機械じかけの猫 (下)

  • 早川書房
3.50
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152082954

作品紹介・あらすじ

自閉症と診断された九歳の少年コナーは、ぬいぐるみの猫を決して手放さず、奇妙な言葉をつぶやく。やがてその言葉は、彼の母親の恐ろしい過去を掘り起こしていく…圧倒的筆致で贈る驚愕の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。これを読む前にたまたまトリイの対談の本「子ども達は、今」という本を読んでいたんだけど、その内容とリンクしていた。トリイ自身の生い立ちともつながるところがあるのかも。想像力が人を救うこともあれば、壊すこともあるのか。その違いは、線引きはどこなのか?というような話...だと思う。

  • 作中劇(?)の部分が面白かった。ノンフィクションと違ってしっかりとした結末があるので、やっぱり小説のほうが好きだ。

  • ヘイデンさんの『シーラという子』などのノンフィクションとは感じのずいぶん違う作品だった。 登場人物一人一人に魅力があって、一気に読めたが、何故か記憶に残ったのは一部分だけ。 ノンフィクションのシリーズが印象強いせいかもしれない。

  • 面白かった。最後まで読むと話が繋がって行く。たぶん、こうなるんだろうなーという予想はしてた。その予想通りに物語は進んだのはちょっとつまらない。
    と思ったけれど、別のストーリーラインで以外な終わり方になった。



    そんなわけでネタバレ。無駄に長い。







    上巻の感想でも書いたかもしれないけれど、再び書く。
    主人公は精神科医ジェームズ患者はコナーという男の子。コナーの母親のローラ。
    コナーの妹のモーガナ。ローラの頭の中のトーゴン。
    さらに下巻では
    ローラの恋人(?)ファーガスが登場する。

    話は上巻と同じような感じで進む。



    現在の話。
    ・コナーのセッション
    ・モーガナのセッション
    ……時々二人まとめてのセッション

    ・ローラの過去話。
    下巻では主にファーガスの話がメイン

    ・ローラの頭の中のトーゴンの世界『森』



    この3つが入り乱れて進む。



    他の人のレビューを見ていると、『判らない』というのを見かけた。確かに、この3つが入り乱れていると、話が分かりずらい。

    まず、現在の話。
    ・コナーのセッション
    これは上巻も下巻もあまり変わらない。コナーはあまり話さない。それが少しだけ話すようになって「男の人の幽霊が居る(と思ってる)」という事が判る。
    この点だけ頭に残しておけば、問題はない。

    ・モーガナのセッション
    これはほとんど頭に残さなくていいと思う。
    最後のどんでん返し(?)みたいなもののために、書かれてるだけで話の筋を捉えるためにはほとんど必要ではない。

    ・ローラの頭の中のトーゴンの世界『森』
    これは私の好みで、とても好きだったのだけれども……。物語だけを追うのならば、需要度は下がる。

    ・ローラの過去話
    上巻では子供時代の話が書かれていた。下巻では恋人ファーガスとのやり取りが続いていく。

    物語を追うのならば、この過去話が一番重要だと思う。
    物語を追うだけならば、『ローラの過去話(特にファーガスとの話)』にコナーのセッションだけで事が済む。『森』の話もモーガナの話も物語の大きな筋には関係が無い。



    悪く言えば、詰め込みすぎな話だと思う。あれもこれも書きたくて詰め込んだらこうなった……みたいな。

    もしくは、テーマを『現実とは何か』にした結果、『想像の産物』を組み込んで、そこにさらにサスペンス仕立ての謎を突っ込んだらこうなったみたいな。



    この話は二つに分かれてしまう。
    「コナーは何を知っているのか?」「モーガナは誰と遊んでるのか?」

    という謎にそれぞれ

    「コナーは現実を知っている」「モーガナは想像の産物と遊んでいる」

    という全く別の回答が出てくる。


    物語のメインはコナーだと私は思う。
    コナーは最初から『現実(主人公たちがいる世界)』で起こる事を言っている。
    どんなに怪奇に聞こえても、コナーの言葉は全て『現実』を指している。けれども、それは誰にも信じてもらえない。
    それどころか、言葉にして誰かに伝えると「何を言ってるの?」「おかしい」と責められる。だからコナーは話さなくなり、自分の世界に閉じこもる。
    コナーは「じゅうたんのしたに男の人がいる」「幽霊がいる」という。

