ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 24-4)
- 早川書房 (2010年4月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151767043
作品紹介・あらすじ
「あの子を見つけた」大怪我を負った男はジョニーに告げた。「やつが戻ってくる。逃げろ」少年は全速力で駆けた。男の正体は分からない。だがきっと妹を発見したのだ。アリッサは生きているのだ。ジョニーはそう確信する。一方、刑事ハントは事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚を追っていた。この巨人の周辺からは、数々の死体が…。ミステリ界の新帝王が放つ傑作長篇。早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。
感想・レビュー・書評
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えーーーー。
なにその悲惨な秘密ーーー。
ジョニーのこれからの人生が笑顔が絶えないものになりますように。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
妹アリッサの誘拐事件から、父親の失踪、母親の薬物依存、地元名士の母親への執着等で、ジョニー少年は最低辺の生活を強いられる。
そんな中でもジョニーはあきらめる事無く一人で妹を探し続ける。妹さえ見つかれば家庭が元通りになると信じながら・・・。
話はジョニーの視点と、ジョニーの理解者で、母親キャサリンへ淡い恋心を抱いているハント刑事の2つの視点から話が進んでいく。
ジョニーはひたすら自分一人で事件を解決すべく動くが、協力を仰ぐのは唯一親友のジャックだけ。大人に反抗するというよりも、自分だけを頼みにして孤独な戦いをしていきます。
ただ、ハントの存在が無ければ決してジョニーも先へは進めない、このタフで心優しい正義漢は、自分の立場も顧みずにひたすらジョニー、キャサリンの為に息の詰まるような人間関係を掻き分けて突進していく。何も信じられないこの話の中で唯一の光といってもいい存在で、病み切ったアメリカの中でこうありたいと思う理想の男像のような気がする。けれどアメリカ人に知り合いいないので、心の中のアメリカーナに聞いてみました。
内容的には是非読んで確認して貰いたいけれども、この小説はとにかく面白いです。間延びする瞬間が全くなく、ひたすら目が離せない状態で最後まで進みます。途中妹失踪の真相の部分など集中しすぎて変な声が出てしまい家族から不審がられました。
優秀なバイプレイヤーの黒人の大男も神託を授ける堂々たる役割を果たし、話に神秘性を与えるための重要存在として登場します。
盛り沢山の話でありながら印象的にはとてもわかりやすく感情移入して読めます。訳がいいのかもしれませんが、登場人物の行動がとても人間的です。
最後のジョニーとジャックの友情に一番胸をえぐられました。なんでえぐられたかって?それは読んで確認すること!お兄さんとの約束だ! -
アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『ラスト・チャイルド〈上〉〈下〉(原題:The Last Child)』を読みました。
『川は静かに流れ』に続き、「ジョン・ハート」の作品です。
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早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞受賞。
〈上〉
少年「ジョニー」の人生はある事件を境に一変した。
優しい両親と瓜二つのふたごの妹「アリッサ」と平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。
その後まもなく父が謎の失踪を遂げ、母は薬物に溺れるように……。
少年の家族は完全に崩壊した。
だが彼はくじけない。ただひたすら家族の再生を信じ、親友と共に妹の行方を探し続ける。
〈下〉
「あの子を見つけた」大怪我を負った男は「ジョニー」に告げた。
「やつが戻ってくる。逃げろ」少年は全速力で駆けた。
男の正体は分からない。
だがきっと妹を発見したのだ。
「アリッサ」は生きているのだ。
「ジョニー」はそう確信する。
一方、刑事「ハント」は事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚を追っていた。
この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
ミステリ界の新帝王が放つ傑作長篇。
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2009年(平成21年)に発表された「ジョン・ハート」の第3作で、同年の英国推理作家協会賞(イアン・フレミング・スチール・ダガー賞)や翌年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
