- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091512
作品紹介・あらすじ
1940年代、次第に狂気を暴走させるナチスドイツ。SS将校アルベルトはユダヤ人虐殺部隊と怖れられた特別行動隊の任務に赴き、この世の地獄を見る。一方、司祭を志していたマティアスも衛生兵として召集された前線で、自らの無力を噛みしめていた。地獄の底で再会した二人は、思わぬ共通の目的の下、ローマを目指す。その先に待つのは、絶望か、希望か。心を揺さぶる衝撃の結末が待つ歴史ロマン巨篇完結。
感想・レビュー・書評
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そこひっくり返してきましたか
いやいやとても完成度の高い作品でした
しかしながらやはり読んでいて気になったのは
果たして須賀しのぶさんは宗教に対して肯定的なのか否定的なのかあるいは中立なのかというところでした
自分が感じたのはその3方向それぞれに揺れ動いているような感じです
ちなみに中立というのは肯定と否定の間にあるわけではなくあくまで三角形のそれぞれの頂点というイメージです
そしてあの暗黒の時代に宗教(カソリックと限定してもいい)が果した役割とは何だっのか考えさせられます
そしてそれこそがこの作品の主題であることは『神の棘』という題名からも明らかなのではないでしょうか
自分自身は父親の葬式はお寺であげ、新年には神社に初詣に行き、クリスマスに浮かれる典型的な日本人で
神様の存在は自分にお願いごとがある時だけ湧いてくる人間です
なのであまり「神」という存在を真剣に考えたことはありませんが
もしあのユダヤ人の虐殺が『神の棘』だとしたら
そして命令されあるいはそれが正しいと信じさせられ虐殺に手を染めたことが『神の棘』だとしたら
そしてそれが「赦される」ためのものだとしたら
そりゃあないだろうと
それを納得できる精神構造こそ理解出来ません
また作中で宗教は常に敵役を求めているという記述があり
恐ろしいことですが少しだけなるほどと思うところがありました
悪魔がいなければ神も必要とされないということです
これは神が神として存在しうるために悪魔を生み出しているあるいは悪魔が生まれるのを歓迎しているともとれます
ならば今現実の世界で行われている悪魔の所業も神が用意した棘なのでしょうか
止められない私たちに刺さった棘も一緒にいつか赦されるのでしょうか詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
革命前夜の時にも思ったが、これだけのスケールこれだけの魅力的なキャラクターこれだけのストーリーで、感情的にもっと盛り上がりそうな気がするのだけど、物凄く抑制された美学、というか、読了後(ああ、そうだったのか)と静かな感動を与えてくれる大人な本(決してつまらないわけではない)でした。1巻でナチスドイツの将校のアルベルトに惹かれてはいけない、いけない!と思いながら読み進め、2巻でのまさかの展開に撃沈。いい男すぎる。(イルゼの告白がちょっとくどかった。)
須賀さんは1冊の中にその時代全て描き切ろうとするのか、背景の説明に多くページが取られてしまう気がする。-
「静かな感動」に、まさにその通りです…!といいねを押してしましました。
時代背景の描写が盛り沢山なせいか、読むのに時間もパワーも入りま...「静かな感動」に、まさにその通りです…!といいねを押してしましました。
時代背景の描写が盛り沢山なせいか、読むのに時間もパワーも入りますよね…!
こちらもフォローさせていただきました、読書の参考にさせていただきますね(*^_^*)2017/02/05
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面白かったー。読ませるなぁ。
ずっしりした内容だっただけに誤字だけほんと残念。
須賀さんの読みものだなぁとしみじみした。
『芙蓉千里』とかは少女小説の要素も強いと思うけど、
これはより全範囲をターゲットにしている。
こんなことが歴史の中であったのかと圧倒される。
アルベルトがナチスに入ったのが、ただたんに職業としての選択っていうのが意外だった。当時はその程度の認識だったんだろう。
だけどこんなに過酷なものに巻き込まれていく。
歴史には詳しくないけど人間の物語として飽きなかった。
というか、人間の物語が歴史なんだよなぁと。
キリスト教もナチスも怖い。
ラストに向かっていく中でどんどん本当が明らかになっていく。
溜め息出ちゃうような展開で。アルベルトが悲しすぎて。
このラストへ向かってミステリーの要素が強くて、
だからハヤカワから出ているのか、という感想を見てなるほど、と思った。 -
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「神の棘」「革命前夜」どちらもとてもいい本でしたよね。「また、桜の国で」も、もうすこし時間が経ったら読みたいと思っています。(須賀さんの本を...「神の棘」「革命前夜」どちらもとてもいい本でしたよね。「また、桜の国で」も、もうすこし時間が経ったら読みたいと思っています。(須賀さんの本を続けて読むのはパワーが要るので…)本棚を拝見させていただいて何冊か気になる本があったので、フォローさせて下さい。2017/02/04
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アルベルトは淡々と読者を欺いた。
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戦争の恐怖や愚かさが淡々と綴られている中で登場人物たちがどう考え、行動していったかが繊細に描かれていた。
是非最後のシーンは自分で読むべきものだと思う。