偽りの目撃者 (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 6-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151709524

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  • 元FBI捜査官のスポーツ・エージェント、マイロン・ボライターシリーズ第2弾。

    ストリート上がりの若手黒人テニスプレイヤー、デュエン・リッチウッド(21)。
    マイロンが目をかけ、代理人を務める彼が初めての全米オープン初戦で期待どおりの圧倒的な戦いぶりを見せる。
    その最中聞こえてきた、くぐもった銃声音。

    不穏に思ったマイロンと相棒のウィンは、出所を探りにスタジアムのフード・コートへ駆けつける。
    そこにはかつてのスタープレイヤー”アイス・クイーン”ヴァレリー・シンプソンの銃殺体が転がっていた。
    折しも彼女は復帰を誓い、マイロンとの代理人契約を望んでいたところだった。。

    こってこてのハードボイルドもの。
    ひょんなことから事件に巻き込まれ、そのちょっとした行きがかり上の関係性に過大な責任感を膨らまし、事件にのめり込んでいく。
    事件を追う過程で不遜な輩と対峙したり、高慢な権力者から圧力をかけられたり、裏社会の危険人物から脅されたりと、散々小突き回されるのだが、いちいちひねくれた口調で相手をこけにし、するりと身をかわす。
    なぜそこまで危険を顧みない!?と思う程の反強者ぶり、騎士道精神が気持ちよく、面白い。

    加えて本シリーズでは、主人公マイロンの主な職業がスポーツ・エージェントというところが他のハードボイルドものにないスパイスとなる。
    結果、探偵のような行動に終始するのだが、その中でも主たる職業(まだ駆け出しの弱小スポーツ・エージェント)を軌道に乗せようと悪戦苦闘する姿も書き込まれているし、その職業上の闇(有力選手を食い物にする金、金、金の世界)もうまく物語に取り入れている。
    また、そこでのマイロンの立ち振る舞いもかっこいい。
    お金は追究する。でも顧客の意志を尊重する。そしてお金だけでもない。
    なかなか現実には難しい折衷的な理想論だけど、それを体現しているマイロンがかっこいいのだ。

    そしてもう一つの魅力が相棒ウィンの存在。
    血も涙もない超絶サイコ野郎。
    マイロンもよっぽど強引で破天荒な人物だと思うのだが、このウィンと比較することでなぜか常識的で穏当に見えてしまう不思議。
    さすがのマイロンでもと思われる場面でも、余裕でピンチを切り抜けるすべをもたらすウィン。
    見方によっては「もう何でもありやん」としらける要素でも有り得るところを、その人格破綻な綻びを餌に、目を逸らさせる著者のうまさを感じる。

    これは、はまった。
    このマイロンとウィンの次作以降の活躍が楽しみ過ぎる。
    次は『カムバック・ヒーロー』。
    エドガー賞(1997)受賞作とのこと。

  •  札幌読書会で取り上げて頂いて以来ハーラン・コーベンは全作読むに値するという強迫観念を抱いてしまったぼくは、最近の独立作品はもちろん、日本でコーベンとう作家が翻訳され始めた20年以上前の本シリーズにも今、中毒となりつつある。本作はマイロン・ボライター・シリーズのその第二作目。

     シリーズ第一作『沈黙のメッセージ』でスポーツ・エージェントというあまり聞き覚えのない商売をしている主人公設定に驚いたのだが、読んでみるとロバート・クレイスばりの私立探偵型ハードボイルドであることに驚愕。

     しかもシリーズ・キャラクターたちの個性も既に完成度が高く、第二作目でもそれはさらに強固なシリーズ基盤として引き継がれているばかりか、個性をさらに露わにしている。

     相棒のウィンザー・ホーン・ロックウッド三世ことウィンは、王子様のような生活と社交生活を持っていながらその身にまとう暴力性と決断力は、スペンサーにおけるホーク、エルヴィス・コールにとってのジョー・パイクと同様に、事件解決過程のバイオレンスの部分を受け持っている。

     さらに元女子プロレスラーのエスペランサ、彼女が嫌うマイロンの恋人ジェシカなどのレギュラー・キャラクターたちの個性や、他にも全体を通して胡散臭く個性に満ちた人物たちの動物園みたいな世界が、ニューヨーク、ニュージャージーに展開されるのだ。

     しかも謎解きミステリーとしての犯人捜しの方も一筋縄ではゆかず、プロスポーツ(今作ではプロ・テニス)を背景に生じた事件の実質上の名探偵役をマイロンはこなしてゆく。推理小説と言うよりもハードボイルドであるから、汚れた街をゆく騎士道精神の権化である我らがヒーロー像は、へらず口とはったりで悪の砦をのしてゆく。

     本シリーズに限らずハーラン・コーベンは汚れた街と、人間の気位を対比させ、オーソドックスなハードボイルドの地形や登場人物のごった煮、あるいは街そのものの猥雑さを見せながら、落としどころとなるすっきりしたラストシーンへとストーリーを流し込んでゆく。

     何といっても明るい口調の主人公とジョークで飾られた洒落たシナリオが、暗く絶望的な罪を、軽妙洒脱に描いてくれる。古い時代の作品であれ、読んで古さを感じさせない、あるいは古さを味わえるのが、ハードボイルドというジャンルのよいところだ。この作家の未読作品が、まだ山のようにある。悲しいのか幸せなのかよくわからない、というのが今の境地だ。

  • スポーツ・エージェントのマイロンは、またもや事件に巻きこまれた。射殺体で発見された元プロ・テニス選手の女性の手帳に、彼の顧客の名が残されていたのだ。調査を始めたマイロンは、数年前にその女性の恋人が殺され、犯人は行方不明のままだという事実を突きとめた。マイロンは二つの殺人に関連があると信じ、真相を探るが.....アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作家がエンターテイナーぶりを最大に発揮したシリーズ第2弾。

    安定の面白さ。私事で読書が捗らず、登場人物名がごちゃごちゃになってしまったのが残念。

  • 図書館で。
    前回がアメフトで今回はテニス。巻を重ねるごとに主人公はクライアントを失っていきそう。本業大丈夫だろうか?

    個人的には彼を訪ねてきたという理由で、そこまで親身になって調査する?という感じ。結果、色々ほっくりかえして後味の悪い思いしか残らないし。大体、元テニスプロの女性はなんで彼の事務所を押したのかなぁ?知り合いが居たからかな。

    まぁろくでもないコーチに関しては天誅という一言で片づけても良い気がしますが。捜査途中で元カノは狙われるし、色々と危なっかしいよなぁと読んでいて思いました。アーロンは脳筋で、ちょっと同情しました。やってることがやってることなので自業自得かなとは思いますけど。

  • 懐かしいテニスプレイヤーの名前がチラホラしてて嬉しかった(ちなみに自分テニス部)。
    脇役もキャラ濃くて好み。

  • 出会って良かった!
    アイロニーだらけの地の文はやや読みづらい。
    ですが、ウィン万歳…!←厭世家で皮肉屋でキレたクールビューティ大好き!

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