殺す人形 (ハヤカワ・ミステリ文庫 レ 4-2)

  • 早川書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151700026

感想・レビュー・書評

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  • 孤独に慣れ親しんだ、そうあらざるを得なかった人間が、自分だけの世界を作りあげていく先に生まれる狂気。境遇も違い、普通に暮らしていたならば接点がなかったはずの女と男に、悲惨な出会いの時がやってくる。そんな悲しい運命を生んだ素は、やはり孤独だ。

    ルース・レンデルは、ウェクスフォード警部が登場するシリーズ作品と、それに属さないノンシリーズ作品を書いています。ノンシリーズ作では、サイコ・スリラーの要素が特徴的。異常心理が引き起こす事件そのものの怖さを味わうと同時に、異常な心が形成される背景が、説明的文章からではなく、ごく自然な日常の描写から見えてきます。

    狂気とともに生きるキャラクターたちを追っていると、どうしてもかわいそうだなというか、そうなったのはあなたのせいじゃない、家族が、周囲があなたを狂気の世界へと追いやったんだと、かばいたくなってします。それくらい繊細に、自然に、私たち人間に異常心理が宿る過程を示してくれるストーリー。なのに、最後には必ずといっていいほど、容赦ない鉄槌が狂気に囚われたキャラクターにふるわれ、同情心も粉々に打ち砕かれる。小気味いいくらいの残酷さ、妙にリアルな後味が残ります。『殺す人形』のラストは、その典型として、私の中ではとても印象的な作品。

  • 16歳の誕生日を迎えた日、パップは悪魔に魂を売った、と始まる。一体何事かと思うと、思うように伸びない身長を伸ばすための魔術なのだ。なーんだと思うが、病気で入院中の母を見舞いに行かない父、顔にあざのある23歳の姉ドリー。ドリーは16歳で学校をやめ家で裁縫をするよう母に方向づけられている。うーん、何やら軋みがあるな、と感じる。

    母が死んだことで、その軋みがだんだん大きくなり、点として散らばっていた人物がからまり、最後の悲劇に進んで行く。

    父は隣人の娘マイラと再婚する。弟パップは父のタイプライター販売の仕事に能力を見せる。一方ドリーは母の死で一層内にこもるようになる。もうひとりIRAの爆破被害で内にこもり狂気になってゆく男ディアミットが登場する。途中からきっとディアミットが最後の悲劇のカギだろうなあと予感はする。

    顔のあざ、爆破被害、これらで二人は狂気の中に陥った。だが一番タガがはずれているのは父親ではないか?と感じた。ひとり弟が仕事をよくやってるのが救いだ。しかし極端な性格と状況が示されているが、片鱗は自分でも感じることはあり、隅に追いやりなんとか人生を生きてきているのでは?という気になる。

    ヒッチコックあたりが映画にしたらおもしろいかも、と思った。もう死んじゃってるけど。

    書かれたのが1984年、最初タイプライターの販売店で、ワープロが出た時期だなあと思ったら、ワープロを扱うべく弟は講習会に行く、などという場面があった。


    1984発表
    1996.2.29初版 図書館

  • オカルトホラーかと思いきや、これはサイコホラーだった。「魔術」にのめり込んでゆく女性がメインで、そこに精神を病んだ男の物語が挿入されている。このふたつがいったいどこでどう繋がるのかな、という部分が見もの。

  • レンデルにしては珍しく整然さを欠いている。
    ストーリー展開は確かに従来の作品群同様、全く読めないのだが、今回はそれが読書の牽引力になっていない。昔から失語症など些細なハンディキャップを素材にして普段到底あり得ないような事態を丹念に心理描写を重ねることで絶大な説得力を持って読書を引っ張ってきたのだが、今回はあまりに魔術や心霊に寄りかかってしまったため、今一歩説得力に欠け、ノレなかった。

    期待というより心配された結末は、自閉症的な人間と夢遊病的な人間が回り道の末、出遭うというチープなものだった。

  • obtnd

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