007は二度死ぬ 改訳版 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 17-7)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151713576

作品紹介・あらすじ

愛妻を殺され、傷心のボンドをMは日本へ送りこんだ。万能暗号解読機を入手するため、そして使い物にならず、解雇寸前のボンドに最後のチャンスを与えるためでもあった。彼を迎えたのはタイガー田中と名乗る男だった。男は解読機を渡す代わりに、福岡で毒草を栽培する危険な植物学者の殺害を命じる。ボンドは条件を呑んだ。だが、その学者の写真を見た彼は…!ボンドの眼を借りた日本観が横溢する注目作。改訳決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 007シリーズで日本を舞台にしたものがあると聞き、興味を持ちました。
    昔の作品なので、かなり誤解の上に成り立った内容ではないかと思いながら改訳版を読みましたが、そうでもなく、割と忠実な描写。
    実際に著者が日本ロケをしていなければ、ここまで詳細には織り込めないだろうと思います。

    (二度死ぬとは、どういうことだろう?)タイトルが気になりましたが、これはボンドの行動ではなく、彼(実際には著者)が芭蕉の俳句にならって詠んだ英文俳句からきているとのこと。
    そこからして、なかなか本格的に日本文化に踏み込もうとする気概が感じられます。

    まず彼が来日して落ち合う人物は、公安調査庁長官のタイガー田中。
    公安所属の特殊部隊が忍者というビックリ設定。
    ボンドに日本の風習を教える役で、悪人かと思いきやいい人でした。

    初来日のボンドは、芸者と杯を交わしたり、おっかなびっくりふぐや生きたエビを食べたり、海女とアワビとりをするなど、任務につくにあたってなかなか日本を楽しんでいます。

    日本にボンドの敵となるような「死の蒐集家」たる人物がいるのかと思いきや、隠れ住んでいる彼の敵だと判明。
    ほかの作品を読んでいないのでわかりませんでしたが、この悪役ブロフェルドは、かねてよりのボンドの宿敵で彼の妻を殺した人物だとのこと。
    自殺志願者を増やすという死神のような立ち回りです。
    日本人が悪役でなくて、よかったような物足りないような気分。

    ボンドは轟太郎という偽名で日本人に扮し、悪の城へと潜入します。英国人を日本人だと騙すことはできないだろうと思いますが、その辺はスルー。
    さらに彼は、習いたての忍術を使って素手で勝負していきます。
    なんとも呑みこみの早い人物です。
    忍者の格好で城に侵入するボンドが、日本の鎧をつけ刀を振るうブロフェルドと戦うというシーンは、真剣勝負ではあるものの、外国人同士で何をしているんだと、日本人ならば笑いたくなりますが、欧米人にはたまらないツボなんでしょう。

    007の息詰まる特殊任務が書かれていながらも、かなり日本文化紹介的な意味合いも強い作品。
    ボンドとタイガーのやり取りが比較文化的で面白く、これを見て日本びいきになる外国人も多かったことだろうと思いました。

    日本でのボンドガールは、海女さんというのも新鮮。
    海女とは、自他共に認める「海のジプシー」なんだそうな。その発想はありませんでした。
    それにしても、ヒロインのキッシーはなぜ海女なのに17歳でハリウッドデビューしてすぐ引退し、海女をやっているのか、設定が謎。
    英語がペラペラで物おじせず積極的。ボンドの子も身ごもります。

    電燈のスイッチ、ドアの取っ手、競馬の周り方など、すべて日本ではあべこべだ、という意見に、著者の観察眼を感じました。
    日本の伝統をおもしろおかしく書いているわけではなく、きちんと敬意を払って綿密な下調べの上に書き連ねたものだということがわかります。

    日本では自殺が多いということまで調べ上げたのでしょう。
    それがベースになっている今回の難題です。
    芭蕉への敬意も含まれており、歪みすぎた日本像が語られているわけではなかったので、楽しめました。
    それにしても、作中登場する日本のことわざ、もしくは芭蕉の作品だという『犬にはある程度の蚤は必要だ。蚤がいなくなると、犬は自分が犬だということまで忘れてしまう』という言葉の出典は、どうやったら探せるものでしょうか。

  • 日本が舞台。

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