太陽王の使者

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152082138

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  • ルイ14世が、エチオピアにあるアビシニア帝国に、カイロのフランス大使館を通じてCharles Poncetという名の医師を使者として送ったという史実を元に、自由広大な想像力を疾駆して書かれた、フランスと北アフリカを駆け巡る歴史冒険小説。

    恵まれない境遇に生まれ、6歳のときに薬剤師の下へ奉公に出されてから、自分の才覚のみで、薬剤師としての技術を身につけたものの、医師としての資格がないため、ヨーロッパを追われ、北アフリカの各地を転々とし、カイロにたどり着いたJean-Baptiste Poncet。
    この主人公、礼儀作法や身なりには無頓着、正義感があり、身分、富で人を区別することなく、だれにも同様な態度で接し、貧乏人には、無料で治療をほどこす、赤ひげのようなキップのいい、大変魅力的な人物として描かれているので、自然と、彼に感動移入してしまい、おしまいのページまで、ストーリーに引っ張り込まれてしまいました。
    そして、主人公だけでなく、彼を取り巻く登場のキャラクター設定も良く出来ています。
    プロテスタントであるため、迫害を受け、色々な職業を経験した末、カイロまで逃げてきた、一本木で、口の悪い、Poncetの親友、Juremi、
    吝嗇で、思いやりに欠けているけれど、自分の保身にかけては、妙に知恵が働くカイロのフランス大使、M . de Maillé、
    異教徒を憎悪する、狂信的なイエズス会の神父達、
    利益を得ることを第一に考え行動する、狡すからい商人、
    愛を貫くために、知恵をしぼり、自らの手で、障害を越えてゆく強い意志を持ったAlix de Maillé、
    Alix を陰から助ける、奔放な愛の経験のあるFrançoise、
    等の多彩な人々が登場し、心躍る歴史冒険物語を繰り広げて行きます。

    残酷な風習のため、野蛮な民族のように見える、アビシニア皇帝やカイロのパシャの賢知ぶり、そして、それと対照的な、洗練されているように見えるけれど、実は、滑稽なほど、お馬鹿で卑小なルイ14世を初めとしたフランスの権力者達の姿や、事実を自分達の都合のいいように押し曲げてそれを通してしまう、腹黒い王を取り巻く人々の姿を浮き彫りにしながら、外交政治の複雑さを読者の前に紐解いて見せます。
    自分達の信仰や、文明を至高と思い込み、異国の人々に押し付ける事により、どれほど失うものが多い事かを読者に語りかけると同時に、異文化との接触を、征服という形でしか、考えられなかった権力者への、強烈な批判を投げかけます。
    そんな、ただの娯楽小説とは、一線を画している、芯のあるエンターテイメント歴史小説でした。 エンターテイメントとしてのツボをしっかり押さえて書かれている上、著者の凛とした価値観が背骨のように、作品全体を貫き、支えているので、ただのエンターテイメント小説にない、深みのある、処女作だとは、信じがたい程、完成されている小説です。

    本レビューは、以前ブログ(http://lireenfete.blog27.fc2.com/blog-entry-516.html)にアップした、「L'Abyssin」のレビューを元にしています。邦訳は未読

  • 17世紀末のフランス、エジプト、エチオピアを舞台とした歴史小説。フランス王の使節として、ひょんなことからエジプトの闇医者ポンセがエチオピアへ赴くことになる。
    主人公ポンセの冒険譚を中心に、恋愛や陰謀などの要素がそれを盛り立てていて純粋に面白い。人物造形も魅力的。また当時のヨーロッパから見たエチオピア、エチオピアから見たヨーロッパのイメージも垣間見られる。
    歴史小説としても娯楽小説としても高い水準にあると思う。

  • 壮大な冒険譚。

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