    それらは、最終的には事実だったと明かされる。
    母親(ローラ)が男(ファーガス)を殺し、捨てたのだ。コナーはそれを見ていて、知っていた。ローラはコナーが小さくて覚えてないと思っていた。



    ローラとファーガスの付き合いが過去編で語られている。……結構、うわぁぁぁぁ。と思ってしまう。いや。うん。心当たりがありすぎてね。チャネリングとか天の声とか。

    私はそこまでのめりこめなかったけれど、一時期そーいう世界を覗いてみた身としてはなんか「判る」みたいなものがあった。

    そして、ファーガスの性格……
    普通に考えたらただのストーカーなのに、それを「運命」とか言えるヤバさが怖かった。でも、最初はそれに気が付かないローラの気持ちも何か分かる。みたいな……

    色んな意味で「うわぁぁぁぁ」と思いながら読んでいた。



    ファーガスは結婚していても、ローラと付き合う。つまり、女なら誰でもいい……と普通は思う。というか、大半の女性がそう感じる。そして大半の女性は誰でもいいなら自分意外とどうぞと思う。けれど、ローラはファーガスと付き合う。
    そして、結婚している女性でも自分でもない、新しい若い女の子とくっついているのをみてショックを受ける。
    ……読んでいる読者としては想定範囲内の内容だ。
    そこで別れ話になるだろう……と思ったが、なぜかそれでも付き合い続ける。それもファーガスが「許してくれ」と言ったからだ。
    ファーガス、離婚したのか?という突っ込みはどこからも出てこない。

    さらには、結婚し子供までいるローラをファーガスは執拗に追いかける。……いや。だから、奥さんどーした?さすがに嫌気がさして離婚になったのだろうか?と思うけれど、そんな話は一切出てこない。

    トーゴンの話をあれだけ丁寧に書くのなら、ファーガスの奥さんの話ももう少しだけ出してほしい。そんなわけで(?)ローラはファーガスに襲われて、その恐怖でローラはファーガスを殺してしまう。



    ……というのが物語の核だと思う。

    トーゴンの話と絡めるのならば、トーゴンも男に襲われてその男を殺す。というような点はあるけれど、
    トーゴンが殺したから、ローラも殺したのか?と考えるとそれもちょっと違う気がする。
    ローラにトーゴンがいなく(感じなく)ても、ローラはファーガスを殺していただろうと思うから。



    物語は「コナーの意味不明な言動は、母親のローラがファーガスの殺人を見たせいで起きた」という、とても単純な筋だと思う。



    が、ここに物語のテーマ

    「現実とは何か」を突っ込むと、上記の物語の筋は脇に追いやられる。
    コナーもローラも物語の序章でしかない。
    物語のテーマを真ん中に持ってくると、メインに来るのは
    「襲われた男との間に授かった子供たち」になる。
    トーゴンの子供と、ローラの子供モーガナ。



    トーゴンの子供は「ラー、グレート・キャット」
    ローラの子供は「モーガナ」

    モーガナはローラ夫婦の子供ではなくて、ファーガスとの子供。
    で、最後の最後に実はこの二人が「遊んでいた」という事が暴露される。

    さて、トーゴンの話は本当に『ただの想像の産物』だったのか?

