- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151767067
作品紹介・あらすじ
マイケルは作家として成功を収めたジュリアンとの再会を果たす。だが、弟は深く心を病んでいた。孤児院アイアン・ハウスでの忌まわしい記憶にいまだ取り憑かれているのか。しかも、ギャングの魔の手が迫るなか、弟を養子にした上院議員の邸宅の敷地で無残な死体が見つかる。それは孤児院でジュリアンを虐めていた連中の一人の成れの果てだった。まさか、弟が犯人なのか…。交錯する謎が新たな謎を呼ぶ!著者の新境地。
感想・レビュー・書評
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正直評価に困る。上巻は星五つで傑作の予感すらあったのだが、下巻の後半から急降下。そんなこんなで諸々が相殺されて結局こういう評価に落ち着いたのだが…。
今回のテーマは親子ではなく兄弟。いつものハート節は鳴りを潜め、サスペンス色を前面に出したスピードある展開で一気に駆けて行く。端々でのざっくり感はあるものの、ハートのサスペンスもなかなか面白いなと後半に期待してると、急カーブで景色がガラッと変わってくる。
物語としては徐々に破綻してくるのだが、色んな不良箇所をごった煮して、家族というテーマで料理してしまう手腕はあざといのか鮮やかなのか、もう何が何だかよくわからない。ある程度の速度を保ちつつも、それぞれの立場から見た人生観は読み手に充分伝わってくると思う。
過去を乗り越える過程で得たものと失ったもの、そして忘れてきたもの──荒業的な伏線回収でも心に響く余韻は残る。ストーリーを貫く直線はそこに向かっていたんだなと、まあ何となく清清しい終焉ではあった。ハート作の特徴を踏まえた上で読んでほしい秀作。 -
アメリカだなあ
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これだけのことをして捜査終了なのか感はあるが。
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いやぁ〜、最後の最後まで読ませるナァ。面白かった。
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アイアン・ハウス (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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面白い。上下セットで100円で買ったが、こんなにコスパのいい買い物はありえない。
繋がりの薄いようないくつかの要素が終盤に向けて収束していく構成や家族、血をめぐるテーマは他作品と共通するところだが、今作は主人公が凄腕の殺し屋ということで、あまり活字でそういう種類のものを読んだことがなかったので不安もあったのですが序盤はほんと良作アクション映画を観ているようでハラハラしましたし、終盤はミステリーの面白さや家族というテーマの掘り下げに引き込まれと、著者と翻訳者の力量やはり高い。オチの部分で一つ個人的に大嫌いなことやっているのに、まあいっかと思えるほどに別の部分で感動や高揚を味わえました。 -
アイアンマウンテンの奥深く、朽ちかけた少年保護施設に兄弟はいた。
殺伐とした子供社会の中では弱い者は食い荒らされるだけ、兄マイケルは牙を磨き、弟ジュリアンは空想の世界へ逃避した。
時は経ち兄はギャングの凄腕の殺し屋として組織に君臨、弟は養子に貰われた後、一部で熱狂的な支持を受ける絵本作家となった
兄は恋人の妊娠を機に組織からの脱退を申し入れるが受け入れられず、ある時恋人の働くレストランが爆破、銃撃を受け多数の死傷者を出す。
逃亡する最中、組織のボスから弟を殺すと脅迫を受ける。
弟とは20数年会っていない。でも俺にはいつまでも大事な弟なんだ・・・。
上巻より
下巻では
マイケルはジュリアンを養子として引き取った上院議員夫妻の元を訪ねるが、ジュリアンは何らかの理由で精神を病みまともな会話が出来なくなっていた。彼を愛する養母と、冷淡な養父。敷地にある池からは次々に死体が発見される。それはかつて、アイアンマウンテンでジュリアンに酷い心の傷を付けた少年たちの変わり果てた姿だった。この地で一体何が起こっているのか・・・・。
主人公に殺し屋を持って来ているのに、ピカレスクではなくマイケルにきっちり感情移入させる所にジョンハートの手腕を感じた。マイケルはプロの殺し屋で、必要と思った時には躊躇しないし、感情に流される事はない。けれども、恋人へは持った事の無い暖かい家庭を夢想し限りなく優しく、弟は自分が守らなければならいという責任感に溢れている。ある意味都合のよいヒーローと言えるかもしれないけれど、男としては憧れる男性像だと思う。
貧困の中で見捨てられた兄弟。彼らの生きる道は選んだものではなく押し付けられたものだった。どんな罪を犯しても生き延びねばならなかった少年たち。持っていたのはすり減らした心と、いつか満たされるのではないかと渇望する空っぽの愛情の壺だけだった・・・。
とても心に残る話だった。