- Amazon.co.jp ・本 (516ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152092120
作品紹介・あらすじ
1860年、ヴィクトリア朝時代の英国。6月のある朝、のどかな村にたたずむ屋敷"ロード・ヒル・ハウス"の敷地で、当主の3歳の息子が惨殺死体となって発見された。殺された子どもは施錠された屋敷内にいたはずだった。犯人は家族か、使用人か?世間が注目するなか、捜査の任についたのはジョナサン・ウィッチャー警部。1842年にスコットランド・ヤード刑事課が創設された際に最初に刑事になった8人のうちのひとりで、ずばぬけた技量を持つ敏腕刑事である。優れた推理力をはたらかせ、事件の謎に迫るウィッチャー。しかし、非協力的な遺族や、プライバシー神聖視の風潮、加熱する報道、さらには刑事への偏見もあいまって、事件は数奇な道すじをたどる-ヴィクトリア朝英国を揺るがし、後に数々の探偵小説が生まれるもととなった幼児殺害事件の驚くべき真相とは。当時の特異な世相をも迫真の筆致で描き出す圧巻のノンフィクション。サミュエル・ジョンソン賞ほか受賞作。
感想・レビュー・書評
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ー 「detect(看破する、探偵をする)」という語は、ラテン語の「de-tegere」つまり「おおいをはがす(unroof)」に由来し、探偵(detective)のもともとの姿はユダヤの悪神アスモデ、家々の屋根をはがしてその中の生活をひそかにさぐる跛行の魔神だった。「魔神アスモデは観察する悪魔である」と、フランスの小説家ジュール・ジャナンは説く。ロード・ヒル殺人事件に関する著書のなかでステイプルトンは、ケント一家が暮らす家の「プライバシーをのぞき込む」アスモデの姿に模して、この事件への世間の熱中ぶりを表現した。
「家の中のどの部屋にもこっそりのぞいている者がいるとしたら、部屋は巡業博覧会などよりよほどおもしろい見世物になるだろう」と1861年に書いているのは、スコットランドの刑事マクレヴィだ。私服警官というのはまさに、そんなふうにこっそりのぞく者、のぞきを許可された者だった。探偵のヒーローも、いつなんどきもうひとりの自分、にやにや笑うのぞき魔の姿を現わすかわからない。 ー
最初は眠くなるような記述が多いけど、だんだん面白くなる。ノンフィクションなんだけど、ミステリー。
というより、探偵小説の原型にもなった実際の殺人事件。最後までめちゃくちゃ面白い。
探偵小説はあっさり事件を解決するけれど、現実ってこうだよな、と現実も見させられる。ある意味、簡単に結論に導いてくれるミステリーに甘やかされているのかもしれない。そんな気付きのある作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノンフィクション
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1860年にイギリスで起きた「ロード・ヒル・ハウス殺人事件」について書かれた本。英上流階級の屋内で子供が殺され、事件は迷宮入り。派遣された英国初の刑事(8人のうちの1人)がなぞを解いていくというもの。毎日、事件解明の進捗状況が新聞をにぎわせ、イギリス中で犯人当てクイズをやっているような状況となるほど話題性の高い事件となった。イギリスでの探偵小説人気のはしりとなった事件である。
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19世紀英国で実際に起きた幼児殺害事件の顛末を描いたノンフィクション。『月長石』はこの事件に刺激を受けて書かれたとのこと。お屋敷や関係者の写真を見てると、現実と虚構の境目がゆらぐみたいな不思議な感じがする。
『月長石』の執事さんたちがかかる「探偵熱」は微笑ましいのに、現実の人々の熱狂はとにかく恐ろしい……。義憤を建前にした憶測やら誹謗中傷やら、今の一部のネット界隈と変わらない気がする。 -
これは小説ではなくノン・フィクションである。それなのに上質な小説のような感じを受ける。ウィッチャー警部は首都圏警察の刑事。スコットランド・ヤードで発足した最初の刑事のうちの一人で優秀な刑事である。その彼がカントリー・ハウスで起こった幼児殺害事件の捜査に派遣された。この事件で彼は自分のキャリアに傷をつける。しかし、最後に行われた告白で彼の推理は正しかったことが証明された。
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1860年のイギリス。ある朝、のどかな村の屋敷で、殺された子どもの遺体が発見された。犯人は屋敷内にいた家族か、使用人か。
捜査の任についたジョナサン・ウィッチャー警部が、数々の探偵小説が生まれるきっかけとなった幼児殺害事件の真相に迫る。
当時の世相も盛り込みながら、臨場感あふれるノンフィクションです。 -
[ 内容 ]
1860年、ヴィクトリア朝時代の英国。
6月のある朝、のどかな村にたたずむ屋敷“ロード・ヒル・ハウス”の敷地で、当主の3歳の息子が惨殺死体となって発見された。
殺された子どもは施錠された屋敷内にいたはずだった。
犯人は家族か、使用人か?
世間が注目するなか、捜査の任についたのはジョナサン・ウィッチャー警部。
1842年にスコットランド・ヤード刑事課が創設された際に最初に刑事になった8人のうちのひとりで、ずばぬけた技量を持つ敏腕刑事である。
優れた推理力をはたらかせ、事件の謎に迫るウィッチャー。
しかし、非協力的な遺族や、プライバシー神聖視の風潮、加熱する報道、さらには刑事への偏見もあいまって、事件は数奇な道すじをたどる―ヴィクトリア朝英国を揺るがし、後に数々の探偵小説が生まれるもととなった幼児殺害事件の驚くべき真相とは。
当時の特異な世相をも迫真の筆致で描き出す圧巻のノンフィクション。
サミュエル・ジョンソン賞ほか受賞作。
[ 目次 ]
第1部 死(きっとあれに違いない;恐怖と驚き;神はこれをさぐり出さずにおかれるでしょうか ほか)
第2部 刑事(謎の男;糸口はみな断ち切れているらしい;彼女の浅黒いほおの中で、何かが ほか)
第3部 解明(渇望のごとく;狂っているほうがまし;わたしの愛は変わった ほか)
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
「最初の刑事」=「最初の探偵」として認知された刑事
が殺人事件と向き合ったのドキュメント。英国で50万部突破。厚みも十分あったが一気読みできるほど面白い。 -
ロード・ヒル殺人事件の著者自身の推理は「第20章 外の芝生から聞こえる草刈り鎌の音」で述べられていて、最後の「結び」では、ノンフィクションとしての総括にあたる部分とみるべきだろう。男の子は殺される直前に左手で自分の咽喉をかばっていたということを最後の最後に読者に突きつけることによって、この本が単なる謎解きに主眼を置くものではないと表明している。多くのミステリーファンがこの本を手に取ると思うが、探偵小説というものがどんなものかをあらためて思い知らされることになるはず。
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図書館で借りてきた本
1860年代 職業としての刑事が生まれて最初の8人のうちの一人が主人公のノンフィクション。150年前の話ですが古臭くなくかなり楽しめました。