- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152084446
作品紹介・あらすじ
三葉虫研究に賭けた古今の研究者のドラマティックなエピソードを満載しつつ、三葉虫研究の世界的権威がその愛着のおもむくまま、あらゆる側面からこの生きものを活写した決定版「三葉虫読本」。工芸品のように面白く珍しい化石写真も多数収録。
感想・レビュー・書評
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最初はただの三葉虫マニアの本かと思っていたが、地球史や生命進化の話、研究者のエピソードが満載でとても面白い。読んでいるとあたかも自分が三葉虫になって、その目を通して古生代の世界を眺めているかのような錯覚を覚える。
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780夜
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「14歳のときに三葉虫と恋におちた」と言い切る「三葉虫中心主義的世界観」を持つフォーティの名著と言っていいと思います。さまざまな形態を持つ三葉虫の魅力とその役割などが、適度なユーモアを交えながら展開されてゆきます。
グールドの断続平衡説に対する考えも興味深いものがありました。 -
ジャケ買いみたいなもので、この三葉虫の絵だけで買う気になった。三葉虫。わお。
更に買う気にさせたのが丸まっている三葉虫の化石の写真。むぎゅっ。三葉虫は丸まるのだ。
グールドの「ワンダフル・ライフ」に対する穏やかな殺し方もいい。いや、彼はグールドをいじめる気はないし、私はグールドの著作が好きだ。とはいえ、「ワンダフル・ライフ」は調子にのり過ぎだった。刊行直後に本の中に登場した生物のひとつが天地逆だったと判ったという話に象徴されるように、バージェス頁岩に浮れてしまった感じだった。それをたしなめるような書き方。
しかし、文章としてはちょっと退屈だ。翻訳者はもっと省けないのかな、なんて思ったに違いない。イギリス風の持って回った表現が辛い。文学風にしようという努力も辛い。三葉虫の目の進化とデザインの幅を元に進化の目撃者として彼らを扱い、その反映として古生物学者を捕らえる、という手法ははっきり言って機能しそこなっている。おかげで実に長い時間がかかった。文章はもっと綺麗に作ってほしい。さて。
この本は古生物学の話をしながら、科学とは何か、というところまできっちり書いている。しかも、古生物学者らしく、昔からの科学のつながりの書き方がいい。前任者がいて、自分がいる。科学とはノーベル賞ではなく、過去の先達の総体なのだ、ということ。ノーベル賞に浮れているこの国の姿を見ながら、本当の科学の姿を見た気がした。
賛否いろいろあるが、個人的にこの本は好きだ。著者の科学に対する態度が好きだ。何より、彼がとっても素直な人だ、というのが判る。そんなの滅多にないことだ。