クリスマス・プディングの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300639

感想・レビュー・書評

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  • 霜月さんの攻略本によるとイギリスで刊行された本書。時々ある寄せ集め感ありありの短編集と比べかなりの充実ぶり。一番好きなのは老練なポアロとお屋敷の人達との交流が微笑ましい表題作。『スペイン櫃〜』『二十四羽〜』も痛快で良い。

  • 霜月蒼氏『アガサクリスティー完全攻略』によると、1960年代ごろ、英国では、クリスティの新作は毎年11月上旬に出版され、「クリスマスにクリスティを」というキャッチコピーがあったらしい。
    本書は、そんなキャッチコピーにふさわしく、クリスマスを題材にした表題作を含む中編2編、短編4編を『クリスマスのごちそう』に見立てた構成となっている。

    表題作『クリスマス・プディングの冒険』は、いかにもクリスマスらしいハッピーな話。
    婚約中の外国の王子がイギリスで羽目を外し、由緒あるルビーを奪われてしまう。ポアロは、女性が潜入しているという屋敷に「イギリスの古風なクリスマス」を体験する、という名目で訪れることになる。
    料理人が腕によりをかけたクリスマスのごちそうがとてもおいしそう。また、屋敷にやって来た子供たちが少年探偵団ばりに活躍するのもほほえましい。クリスティは自分の子供のころのクリスマスを思い出しながら書いたそうで、きっと幸せなひと時だったのだろう、とこちらまで温かい気持ちになる。

    中編作『スペイン櫃の秘密』は、イブニングパーティの途中、参加者の夫が会場に置かれていたスペイン櫃の中で刺殺されていた、というストーリー。被害者の妻、クレイトン夫人は、クリスティの作品の中にちょくちょく出てくる、自覚はないけれど無意識に男性をその気にさせて振り回す「サークルクラッシャー」系で、女性の描写に長けたクリスティの筆が冴えわたる作品である。

    短編は、ポアロものが3編と、ミス・マープルものが1編。悪くはないが、まあまあ、という感じ。やはり、クリスティは、物語に編み込まれた伏線をじっくりと味わいながら読むことができる長編が秀逸であると思う。

    クリスマスに関係するのは表題作だけだが、シーズンに合わせて読むのがおすすめ。

    • 111108さん
      b-matatabiさんこんばんは。

      「クリスティーは長編が秀逸」私も最近改めてそう思うようになりました。ポアロやミス・マープルといったキ...
      b-matatabiさんこんばんは。

      「クリスティーは長編が秀逸」私も最近改めてそう思うようになりました。ポアロやミス・マープルといったキャラクター紹介としては短編もありですが、ミステリー自体を味わうとしたらやっぱり長編ですね!人間模様の描き方とか本当に騙すのが上手いなぁと思います。
      2022/02/03
    • b-matatabiさん
      111108さん、お返事がとても遅くなりました。
      やっぱりクリスティは長編ですよね。特に同性の女性の描き方は本当にすごいと思います。その分、...
      111108さん、お返事がとても遅くなりました。
      やっぱりクリスティは長編ですよね。特に同性の女性の描き方は本当にすごいと思います。その分、男性がちょっと紋切り型なのが気になりますが。
      ポアロシリーズを読み終えたので、違うシリーズを少しずつ読み始めています。
      111108さんの感想を楽しみにしています。
      2022/02/15
  • ポアロもの5篇と、ミス・マープルもの1篇が収録されている、中短編集。

    「はじめに」の中で、本書はクリスティー曰く“料理長のおとくい料理集”とのことで、ポアロとマープルが一冊でお楽しみ頂ける、小粋なクリスマス・プレートとなっております。

    個人的に好きだったのは、表題作の第一話「クリスマス・プディングの冒険」。謎解きは勿論、まさにこの時期にぴったりな、英国の伝統的なクリスマスの雰囲気を味わえるお話です。
    舞台となる一家の少年少女たちが、ポアロにドッキリを仕掛けようとするのも微笑ましいですね。
    特に、コリン少年が朝にポアロを起こしにいった時に、ポアロのかぶっているナイト・キャップ目にしたとたん“声帯が一瞬間動揺させられた”(多分、吹きそうになったのでしょうねww)という、シーンは思わず笑ってしまいました。
    他の作品も、冒頭のポアロと“有能な”秘書、ミス・レモンとのやり取りが楽しい第二話「スペイン櫃の秘密」、クリスティーならではの人間模様を堪能できる第三話「負け犬」等々・・色々なお味を楽しめます。
    そして、第六話「グリーンショウ氏の阿房宮」では、ミス・マープルものをコンプリートしてから、ご無沙汰だったマープルさんに再会できて嬉しかったです。
    と、いうことで、クリスティーのクリスマス・プレート、美味しくいただきました~。

