死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150711511

感想・レビュー・書評

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  • あ~、また大変に面白いミステリを一冊、
    読み終わってしまった!

    読み返す楽しみはあるけれど、
    やはり初めて読んだ時の衝撃と言うのは、
    一度しか味わえない。

    いつもの私のミステリガイド「東西ミステリーベスト100」で
    17位!

    この間買ってきた「海外ミステリ・ベスト100」(早川書房)では6位!
    余談だけれど、この「海外ミステリ・ベスト100」の方は、
    恐ろしいほどネタバレしていることが判明、
    これからは読み終わった本の思い出整理の為に読む也。

    さて「死の接吻」、林家正蔵(元こぶ平)が
    「海外…」の本の中で絶賛していた。
    彼はミステリファンを自認しているだけあって、
    ネタバレは一切しておらず、偉い。
    (本文の方はネタバレの嵐)

    ストーリーは、恋人同士の学生たち、
    社長令嬢のドロシィは妊娠し、結婚を迫るが、
    このままではドロシィは父親に絶縁され、
    夢見たお金を得られないと考えた彼は…

    この、第一章で「彼」の名前が明かされず…と言うのがすごいね。

    あまり書くとネタバレにそれこそなってしまうので注意しながら…。

    ともかく、わっ!となったり、ぎゃっ!となったり、忙しや~。

    ハァ~、本当にあっという間に読んでしまった!

    作者のアイラ・レヴィンはこの本を書いたときなんと23歳、
    この作品はアメリカ最優秀処女長篇賞に輝いたとのこと。

    しばらく劇作家として活動していたらしいが、
    久しぶりに出した小説二作目が「ローズマリーの赤ちゃん」!
    素晴らしい才能をお持ちね…。

    個人的には、語感からなんとなく女の人だと思っていたから、
    後ろの表紙の見返しに髭だらけのおじさんの写真が写っていて
    吃驚した。(わたし個人の問題です)

    ともかく、お相手様が歓迎しないことを無理に遂行しようとしては
    駄目だよ。貴女と、貴方と、貴女…(と登場人物の人たちへ)
    私も気を付けます。

  •  恋人から妊娠を告げられ結婚を迫られた時、”彼”は自身の野望のため一つの計画を練り上げた。完璧な犯罪計画とそれに翻弄される姉妹を描いたサスペンス。

     第一章は倒叙サスペンスとして描かれますが、その書き方がちょっと変わっています。犯人の生い立ちやその計画の全貌も語られるのですが、犯人の名称が常に”彼は”と書かれているため、読者には犯人の名前が分からないのです。
    そしてそれがこの小説のミソでもあると思います。犯罪が上手くいくのか、という犯人の心理を1章で味わい、続く2章では犯人探しが主題に。ここで疑わしい人物が出てきて、探偵役といっしょに犯人はだれなのか、と悩み、
    そして最終3章で犯人が分かった状態で、犯人の野望を阻止できるかという風に各章ごとで趣向が少し分かれているため、これ一冊でさまざまなサスペンスを体感できるようになっているのです。

     そうした構成の妙だけでなくミステリとしても仕掛けがしっかりと施されていて、発表からあっという間に古典の仲間入りを果たしたというのも納得の完成度の高い小説でした!

    アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞

  • 財産目当てで大富豪の娘と付き合っていた男
    娘を妊娠させてしまい結婚を迫られる
    このまま結婚しても厳格な父親から娘は勘当されると考え自殺に見せかけて突き落とす

    自殺に疑問を抱く姉が調査に乗り出し‥

    たしかに騙されたな
    最後もドンデン返しあるかとヒヤヒヤしてた

    報われた成功?
    とんでもないな

  • ■第1章
    「彼」の目を通して物語が進む。退役軍人の彼は様々な職に就くがどれも長続きしない。仕方なくアイオワ州の大学へ進む。そこで財閥の令嬢ドロシーを知り交際するようになる。しかし彼女は妊娠してしまった。このままでは彼の計画が台無しになる。彼は彼女を殺そうと図る。