    という疑問で物語は終わる。



    トーゴンの子供の名前を忘れていたりすると、最後は意味不明になってしまう。
    なぜモーガナが「ライオンキング」と言っていたのかと言えば、たぶんイメージでのやり取りだからではないのかな?と推測する。

    『グレートキャット』というものがモーガナには「ライオン」をイメージさせたから、「ライオンキング」になったのでは?と。



    コナーは現実(主人公たちが存在している世界)の子供だ。
    なぜなら、コナーの父親はとても現実的に物事を考える。その性格を真っすぐに受け継いでいる。だからこそ、現実の事しか言わない。そして、現実のことを言っているのに、否定されてしまった。

    コナーには適切な言葉を選ぶ能力が少しだけ足りなかったのかもしれないが、否定された故に世界は閉じてしまった。



    一方、モーガナは想像力豊かなローラとチャネリング能力のあるファーガスとの子供。モーガナは現実に存在していながら、向こう側(『森』の世界)を垣間見ている。けれど、それを「言ってはいけない事」だと理解している。だから、普通の子供として存在している。



    さて、『現実』とは何か?想像力で見える世界は、いったい何なのか?モーガナは誰と遊んでいるのか?



    現実の事を話したコナーは現実を拒絶して、想像(『森』の事)を話さないモーガナは現実を受け入れている。という対比を表しているんだろうなーとは思う。

    ただ……その対比のために物語が膨らみすぎていて、疲れた。
    ストーリーラインはなるべく一つの方が読みやすい。



    タイトルの「機械じかけの猫」はコナーが現実とつながる唯一の手段として出てくる。読み終わると、これもまたチャネリングの一種なのでは?と思ってしまう。コナーは機械じかけの猫(ぬいぐるみや厚紙の猫)を通して、現実に触れる。そうやって現実に合わせる機械(もの)がなければ、現実の世界に居られないくらい現実を拒否していた(もしくは、現実に拒否されていると思っていた)のでは?

    コナーが現実を拒否したのは想像の世界が存在しなかったからだ。だからこそ、現実に感覚を合わせるものが必要で、それが「機械じかけの猫」だった。だとするのなら、【想像】は現実に感覚を合わせる「機械じかけの猫」になるのかな。

    と、いろんな事を考える。……考えて書いていたら、長くなったのでこの辺りで終わり。


    と思ったけれど、最後に気になった文章を。

    『わたしはここにいて、日に百万回もトーゴンの名前を口にしているのに、それなのに本物のトーゴンはもはやそこにいないのだということをわかっていすらいなかったのだ。

    (略)

    いずれそうなると父がいっていたようなことが、わたしにも起こったのだ。次にやってきたのは、ものすごい悲しみだった』



    なんとなく…判るような気もする。振り返った時、無くしたものを感じる。遠くまで来てしまったような……とてつもない寂しさと共に悲しみが襲う。当時は分からなかったことが分かってしまう。

    それは嬉しい事ではなくて、悲しい事だと思う。

  • 面白かったです。結末が全く予想できなかったし、どのジャンルとかカテゴリ分けもしにくいくらい独創的でトリイにしか書けないお話だと思いました。トリイのノンフィクション物も好きですが、こちらも退屈せず読めて本当に良かったです。もっと沢山書いてほしい。

  • 面白かった。ラストは蛇足では。

  • これでトリイ作品にはまった(´ω`)

  • 内容(「MARC」データベースより)
    自閉症と診断された9歳の少年コナーは、ぬいぐるみの猫を決して手放さず奇妙な言葉をつぶやく。その不可解な言葉は何を意味するのか。幼い心の叫びを圧倒的筆致で描く驚愕の物語。

  • 自閉症と診断された九歳の少年コナーは、
    ぬいぐるみの猫を決して手放さず、
    奇妙な言葉をつぶやく。
    やがてその言葉は、
    彼の母親の恐ろしい過去を掘り起こしていく…
    圧倒的筆致で贈る驚愕の物語

  • 小説書くより、実際受け持った生徒たちの話を読みたい。

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