- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151400292
作品紹介・あらすじ
現代演劇の父、岸田國士の戯曲選集刊行開始。劇に何が語られているかを問うことは、かならずしも劇それ自身の美を問うことではない。劇が劇であるためにまず何よりも大事なのは、劇の言葉である。つまり劇的文体。岸田國士はこれを「語られる言葉の美」といい、「非」劇の言葉こそ問題なのだと明言した。
感想・レビュー・書評
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岸田國士は、「劇」とはテーマではなく文体だという。何気ない夫婦の会話がドラマを生む「紙風船」などは、岸田の戯曲の特徴がよく表れている。
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賢夫人の一例。
明日は天気。
頼もしき求縁。
紙風船。
ぶらんこ。
葉桜。
驟雨。
屋上庭園。
短編沢山。
これらを立体化したい。 -
呼吸【いき】もつかず、足音も立てず、何者か、忍び寄る如し、綻びを縫ふ
岸田國士
数年前に誕生した「ハヤカワ演劇文庫」シリーズが好評だ。アーサー・ミラー、テネシー・ウィリアムズらの海外作品はじめ、別役実、平田オリザら現代日本の戯曲も刊行中である。安価な文庫本だけに、学生たちにもありがたい存在だろう。
〈日本現代演劇の父〉と呼ばれる岸田國士。その生涯を追うと、1890(明治23)年、東京の軍人の家に生まれ、陸軍士官学校を経て少尉に任官。退役後は一転、東京帝大で仏文を学び、渡仏。演劇に身を投じ、帰国後は文学座の創設に参画した。太平洋戦争下は大政翼賛会文化部長をつとめ、敗戦後は公職追放となるなど、めくるめく人生でもあった。
大正末期から戯曲を発表し、28巻にも及ぶ全集がある。
掲出歌は、1927年発表の「温室の前」のセリフから。舞台は東京郊外、身寄りのない30歳前後の兄と妹は、温室のある家でひっそりと生活している。互いの結婚相手になることも意識し、友人の男女を招き入れるが、いつの間にか、その友人同士が良い仲になってしまうという展開。
健康的で、「人手を煩はさずに自分の生活を明るくするやうな仕事」として花づくりを選んだ兄の一首は、具体的には衣服の綻びを指しているが、良き伴侶に巡り会えない寂しさも語っているだろう。「綻び」を、自分で縫わなくてはならないのだ。
岸田は戦後の54年、舞台「どん底」稽古を演出中に倒れ、急逝。享年64。女優岸田今日子の父でもあった。
(2012年5月6日掲載) -
大学の「戯曲論」という授業の中で初めて手にした作品。
それまで戯曲というものは起承転結があって、暗転があってストーリーが展開されていくものだと思っていた私にとって、
この一幕物の、そして登場人物が2人(最後に一瞬もう1人出ますが)しかいないという作品にはド肝を抜かされました。
『結婚1年後の日曜日をいかに過ごすか』という問題を話し合っていた妻と夫。
妻は妻なりの考えを伝え、夫は夫なりの考えを伝えるが、二人の会話の歯車はうまく回らない。
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妻 あなたが話をなさらないからよ。
夫 話……どんな話がある。
妻 話は「する」ものよ。「ある」もんぢやないわ。
夫 なんだ、それや……。(略)
妻 (しんみり)ほんとを云ふと、あたしは、黙つてあなたのそばにゐさへすれば、それで満足なの。(略)
妻は夫のことが大好きでかまってほしくて仕方ないという思いが会話の端々から感じられ、嫌味だとか意地悪なことを言ってしまう。
そして最後にぽろっと「黙つてあなたのそばにゐさへすれば、それで満足なの」と。
なんてツンデレ!!!!
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夫 おれたちは、これで、うまく行つてる方ぢやないかなあ。
妻 もう少しつていふ処ね。
なんてツンデレ!!!! (2回目)
ふざけた抜粋しかしておりませんが、この後二人は想像の世界で旅行に行ったりと楽しそうな夫婦の会話もしっかりあります。
その当時ならではの汽車で旅をする描写なども素晴らしく描かれております。
この作品は20ページ程の短編で、上演時間も30分程度の作品で、夫婦の掛け合いだけで成立してる。
それでも飽きさせないのは、二人の会話がとてもリアリティがあって想像力を掻き立てられる作品だからだと思います。
私もこんな夫婦になりたいです。 -
「だつて、だつて、あなたはだんだんいゝお友達が減つていくぢやないの…」
あの夫婦は、その後どうなっただろうか?
読んでいると、やるせなくなるような、寂しくなるような、しんどいような、でもしみじみと真実を突くような。ナイロンの『犬は鎖につなぐべからず』を見返したい。DVD返してもらわなくちゃ。