    • 111108さん
      あやごぜさん、こんばんは。

      今の時期にぴったりの本ですね!
      未読のはずですがあやごぜさんのレビューを読んだらなぜか既視感。BSドラマで観た...
      あやごぜさん、こんばんは。

      今の時期にぴったりの本ですね!
      未読のはずですがあやごぜさんのレビューを読んだらなぜか既視感。BSドラマで観たものだったようです。でもドラマ化で内容変わってるのもあるし(たまに犯人さえ変更されてるのもありますし)コンプリートする意味もあるので、こちらも近々読もうと思います♪
      2022/12/21
    • あやごぜさん
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      はい(^^♪、この時期に読めて良かったです~。
      こちらもBSドラマで放送されていた...
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      はい(^^♪、この時期に読めて良かったです~。
      こちらもBSドラマで放送されていたのですね。
      ドラマ仕様にアレンジされていることって確かにありがちですが、犯人まで変更されてしまうことがあるのですね・・汗
      ドラマと原作を見比べて楽しむのも良きかと思いますので、是非お読みくださいませ~。
      2022/12/22
    • 111108さん
      あやごぜさん、お返事ありがとうございます♪

      そうなんですよ『無実はさいなむ』とか、話よりもドラマと犯人違うことに衝撃受けました。
      クリスマ...
      あやごぜさん、お返事ありがとうございます♪

      そうなんですよ『無実はさいなむ』とか、話よりもドラマと犯人違うことに衝撃受けました。
      クリスマスもの読みたいけど、寝落ちして読めない気もします(涙)
      2022/12/23
  • 第7回福岡翻訳ミステリー読書会の課題本(課題作は、表題の短編のみ)。

    読書会が終わってから、詳しい感想を書く予定。

    ***

    読書会終了! いやはや、今回もツッコミどころ満載で(笑)とても楽しい読書会でした。

    クリスティーということで、代表作はほとんど読んでる~という人からこれが初めて、という人まで、読者層は割りとまちまち。
    私もクリスティを読むのはこれが4冊目だったので、先輩方のお話をふむふむと参考にさせてもらうなど。。

    さて、そんな楽しい会話の中で出たのは、以下のようなこと。
    ・クリスマス・プティングってそもそもどんなお菓子?
    ・クリスティはこの短編では、あまりミステリーを書く気がないみたい? イギリスのクリスマスを書きたかっただけ?
    ・この話はあまりポアロっぽくない。ミス・マープルでもよかったのでは?
    ・話を読んでいる途中、○○が怪しい、と思ってたのに、全然関係なかった(笑)。
    ・第一章と第二章の隔絶間が甚だしい。話についていけなくなりそうだった。
    ・クリスティはやはり、おばさんの視点を書くと冴える!
    ・最後(第六章)の意味深な表現は何? ポアロ何したのと思ったよ(笑)!

    ……と、私の覚えている限りこのようなところでした。他にも途切れることなく会話が続き、とても面白かった。

    私の感想も大体似たような感じで、クリスティはこのお話を自分のために楽しんで書いたのではないかなぁ、と。あまりミステリーとしてこだわらず、割とおおらかな気持ちで、筆の赴くままに書いたのでは。

    これまでに読んだクリスティ作品を振り返ってみても、クリスティの魅力はパズル的なミステリーにあるのではなく、人間観察にあるのではないかと思う。
    なので、私個人としては、課題作になった「クリスマス~」よりも、「負け犬」では人物描写の点で、「二十四羽の黒つぐみ」や「夢」では発想と視点の点で、それぞれ優れていて面白いと感じた。

  • アガサクリスティーがたっぷり楽しめた。
    クリスマスの時期に合わせて読んで良かった。

  • クリスマスにクリスティを!ということで読んだ。
    表題作は古き良きイギリスのクリスマスを描いているそう。クリスマス・プディングを食べてみたい!作中で「エックス脚」という言葉が出てきたのが意外で驚いた。
    全体的に面白い短編集だったが、一つだけマープル。似たタイトルの作品がポアロにもあったような。
    あと、有能な秘書のミス・レモンが面白かった。
    解説が川原泉でびっくり!

  • 再読だけど読んだ記憶が全くない。備忘録として簡単に。

    「クリスマス・プディングの冒険」
    珍しく死者が出ない話。冒険とタイトルにあるよう十代前半の子が活躍する。

    「スペイン櫃の秘密」
    複数の男性を惑わせる女性の話。でも、意図的にやってるわけじゃないのがこの話の悲劇か。

    「負け犬」
    タイトルで犯人が読めちゃったか。この話も出てくる女性がしとやかに見えて気概がある。

    「二十四羽の黒つぐみ」
    今回のポアロものの中ではこれが一番良かったかもしれない。成りすましトリック。

    「夢」
    クリスティの中でも定番なネタ。

    「グリーンショウ氏の阿房宮」
    これだけミス・マープル作品。正直これが一番良かった。これも一種の成りすましトリックかと。

    結論。やっぱりミス・マープル作品の方が自分好みな気がする。

  • クリスマスっぽいイメージで
    クリスティ自身が編んだ短編集。
    クリスマスにはクリスティを!