13歳の少年「ジョニー・メリモン」は、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた… 彼は、一年前に誘拐された双子の妹「アリッサ」の行方を探しているのだ、、、
美しい少女だった「アリッサ」は何者かに連れ去られたが、警察はいまだ何の手がかりも発見できずにいた… 「ジョニー」の父親も、「アリッサ」が誘拐されてまもなく謎の失踪を遂げていた。
母「キャサリン」は、土地の有力者「ホロウェイ」の愛人になり薬物に溺れ薬漬けの毎日を送っており、「ジョニー」の家族は完全に崩壊していた… 「ジョニー」は学校を頻繁にさぼり、友だちの「ジャック」の手を借りつつ昼夜を問わない危険な調査にのめり込んだ… ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って――。
「キャサリン」に好意を抱き、「ジョニー」を気遣う刑事の「ハント」は、事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚「リーヴァイ・フリーマントル」を追っていたが、この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
面白かった! 久しぶりの感動作です… ひとつの事件ではなく、異なる複数の事件が絡んだ意外な真相が待ち受けているミステリとしても愉しめ、崩壊した家族を再生させようとする少年の成長を描いたヒューマンドラマとしても愉しめる作品でした、、、
誘拐された妹を果敢に探しながら、愛する母親を愛人と薬から取り返そうと、懸命に行動する「ジョニー」に気持ちをシンクロしながら読みました… 少年モノには弱いんですよねー
決してハッピーエンドではなく、主人公の「ジョニー」にも、刑事の「ハント」にも、過酷な現実が突き付けられる結末でしたが… それでも、救済や赦しが得られ、未来への灯を感じさせられ、家族の再生を期待できる深い余韻の残るエンディング、一度は友情が決裂した「ジョニー」と「ジャック」が仲直りする清々しい展開も良かった、、、
そして、「ジョニー」と「リーヴァイ・フリーマントル」との出会い、「メリモン家」と「フリーマントル家」の先々代の関係等、奇蹟的・運命的な出会いも巧く織り込んでありましたね… リアルな部分と神がかり的なファンタジックな部分のバランスが絶妙だったのも印象的でした。
700ページを超えるボリュームには感じられないくらい集中して一気に読みました… 今年イチバンの作品かな。 -
構成がうまい。一気読み。ジャックとジョニーがときどきごっちゃになるけどおすすめです。
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(上巻の感想と同一)森や川を描く冗長な場面も多く、なかなか読み進めることができなかったが、複雑なプロットで最後の謎解きには感心した。米国ミステリー全般にいえるが、銃が身近にある米国でないと成立しないストーリー。ジョニーの万能さとキャサリンの外見的魅力にリアリティが欠ける気がするが、米国文化を知らいないためかもしれない。
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アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞
英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞受賞
壮絶だけど話の内容はおもしろかった。
外国語小説だからか、聞きなれない物の言い表し方がところどころあり、言葉が美しく素敵だなと思った。
ドラッグが身近だったり、危険な集落があったり、宗教色が強かったりして、日本とは違う境遇の中、友情、家族との諍いや赦しなど様々なテーマがあって読み応えがある。
13歳の少年が一人で事件を調べたり、車を運転したり、知識が豊富なことには無理を感じるけど、話の展開に引き込まれて読み耽り、最後は心地よく終わった。 -
後半になると
一気に読んだ
止まらなかった
彼の一途さ
彼の思い
届かなかった事
ラスト・チャイルドは・・・ -
こんな面白い本に出会えるから、読書はやめられないと思います。
主人公の一途さ、広げられたストーリーが最後に1つに収斂されていく。
結末のせつなさと希望から、気持ち良い読後感に繋がった。
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途中でやめなくてよかった。
上巻は暗くしつこく謎ばかりで、楽しい読書とは言えなかったが、手は止まらなかった。
下巻に入って、溢れ出るように事件が動く。
そして最後、全貌が明らかになると上巻から続いていた「暗くしつこい」描写とつながっていく……。
繕おうとすればするほど壊れていく家族と友情は、苦痛を伴いながら針の穴ほどの光を灯し、エンディングを迎える。
700ページの読書が報われた瞬間でした。
もうひとつ、
ネイティブ・アメリカンの血を引く謎の人物が、不思議なところで事件に関わっていく。それが謎を明らかにする鍵となるのだが、解剖医が最後に語った「説明のつかないこと」は、全ての解明を拒否する力を漂わせる。
「ラスト・チャイルド」の意味もまた、ひとつではなかった。