〈脳と文明〉の暗号: 言語と音楽、驚異の起源 (ハヤカワ文庫NF)

制作 : 伊藤 亜紗 
  • 早川書房
3.17
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本棚登録 : 394
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505660

作品紹介・あらすじ

話し言葉や音楽は、自然界の痕跡に満ちている!? 大ヒット『ヒトの目、驚異の進化』の理論神経科学者が、聴覚系と進化の謎に挑む

感想・レビュー・書評

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  • 言葉を理解するということは脳の進化によるもの。基本的には生活音を聞き取る能力が発達したもの。それは音楽を聴くことも同じで、元を正せば生活音のリズムを聴いていること。言葉を聞いて理解できることを何も不思議に思わずに生活してきていたので、脳の神秘さを理解するとともに、まだ脳は進化の過程なんだろうなと思う。

  • 言語は自然界の物理現象の音を模倣しており,音楽は人間の動作音を模倣しているというユニークな説を提唱している.実際の言語と自然界のデータをもとに議論しているが,提唱している説が奇抜なために,使用されているデータも偏りがあるようなときもあるように感じた.しかし,言語の発音には一定の法則が感じられるようになった.

  • 仮説としての言語(話し言葉)と音楽の起源。
    とくに音楽の起源については説得力がある。

    「聴覚がどれほど環境音に敏感で正確か」といったあたりから話が始まるのだけど、これのあたりが際立っておもしろい

    ただし音楽に対する感覚は「生得的か、学習するものなのか」というあたりはかなりあやふや。
    マイナースケールから感じる物悲しさに「まったく生得的なところはなく社会的に構成されている」とはあまり思えない。
    ただスケールは明らかに各文化によって構成されているのは明らかなので、ちょっとこのあたりも突っ込んで読みたかった。


    『ヒトの目、驚異の進化』

  • 2021-01-15
    おそらく主張していること-言語は物体の発する音の、音楽は人間の発する音の、特徴を真似るように進化した-は間違っていない。
    しかし、どうも論の進め方に違和感がある。
    自説を補強する証拠だけを選んで書いているように見えるんだよなあ。いや、当たり前なんだけど。
    なんだか、トンデモの論の進め方の匂いがするのです。

  • 『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ』の作者による「音」と「言語」の話。
    『ヒトの目…』で思ったんだけど、この作者は「ヒトが今使っている機能(文字を読むとか音楽を聞くとか)は、元々ある機能(敵を見つけるとか同族の状態を知るとか)を転用したもの」というスタンスでずっといる。
    前作が「視覚」で、今作が「聴覚」かな。そう見るとスッキリした2冊目だと思う。

    主題は2つで
    ①物理現象による音(”ぶつかる””すべる””鳴る”)を模倣することで、私達は言語を操っている
    ②音楽は私達の動作音(どこへ行くか、ドップラー効果など)を模倣/抽出/強調している
    ってとこかな。
    アリストテレスは「芸術は自然を模倣する」なんて言ったけど、本当にそれは正しかったかもしれないわけだ。(ワイルドに言わせれば「自然こそが芸術を模倣する」なんだけど)

    個人的に面白かったのは①。『言語の本質』でもあったけど、いわゆる「ブーバ/キキ効果」と呼ばれるものが関わってくるかもしれない。なぜ尖ったほうが「キキ」と呼ばれるのかまでは分かっていないけど、つまりこういった形のものがどのような音を鳴らすのか、というイメージを備えている(あるいは学びやすい)種が生き残りやすかったということも考えられる。あとはオノマトペもそこに絡んでくるかな。
    思いがけず言語学的な部分でリンクするところがあり面白かった。

    でも②はなー…。音楽に明るくなさすぎて、あんまりイメージしずらかったような。
    しょうがないっちゃしょうがないけど、こっちは動画のほうが楽しめたかもなぁ…。

    あとチラッとスタニスラス・ドゥアンヌが出て来て笑ってしまった。アントニオ・ダマシオとかも好きそうだね…(思想的に)。

  • ・文字は本能ではなく、脳のシステムに合うように文化によって淘汰され形成されてきた。それと同様に言語や音楽も本能ではなく脳のメカニズムに合うように作られたのではないか。

    ・言語や音楽は人間の脳に合わせて作られた。それは、猿人類とヒトとがあまり変わらないことから言える。

    ・言語や音楽は自然を真似て作られた。人間にはそれを認識できないがそれは感覚器官の下位レベルに現れるものだから。自然を真似ているため世界の至る所で共通点が見られる。つまり、自然には文法のような構造が存在する。

    ・聴覚は何が起こったのかを教えてくれる。

    ・ぶつかる、すべる音は連続変化しにくいが鳴る音は連続変化しやすい。
    ぶつかる音は文頭にきやすく、滑る音はあいだ、共鳴も間にある。共鳴からぶつかるという音は自然界にはなく、逆再生で聞くことができるので違和感を覚える。

    ・言語は自然を真似ている。例えば音高。何かが近づくとき音は高くなる。それと同様に疑問文のイントネーションも語尾は上がる。

  • 2.9

  • 言語と音楽の起源についての仮説と検証。おそらく言語も音楽も持っていない現生人類と現在の人類は機構的にはなんら変わりはないのに、なぜ現在のヒトは言語や音楽を理解できるのか。
    自然を利用して生まれ、自然と別の実体となって進化を続けている”文化”というものに実感を持った。面白い。

  • 音楽は動作音(人や動物が近づいたり遠のいたりするときに建てる足音)をもとにしているという仮説をもとに人間が話す言葉や音楽のメロディ・テンポやハーモニーとの関係を説きあかし、考察していく。

    著者は長い間にわたって価値を認められ続けたクラシック曲の楽譜をもとに上記の仮説を検証していったけれど、自然の物理法則を無視したダブなどの録音芸術を検証の領域にいれたらどうなるだろうか?

    ダブやアシッドハウスの酩酊感・トリップ感は動物や人間、草や花がたてる物理法則を無視した音を響かせる。ディレイの残響音が突然深くなったり消えたりするのは、あたかも瞬間移動したかのような聴力体験をもたらず。
    トリップ感覚を覚える。これも音楽の元々は動作音にあるということの裏返しの証拠なのかもしれない。

  • 「音楽は"歩く"」 私には新しい視点で、面白く読めた。日常生活で耳にする会話、音楽などに当てはめて検証するのも面白そうだ。

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著者プロフィール

カリフォルニア工科大学の特別研究員、レンセラー工科大学の准教授を経て、現在、2AI Labsの主任。邦訳書に『ひとの目、驚異の進化――4つの凄い視覚能力があるわけ』(インターシフト)がある。

「2013年 『<脳と文明>の暗号 言語・音楽・サルからヒトへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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