    ■第2章
    ウィスコンシン州の大学へ通うドロシーの姉エレンは内気で依存心の強い妹とは違い、度胸と行動力があった。妹の自殺に疑問を持った彼女は、妹の在席していた大学へ単身調査に向かう。ドロシーと交際していたと思われる男子学生を2人絞り込んだ。彼女はその2人に接触して行くが…

    ■ドロシーとエレンの姉マリオンは姉妹の中で最も自立心に富んでいた。コロンビア大学を卒業後、父の勧める大手企業を断り小さな広告会社に勤める。ある日エレンの元交際相手という男から連絡をもらう。彼女は軽々しく男になびくタイプではないものの彼の魅力に徐々に惹かれて行く。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    『ローズマリーの赤ちゃん』の作者ですが、こちらのほうが断然面白かったです。

    ドロシーの章では彼は何度も失敗するものの粘り強く?目的を遂行する。こちらは犯罪者の気持ちにまんまと同調させられてしまい、ハラハラドキドキさせられてしまいました。

    エレンの章では、彼女が2人の容疑者に接触していく中、どちらのケースも
    ええええ!!なんでそうなるの?!
    という驚きの展開に至ります。

    最後のマリオンの章は犯人の計画が概ね見えてしまった後ですが、やはり驚愕の展開が待っていました。

    三姉妹のキャラ、それに繋がる男達の描写が、よく作り込んであるな〜と関心させられました。

  • 有名な作品をやっと読むことができた。「彼」と三姉妹、まさかの「彼」の選択。

    工場労働者の息子としてかつかつの人生を歩んできた「彼」。金髪の美男で背が高く優秀で、第二次世界大戦ではフィリピンとおぼしき島で日本兵と対峙し殺した。復員して職を転々としたのち、さる計画をたて大学に入学。これが「彼」の背景だ。

    優秀で美男なら自力でどうにでもなるのでは?と思うのだが、彼の計画は他力本願での金銭取得。ここらへんがどうして?と疑問なのだ。

    この「彼」はさる鉄鋼会社の娘とつきあい彼女は妊娠。計画が狂い彼女を殺してしまう。目次をみると「ドロシイ」「エレン」「マリオン」とあり人物紹介にはそれらが姉妹とある。末っ子ドロシイは自殺とされたが、疑問を持った次女エレンは調査に乗り出す。学生課で金髪美男の学生を調べ犯人らしきき男子学生2人に迫り、解決かと思いきや、そこでどんでん返し。ここまで「彼」としか記述されていないのだ。てっきり候補者2人のうちどちらかかと思っていたので、このどんでん返しはとても意表を突く。

    目次のとおり長女マリオンに「彼」はゆきつく。ここからは「彼」がいかにして暴かれてゆくか、という展開になる。結婚目前になり鉄工所を見学し、鉱石が熱く煮えたぎる様の描写がけっこう長く、ああきっとそうなのか、と思うとその通りの結末だった。
    かわいそうな「彼」と「三姉妹」。

    訳者の解説には「アプレゲール」の問題だ、とある。アプレゲールとは第一次世界大戦後、戦前の価値観とは違う若者が現れたフランス、アメリカなどの言葉とあり、日本では第二次世界大戦後にそういった傾向が現れたとある。そして新しい価値観により今までにない犯罪が起きたとある。日本では金閣寺放火とか。発表は1953年。戦争の混乱をひきずりつつも新しい世界が開ける時期。

    映画化は「赤い崖」1956.ロバート・ワグナー、「死の接吻」1991マット・ディロン

    1953発表
    1976.4.30発行 1999.3.15第26刷 図書館

  • 原著出版が1952年というから、60年以上前の作品ということになる。
    舞台背景や小道具はなるほどところどころ古めかしいが、基本設定自体は今でも通用しそうである。

    構成はかなり凝っていて、才気走った若さが感じられる。著者23歳の処女作だ。
    打算的な美貌の青年が金持ちの令嬢を籠絡し、婿入りして莫大な財産を手に入れようと目論む。彼女を夢中にさせることにはまんまと成功したが、計算違いなことに、彼女は妊娠してしまう。厳格な彼女の父に知られれば、娘を勘当するであろうことは目に見えている。そうなったら財産は手に入らない。青年は躍起になって中絶を勧めるが、「愛」に目が眩んだ彼女は承知しない。貧乏でもやっていけると夢物語を語る彼女に業を煮やし、自殺に見せかけて彼女を殺してしまおうと決心する。
    その犯罪がうまく行くのか、というのが最初の山場である。