    タイトルになっている物語は
    ポアロさんが「イギリスらしい」
    クリスマスを過ごすために招待される
    という前触れがあるので
    読んでいるこちらも一緒に伝統の祭日を
    味わうことが出来ました。

    あと『スペイン櫃の秘密』で
    優秀だけどクールなミス・レモンが
    推理話にのってこないもんだから
    ヘイスティングスを懐かしがる
    ポアロさんがちょっと笑えます( ^∀^)

  •  クリスマスプディングの冒険
     クリスティの短編集。冒頭挨拶でクリスティがクリスマスについて述べているが、やはりイギリスのクリスマスは特別な様だ。クリスティがこの作品集を読者へのクリスマスプレゼントとして発表してくれた事に感謝を持ちながらも、8月末という全くの季節外れに目を通している罪悪感を踏まえて(全く風流でないなあ)感想を書く。

    クリスマスプディングの冒険
    表題作。探偵役はポアロ。とある皇太子が若さ故に犯したトラブル。家系に伝わるルビーの盗難事件。持ち出した謎の女。とある一族の屋敷で昔から行われているイギリスの古き良きクリスマスパーティに彼女達も参加すると聴き、乗り気では無いながら渋々了承し、ポアロも潜入捜査、一族と共にクリスマスパーティに参加する。
     イギリスのプディングの風習なども面白いし、探偵ポアロにイタズラを考える少年達や、その目論見を理解しながら反対に少年達を驚かす仕掛けをするポアロ。更にそこにルビーを取り返す段取りも盛り込んでおり、最後は見事な結末に至る。
     短編長編問わず完成度は抜群に感じたし雰囲気もトリックもいい。ポアロの活躍に最後までほっこりとする様なクリスマスプレゼントには間違いない傑作だ。
    スペイン櫃の秘密
    探偵役はポアロ。櫃のなかで見つかった刺殺体。逮捕されたのは友人のリッチ少佐。殺害されたクレイトン夫人との関係を疑われている人物。
    クレイトン夫人は魅力的な人物であり、男を虜にしてしまう。犯人はリッチ少佐か下男のバージェスしかいないが下男が殺人をする理由が浮かばず。調査のなかで、とあるきっかけから第三の可能性を見出し、真相に到達する。全てが女性に狂った人物の凶行だ。
    負け犬
     短編の為か、ありきたりな内容。殺人事件が起き一人逮捕されるが彼が犯人であるとは信じられない女性がおり遣いの女性がポアロの元に訪れる。ポアロは老嬢をたずね、彼女の直感により犯人を提示される。捜査を進めると色々なことが明るみになり、真相へ。途中、催眠術師等が登場したりあまり馴染めない。また、通常であれば犯人指摘後、二転三転あるはずだが、そのまま解決していく。ジョージの活躍が素晴らしい。
    二十四羽の黒つぐみ
     ポアロが友人のボニントン氏と食事中。その店に決まった曜日に必ずやってくる老人。ウェイトレスの話では数年来毎週火曜日と木曜日にやってくるが先週は月曜日にやってきたという。しかも注文する食事も普段と全く違うものを注文している。ポアロはその話を聞いただけで不審に思う。
     三週間後、老人が事故で死んだ事をきき、ポアロは不信感をもち事件を調べ始める。
     ポアロらしい観察、推理が冴えている作品。短編だがとても面白い物語だ。

     とある金持ちから不思議な依頼。毎日同じ時間に自身が拳銃で自殺してしまう夢を見るという。
    それ以外にも不思議な事が多くある依頼人を困惑気味に対応するポアロ。結局は何事もなく依頼は終了するが数日後、依頼人が本当に拳銃で死んだとポアロの元に連絡がくる。
     彼の家族と事実を紐解きながら、真実を解き明かす。この作品も短いがとても面白い作品だ。
    グリーンショウ氏の阿房宮
    現代では余りイメージ出来ない事だが、人の縁とは不思議なもので過去においては今作のような関わりもあったのだろうと推察する。
    とある老婦人の遺言書の証人になるレイモンド。家政婦が全財産を相続する手筈で、その代わり手当は支払わないという。不思議な人物に不思議な屋敷。レイモンドは家族にそんな話をするが、一方それを聞いていたマープルはひどく心配する。
     遺言書を巡る殺人事件と人物入れ替えトリック。クリスティの作品ではお約束ではあるが短編として読みやすい作品だ。

  • ポアロもの5編とマープルもの1編。
    クリスマスに関連するのは表題作のみ。

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