直線―競馬シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150707286

作品紹介・あらすじ

騎手デリックは、急死した兄から準宝石の輸入会社をはじめ全資産を受け継いだ。が、兄が買いつけた大量のダイヤが消えていた。慣れない宝石業界で苦闘しながらダイヤの行方を追う中で、彼は疎遠だった兄の意外な面を発見していく。優れた鑑定人だったこと、騎手である弟を自慢していたこと、そして愛人…だが、今度は彼自身の命が狙われた。熱くこみあげる兄への惜別の思いを胸に、悪辣な敵に挑む青年の孤独な闘い。

感想・レビュー・書評

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  • 競馬シリーズ28作目。

    障害競馬の騎手であるデリックは、
    年が離れていて一緒に生活したことのない兄と偶然街で再開し、
    その後はほどほどにつきあっていたが、
    突然の事故でその兄を失う。
    そして、もっと生前に親しくすればよかったと後悔するところは良かったが、
    経営していた宝石会社や持ち馬とともに、恋人も相続するとは。

    宝石会社の仕事をだんだんと覚え、
    従業員の信頼を得て行き、
    それぞれに新しい仕事と昇進をあたえて軌道に乗せるところが印象的。
    取り扱っていなかったはずだが、
    購入したはずのダイヤモンドを探してはいたが、
    多分彼の家に侵入したり襲ったりしたのは馬関係なのだろうなとは思っていた。

    話の最初から最後まで足を怪我をしていたデリックだったが、
    運転手役をしてくれていた失業中の溶接工ブラッドが良かった。
    無口で運転手としての腕は確かで、デリックの危機を救ってくれる。
    しかもデリックの「頭のいい」お母さんのおかげでダイヤモンドの一部は無事だった。
    素晴らしい。

  • 競馬を知らなくても、普通にミステリものとして楽しめると思います。
    ただ、体を痛めるシーンが多くて自分も痛かったです。

  • 某所でオススメされてて気になって手にとってみた。
    この著者もシリーズも知らなかったのだが、元騎手の作家らしく、たくさん出ている競馬シリーズはシリーズの括りからして明らかなように何らかの形で競馬が絡んでくるそうだ。
    といっても別に競馬が主題になっている訳ではなく、この『直線』では怪我の治療中の騎手である主人公が、事故死した兄に代わって兄の経営していた宝石商の経営をしたり、何故かトラブルに巻き込まれて命を狙われたりする。つまりあまり競馬はしていない。

    まぁそれはさておき何と言おうか、素直に面白かった。
    これは良いシリーズを知ったぞとその中でのオススメをWebで適当に探してToDoリストに突っ込んだ。

  • スゴ本

  • デリック・フランクリン
    障害騎手&サクソニイ・フランクリン社の経営(宝石商)

  •  ずいぶん久し振りに読んだけれど、思った以上に充実した傑作で実は驚いてしまった。初読の時にあまり印象に残らなかったのはなぜだろう。

     急死した兄の事業の整理(それだけではないのだけれど)を心ならずもすることになった騎手の物語である。騎手自身は仕事上の事故で足を骨折していて、それが物語としても大きな陰影を与える。行動上のハンディであったり肉体的な弱点になると同時に、精神的な面でも印象的である。

     多くの謎が主人公の騎手の前に立ちふさがる。知っているはずのものが急に死んだことで結果的に謎になってしまったこともあれば(今僕が急死したら例えば僕のPCの起動はできなくなる)、犯罪に関係した謎もある。そういう点では、多くの事件が平行して進行するタイプのミステリといえなくもない。

     人間というのは多かれ少なかれ謎をはらんでいる。騎手は次第に自分の兄の人間像を詳しく知っていくのだけど、その人間像がなかなか魅力的で、「もっと早くからたくさん知り合っておけばよかったのに、もう取り返しがつかない」と騎手が嘆くのが切ない。前半部分では特に、生と死についてさまざまなことが心に浮かんできて、作品としての深みを感じさせる。

     ミステリとしてはやや小品で、初期の作品の変奏曲のような印象を持った。しかし、この作品の持ち味は、犯罪がありその犯人を捜すということではなく、もっともっと普通小説に近いものだと思う。ただ、サスペンスはさすがで、手に汗を握るようにして読み進められる。主人公に与えられる肉体的な苦痛も、シリーズ中屈指かもしれない。彼が感じる恐怖も。

     ただ残念なのはタイトル。直訳の日本語タイトルだけど、この単語の意味を「直線」といってしまうのは間違いといってもいいくらいだと思う。この単語は主人公の形容として使われていて、「まとも」とかいうような意味合いに、かなり深いニュアンスを込めているのだと思う。もう少しうまい二字熟語がほしかったなぁと残念に思うのである。

  • 競馬シリーズでまさかの未読。図書館で何気なく手に取って、あれ、この話知らないぞ、と。なんて幸運!もう新作が読めないのに!
    宝石商だった兄が亡くなり、年の離れた騎手の弟が継ぐ。ストーリーはシリーズ中の平均だが、未読が嬉しくて許容。男も女も相変わらずクール。美醜については内面から表現するのがフランシス流。気持ちよく読める。
    「微笑しながらあくびをしたが、双方いっしょにやると顎がはずれかねない。」
    こんなフレーズに菊池氏の訳ははまり過ぎ。

  • 騎手デリックは足首骨折で休業中、事故で急死した兄から宝石の輸入会社をはじめとする全てを受け継ぐことになります。
    年の離れた兄グレヴィルとは一緒に暮らしたことがなく、大人になってから新たに知り合い始めたばかりのようなもの。
    畑違いの仕事に戸惑いながらも、周囲の不信の目を跳ね返し、兄が大量に買い付けたダイヤが行方不明になっている謎を追求していくと、なぜか命を狙われる羽目に…!?

    淡々としていてやや孤独がちだが内面は真っ直ぐで情熱的なところが兄弟で共通しているようで、兄の人柄を再発見していく様子がさわやかな雰囲気を醸しだしています。

    兄の愛人との出会いは一捻りしてあり、会社に勤めている女性達も個性的。
    兄が小道具好きで、最新の機器を取りそろえ、机に隠し戸棚、パソコンには謎々のファイルと遊び心旺盛なのが面白く、宝探しの楽しさもありますよ。
    解説が池澤夏樹氏です。アマゾンでユーズド価格1円で出てました…すげ〜(@@;

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