アイアン・ハウス (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
4.02
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151767067

作品紹介・あらすじ

マイケルは作家として成功を収めたジュリアンとの再会を果たす。だが、弟は深く心を病んでいた。孤児院アイアン・ハウスでの忌まわしい記憶にいまだ取り憑かれているのか。しかも、ギャングの魔の手が迫るなか、弟を養子にした上院議員の邸宅の敷地で無残な死体が見つかる。それは孤児院でジュリアンを虐めていた連中の一人の成れの果てだった。まさか、弟が犯人なのか…。交錯する謎が新たな謎を呼ぶ!著者の新境地。

感想・レビュー・書評

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  • さすがジョン・ハート。期待通りのアクションエンターテイメントミステリーだった。

    主人公マイケルは引退しようとしている殺し屋、彼にまつわる人々との友情愛情の描写一つ一つが家族について色々と考えさせられる。凄惨なシーンも多い(ジョン・ハート作品の中でも多い方ではないだろうか?)が、目を覆いたくなるほど傷ついた彼らが見せる自分以外を気遣うシーンは、訴えかけるものがストレートに伝わってきて心が痛いくらいである。

    マイケル、恋人エレナ、その弟ジュリアン、義母アビゲイルと主要登場人物はみな個性が際立っていていい仕事をするのだが、特にジュサップがすごくいい。ストイックでミニマリストでフィジカルもメンタルも鍛えぬいている彼が、後半弱さを見せてしまう。それまでのジュサップが完璧すぎるだけに、そのシーンがとても印象的で引き込まれるのだ。こういう男に俺もなりたい!

    これで、ジョン・ハートの既出作品は全て読了してしまった。次回作の出版と翻訳を切に望む。ほんま早く読みたいぞ!

  • 正直評価に困る。上巻は星五つで傑作の予感すらあったのだが、下巻の後半から急降下。そんなこんなで諸々が相殺されて結局こういう評価に落ち着いたのだが…。

    今回のテーマは親子ではなく兄弟。いつものハート節は鳴りを潜め、サスペンス色を前面に出したスピードある展開で一気に駆けて行く。端々でのざっくり感はあるものの、ハートのサスペンスもなかなか面白いなと後半に期待してると、急カーブで景色がガラッと変わってくる。

    物語としては徐々に破綻してくるのだが、色んな不良箇所をごった煮して、家族というテーマで料理してしまう手腕はあざといのか鮮やかなのか、もう何が何だかよくわからない。ある程度の速度を保ちつつも、それぞれの立場から見た人生観は読み手に充分伝わってくると思う。

    過去を乗り越える過程で得たものと失ったもの、そして忘れてきたもの──荒業的な伏線回収でも心に響く余韻は残る。ストーリーを貫く直線はそこに向かっていたんだなと、まあ何となく清清しい終焉ではあった。ハート作の特徴を踏まえた上で読んでほしい秀作。

  • アメリカだなあ

  • これだけのことをして捜査終了なのか感はあるが。

  • (上巻より)

    弟を養子にしたのは上院議員夫妻だが、
    上院議員のもつ権力がものすごい強大に描かれている。
    違和感を感じるのは、アメリカの現実を知らないからなのか。

    いくら昔酷いいじめをしたとしても、
    息子を守るためだったとしても、
    何人も人を殺したことがなかったことのようにされているのは、
    いかがなものかと思うが、
    それでも読後感が悪くないのも不思議だ。

  • いやぁ〜、最後の最後まで読ませるナァ。面白かった。

  • アイアン・ハウス (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 大好きだったパーカー亡き今、いちばん好きな作家と言えるかもしれません。
    冒頭から勢いよく、しかも丁寧に描かれるストーリー、そして終盤では私は大泣きの心の救済と、ハッピーエンド。
    こんなに早く読み終わりたくなかった…。
    うまく魅力を書けない自分がもどかしいぐらい、本当におススメの作家です!!

  • 面白い。上下セットで100円で買ったが、こんなにコスパのいい買い物はありえない。
    繋がりの薄いようないくつかの要素が終盤に向けて収束していく構成や家族、血をめぐるテーマは他作品と共通するところだが、今作は主人公が凄腕の殺し屋ということで、あまり活字でそういう種類のものを読んだことがなかったので不安もあったのですが序盤はほんと良作アクション映画を観ているようでハラハラしましたし、終盤はミステリーの面白さや家族というテーマの掘り下げに引き込まれと、著者と翻訳者の力量やはり高い。オチの部分で一つ個人的に大嫌いなことやっているのに、まあいっかと思えるほどに別の部分で感動や高揚を味わえました。

  • アイアンマウンテンの奥深く、朽ちかけた少年保護施設に兄弟はいた。
    殺伐とした子供社会の中では弱い者は食い荒らされるだけ、兄マイケルは牙を磨き、弟ジュリアンは空想の世界へ逃避した。
    時は経ち兄はギャングの凄腕の殺し屋として組織に君臨、弟は養子に貰われた後、一部で熱狂的な支持を受ける絵本作家となった

    兄は恋人の妊娠を機に組織からの脱退を申し入れるが受け入れられず、ある時恋人の働くレストランが爆破、銃撃を受け多数の死傷者を出す。
    逃亡する最中、組織のボスから弟を殺すと脅迫を受ける。
    弟とは20数年会っていない。でも俺にはいつまでも大事な弟なんだ・・・。

    上巻より

    下巻では

    マイケルはジュリアンを養子として引き取った上院議員夫妻の元を訪ねるが、ジュリアンは何らかの理由で精神を病みまともな会話が出来なくなっていた。彼を愛する養母と、冷淡な養父。敷地にある池からは次々に死体が発見される。それはかつて、アイアンマウンテンでジュリアンに酷い心の傷を付けた少年たちの変わり果てた姿だった。この地で一体何が起こっているのか・・・・。

    主人公に殺し屋を持って来ているのに、ピカレスクではなくマイケルにきっちり感情移入させる所にジョンハートの手腕を感じた。マイケルはプロの殺し屋で、必要と思った時には躊躇しないし、感情に流される事はない。けれども、恋人へは持った事の無い暖かい家庭を夢想し限りなく優しく、弟は自分が守らなければならいという責任感に溢れている。ある意味都合のよいヒーローと言えるかもしれないけれど、男としては憧れる男性像だと思う。

    貧困の中で見捨てられた兄弟。彼らの生きる道は選んだものではなく押し付けられたものだった。どんな罪を犯しても生き延びねばならなかった少年たち。持っていたのはすり減らした心と、いつか満たされるのではないかと渇望する空っぽの愛情の壺だけだった・・・。

    とても心に残る話だった。

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著者プロフィール

1965年、ノース・カロライナ州生まれ。ミステリ界の「新帝王」と呼ばれる。2006年に北米最高のミステリ賞であるアメリカ探偵作家クラブ(エドガー)賞最優秀新人賞候補作『キングの死』で華々しくデビュー。その後、2007年発表の第二長篇『川は静かに流れ』で、同賞の最優秀長篇賞に輝いた。2009年の第三長篇『ラスト・チャイルド』は、エドガー賞最優秀長篇賞および英国推理作家協会(CWA)賞最優秀スリラー賞をダブル受賞。エドガー賞最優秀長篇賞を二年連続で受賞した唯一の作家となる
『終わりなき道 下 ハヤカワ・ミステリ文庫』より

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