検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300677

作品紹介・あらすじ

街中で知り合い、親しくなってゆく金持ちのオールドミスと青年レナード。ある夜そのオールドミスが撲殺された。状況証拠は容疑者の青年に不利なものばかり。金が目当てだとすれば動機も充分。しかも、彼を救えるはずの妻が、あろうことか夫の犯行を裏付ける証言を…展開の見事さと驚愕の結末。法廷劇の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 森絵都さんの短編「ラストシーン」で登場する作品。本作品へのオマージュと思われるタイトルの話はいくつか読んだことがある筈だが、本家本元の本作品は文句無しに面白い。
    話が3回反転するうち二回転目が一番鮮やかで、そこで終わっても良いところ、もう一回ひっくり返してみせる、というのがさすが女王クリスティ。

  • ある青年が、知り合いになった金持ち女性の殺人容疑で裁判にかけられる。本人は一貫して無罪を主張するが、彼のアリバイを証言するはずの妻は思いがけない行動に出る。

    映画化もされたクリスティの戯曲で、冒頭では舞台配置が細かく指示されている。戯曲は読みなれていないのでとっつきにくいかと思ったが、あっという間にクリスティの世界観にはまってしまった。
    小説ではないので細かな描写がないが、その分コンパクトになりテンポよく話が進む。いったいどうやって話をまとめるのだろう、と思いきや、最後は二転三転のどんでん返しで、衝撃のうちに舞台は突然幕引きとなる。

    この話の原形が短編集にもおさめられていて、結末は戯曲と異なるようだ。私はNHKBSで土曜日に放送されているクリスティ原作のドラマを小説と並行して見ているが、ドラマは戯曲と結末が異なっていたので、短編の結末をベースに作られたのかもしれない。
    個人的には戯曲の結末の方がクリスティらしいと思うが、短編と読み比べてみたい。また、舞台でも観てみたい作品である。

  • クリスティーの小説はとても読みやすい。そしてその読みやすい話のさりげないところに伏線や手掛かりを隠し、読者を煙に巻いてくるのにクリスティーらしさがある。その手法は小説だけでなく戯曲であるこの作品でも遺憾なく発揮されている。

    小説ではセリフだけでなく地の文の中に重要な情報を隠すことができるが、演劇として上演されることが前提である戯曲では地の文には小説ほどには頼ることができない。使えるのはセリフやト書きとして登場人物の行動の中に忍ばせる方法だ。他にも舞台装置になにかを仕込むという手も考えられるが、あくまでプロットと登場人物で勝負して、高いレベルで読者をだますことのできる仕上がりになっているところにこの作品の凄さがあると思う。このあたりは流石のストーリーテラーぶりだと改めて感心させられた。

    クリスティーの戯曲では、他にも『ねずみとり』や『蜘蛛の巣』などが未読なので、折を見て読んでいきたい。

  •  クリスティの戯曲は中々手を出せずにいたがほとんど作品を読み尽くしてしまい、いよいよ戯曲を読むに至る。
     今作「検察側の証人」は法廷ミステリーになる訳だが、1953年から全く色褪せる事なくあまりにも面白い作品で衝撃的だ。小説よりも短いため読みやすく、戯曲でも傑作と言われる様に起承転結が丁寧で完成度が高い。更にはクリスティ得意のどんでん返しと読者(観劇者)を騙す為のトリックが見事に作用している。

     若いハンサムなレナード・ボウルは中年のフレンチという女性をとある事故から救った事により親しくなる。ある日、フレンチ婦人が自宅で殺害されており、レナードに疑いがかかってしまう。レナードの潔白を証明できるのは妻であるローマインの証言のみ。一方でフレンチ婦人はレナードに多額の財産を残しており、明らかに彼の不利になる材料が出揃っている。レナードは有罪か無罪か。弁護士のロバーツ卿はどの様に立ち向かうのか。そして結末は如何様になるのか。

     この作品は法廷ミステリーというよりもサスペンスミステリといった方がイメージが湧きやすい作品で、間違い無く小説でも面白い作品だったであろう。間違いなくストーリーテリングは現在でも通用するし、ここまでの強烈な結末は久しく記憶にないと言える。
     単純にロバーツ卿とマイアーズ検事の法廷対決かと思いきや、別の時間軸が設定されており予想外の進行で結末まで進んでいく。
     今から70年以上前の作品の為、法廷の仕組み等現代では読み取れない部分もあるが、本筋に流れる「人間関係」については全く変わる事はない。一方でレナードとローマイン夫婦の関係性を今作を通じて体験していく事となり、人を信頼したり愛したりする事の脆さや危うさ、恐ろしさには共感してしまうのではないだろうか。

     最後、この様な結末かと口を開けたまま呆然としてしまった。それぞれの物語には相応しい結末が必ずあるのだが、今作は正しく納得のいく道筋でありこういう結末を描けてしまうクリスティに脱帽した一冊だ。

  • ラストにひっくり返りまくるミステリ。
    傑作です。
    戯曲テイスト、はじめて読んだけど、すっと読めたよかったです。

  • 別の本で紹介されていたので、前情報なく読んでみました。戯曲であることに驚き、ストーリーにも驚き 笑
    ただ、やはりエンターテイメントである一方、シェイクスピアを読んだ時の重みはあまり…
    今度は小説にも挑戦します

  • ☆4.3
    クリスティ読了2冊目。図書館にて読了。
    今回もやられたー!最後の数ページで二度騙されました。
    こんなに少ない登場人物なのに、最後まで誰が誰を騙そうとしているのか確信がもてないなんて…
    クリスティの頭の中を覗いてみたくなりました。

  • 大金持ちの老婦人が殺された。状況証拠はレナード青年に不利なものばかり。無実を訴える彼に対して、アリバイを証明できるはずの妻ローマインが、それを覆す証言をした。弁護をするメイヒューは困り果て——。

    小説版より、もう一捻りしたのが効いている。これは劇で見たい。裏切りの裏切りに次ぐドラマティックな展開。特にラストのどんでん返しが快感。

  • たった200と数ページのとてもシンプルで余計なものは一切ない設定のなかで
    ここまできれいにまとめるのはさすがクリスティ。
    キャラクターの心理描写で読者を騙す手腕を心得まくってる。
    意外と単純、あれ、これわかっちゃうかも?と思わせながら
    ラスト数ページで見事にひっくり返すのだ。

    あっさりしすぎるくらいやけど一瞬で読めて、コロっと騙されたい人におすすめね。

  • まず一言。めちゃくちゃ読みやすい。それでいてストーリーが秀逸。どんでん返しあり。短い文量でかなりの満足感が得られた。

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