去には行けず、彼は小説『タイム・マシン』を発表した「H・G・ウエルズ」の力を借りることに。
    一方、上流階級の娘「クレア」は、2000年へのタイムトラベルに参加するが…。

    〈下〉
    「クレア」はタイムトラベルで会った未来の男と、奇妙な恋に落ちていった。
    やがて、謎の武器で胸に大きな穴を開けられた死体が発見される。
    犯人の調査を開始した「ウエルズ」は、現場の壁に、書き上げたばかりで誰も知らないはずの小説『透明人間』の冒頭が記されていることを知り、愕然とする。
    そして、さらなる殺人事件が起き、意外な犯人と「ウエルズ」自身の想像を絶する秘密が明らかに!
    愛と冒険と仕掛けに満ちた驚愕の小説。
    -----------------------

    タイムトラベルがテーマになっているし、SF作家「H・G・ウエルズ」が登場するので、SFの要素は織り込まれているものの… 厳密に分類するとSF作品じゃないかも、、、

    詳しく述べるとネタバレになってしまうので、ここまでに留めますが、ジャンル分けが難しい作品でしたね… でも、SFファン、タイムトラベルモノ好きな方は愉しめる内容になっていたと思います。


    舞台は19世紀末のロンドン、大富豪の子息「アンドリュー・ハリントン」が肖像画の娼婦「メアリー・ジャネット・ケリー」に一目惚れするのが、すべての始まり… しかし、彼女は連続殺人犯「切り裂きジャック」に惨殺されてしまう、、、

    人生に絶望し、自ら命を絶とうとする「アンドリュー」の精神状態を心配した従兄弟の「チャールズ・ウィンズロー」は、マリー時間旅行社の広告に目を留め、過去へ遡り「切り裂きジャック」の犯行から「メアリー」を護る計画を思いつく… やがてSF作品『タイムマシン』の著者「H・G・ウエルズ」が登場し、タイムトラベルをめぐる事件に巻き込まれ、「ウエルズ」は「チャールズ」とともに、「アンドリュー」の命を救うための計画を実行する。

    ここまでが第一部、その後の第二部では、マリー時間旅行社の企画する西暦2000年へのタイムトラベル・ツアーに参加した上流階級の娘「クレア・ハガティ」が、そこで出会った人類軍の総司令官「デレク・シャクルトン」と運命的な恋に落ちるものの、二人の関係は窮地に陥り、それを時間旅行の舞台裏を絡めつつ「ウエルズ」が解決する展開… 第一部と第二部は「ウエルズ」が「想像力で人の命を救う」物語でした、、、

    そして第三部では、「ウエルズ」本人の運命に関わるタイムトラベルやパラレルワールドに関する事件が勃発し… という展開でした、三部構成でSF小説、冒険小説的、恋愛小説、そしてサスペンスの各要素が愉しめる作品でしたね。

    ちょっと冗長な感じがあり、クセがあるので万人向けではないですが、歴史や科学… そしてSF好きの方にはイイと思います。



    以下は主な登場人物です。

    「H・G・ウエルズ」
     作家

    「ジェーン(エイミー・キャサリン)」
     ウエルズの妻

    「アンドリュー・ハリントン」
     大富豪の息子

    「ウィリアム・ハリントン」
     アンドリューの息子

    「チャールズ・ウィンズロー」
     アンドリューのいとこ

    「シドニー・ウィンズロー」
     チャールズの父親

    「メアリー・ジャネット・ケリー」
     娼婦

    「ギリアム・マリー」
     マリー時間旅行社の社長

    「オリヴァー・トレマンカイ」
     ナイル川の源流を探検した男

    「ジョゼフ・メリック」
     ロンドン病院で暮らす男<エレファント・マン>

    「クレア・ハガティ」
     上流階級の娘

    「ルーシー・ネルソン」
     クレアの友人

    「デレク・シャクルトン」
     西暦2000年の人類軍の総司令官

    「ソロモン」
     自動人形の帝王

    「コリン・ギャレット」
     ロンドン警視庁警部補

    「トーマス・アーノルド」
     ロンドン警視庁犯罪捜査本部長

    「ネイサン・ファーガソン」
     自動ピアノの製造業者

    「イーゴリ・マズルスキー」
     西暦2000年ツアーのガイド

    「トム・ブラント」
     マリー時間旅行社の従業員

    「マーティン・タッカー」
     ブラントの同僚

    「マイク・スパレル」
     ブラントの同僚

    「ジェフ・ウェイン」
     ブラントの同僚

    「フバッドリー・ホリウェイ」
     ブラントの同僚

    「ヘンリー・ジェイムズ」
     作家

    「ブラム・ストーカー」
     作家

    「メルヴィン・フロスト」
     一夜にして有名作家になった男

    「マーカム・リース」
     <真実の図書館>の司書

  • 過去も未来も自由自在に超えられるタイムマシンがここに。

    2000年の世界に残ることはできなかったクレアだが、向こうの世界で出会ったシャクルトン将軍が、置き忘れてきた日傘を返すためにタイムトラベルしてきたことから、クレアの運命の恋が進みだす——。

    限られたタイムトラベル、たった一度の愛、交わす手紙、未来と過去でつながる言葉。シャクルトン将軍を演じたトムの視点によって読者にはマリー時間旅行社のカラクリが明らかにされるが、クレアはそんなことは知らない。そしてクレアを利用するつもりだけだったトムが、真剣にクレアに演技を続けようとして、頼ったのがまたウェルズである。トムの代わりに手紙を代筆するウェルズと、クレアの愛情が向いているのはクレアではないかと疑い出すトム、そして愛に正直なクレアの奇妙な三角関係は、予め示されていた終わりを迎える。トムが恐れていた通り、ギリアムの手が彼に伸びてきたが、仲間たちがこれを助け、トムとクレアの物語は誰も知らない未来へ続いていく。

    コリン・ギャレットが担当する死体は、まさにタイムトラベル・ツアーで見てきた未来の武器で殺されていた。捜査への協力を申し出たウェルズは、自作の小説を持って訪ねてきたギリアムを冷たくあしらったことから始まった時間旅行社のことを思う。タイムマシンに座ったウェルズは、2000年の世界でギリアムと対峙し、3つの殺人事件の共通点と謎の手紙に導かれ、タイムトラベラーに会う。〈真実の図書館〉の司書マーカス・リースはタイムトラベラーがウェルズたち作家を狙っていると言うのだが——。

    第一部、第二部とタイムトラベルを信じる者の幸せな結末を描いてきた。第三部でとうとう本当にタイムトラベルは可能なのではないかと思ってしまう。そのアイデアを世に広めたのに、タイムトラベルをずっと否定してきたウェルズの前に差し出された、時間を超えた大きな陰謀と、未来にいるH.G.ウェルズからの手紙によって。しかし、やはり物語は物語なのだ。まったく新しい物語を想像したつもりで、もしかしたらどこかのパラレルワールドについて語っているのかもしれない。タイムトラベルができる世界もあるのかもしれない。タイムトラベラーは近くにいるかもしれない。そういうことを考えるのは楽しい。パラレルワールドの自分がまた違う形の幸せを手にしていることに思いを馳せられるから、想像力は人の命を救うのだ。

    大変幸せなSF。すべてがつながっていくところが気持ち良い。そして何より物語を紡ぐ嬉しさと楽しさと力に満ちている。

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