    本作は3部構成で、各部のタイトルは女性の名前である。これがどういう意味を持つのかは読み進めていくうちに明らかになる。
    第1部で登場する青年は、名前が明らかにされない。これが第2部に引き継がれて、読者自身も第1部の青年が第2部の中の誰であるのかわからない、不安定で落ち着かない気分を引き起こす。
    第3部で、それまで「攻め」の立場であった青年が「守り」に立たされる。
    さて、この犯罪は最終的にどうなるのか、という構成になる。
    構成全体も見事だが、細部の描写も秀逸である。第2部で女性が追われる場面では句点がなくたたみ掛けるような筆致が、女性の動きに合わせて読者の視線を疾走させ、緊迫感を誘う。第3部の製銅工場の熱気が立ちこめる場面は、青年の暗い絶望感を際立たせる。

    令嬢の父は製銅会社の社長である。発展しつつある一大産業。陽のあたる場所だ。対して青年は貧しい階層で生まれ、一度は戦地に赴き、後、大学に進学している。
    そうした対比から、上り坂の経済発展の陰の暗部を抉り出している、とも言えそうである。
    主人公の青年は、善悪の観念が欠落したサイコパス的な感じもするが、貧富の差という万力のように大きな力が人格をねじ曲げたと見ることもできそうだ。

    難を挙げれば、冷酷な青年は言わずもがなだが、女性たちも素性も判らぬ男にあまりに簡単に気を許しすぎな感じがして、全般に感情移入できる登場人物がいない点だろうか。後味がよくないのはいささか残念だ。

    巻末の訳者あとがきは、この作品の映画化・ドラマ化についても触れている。当時の空気が伝わってこちらも併せて興味深い。


    *著者は、ロマン・ポランスキー監督の曰く付きの映画『ローズマリーの赤ちゃん』の原作者。『ブラジルから来た少年』も話題作だった。

    *この著者の姓名はユダヤ系なのだろうか・・・?

    *最初の事件の手がかりの1つに「古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの」が出てくるのだが、これ、邦訳では、一応、何らかの形で注釈があった方がよかったのではないだろうか。あまり書いてしまうと興醒めなのだろうが、かといって日本人の「誰も」が知っているほど一般常識ではないような気もするのだが。

  • ドロシィ・エレン・マリオンと、巨大財閥三姉妹令嬢の三つの章からなる。
    だいぶ古い文庫だったので、読みにくいかなと思ったけれど、そうでもなく相当に感情移入して一気読み。

    アイラ・レヴィンの処女作。
    ストーリー仕立てもキャラも立っているので、映画化は?
    案の定、大分昔にされていてしかも、日本でもドラマ化までされていました。俳優さんの名前ほとんどわからないくらい昔に。

    さて、感想は?と言うと、私はちょっと怒っています。
    せっかく面白くなってきたのに、何でそこで彼女が死ぬの?
    中盤になってから出てくるこいつは?
    もっと、この人間の魅力引き出してよ!
    姉さんあっけなさすぎない?
    犯人追い詰めたらそこから?
    などなど。
    感情移入しすぎて怒りながら読みました。だからこその一気読み。

    5月の読書会の課題図書。
    これは語らねば。

  • 二人は学生同士の恋人だった。女は妊娠しており、男は結婚を迫られていた。彼女をなんとかしなければならない。おれには野心があるのだ――冷酷非情のアプレゲール青年の練りあげた戦慄すべき完全犯罪。当時弱冠二十三歳の天才作家の手になる恐るべき傑作! アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞受賞作。

  • やみがたい妄執を書かせると、レヴィンは詩人。かつて白皙のマット・ディロンが演じた映画も良し。

  • 妊娠した恋人を自殺に見せかけて殺害し完全犯罪を行おうとする青年と、犯人探しをする家族。追い詰められていくラストまで、素晴らしい出来。アイラレヴィンが天才と言われたのは、この作品を書いたからであり、他作品との差は歴然。60年前にこんな小説が書かれていたとは!と思える絶品のミステリ

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アイラ・レヴィンの作品

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