マルチスピード化する世界の中で――途上国の躍進とグローバル経済の大転換
- 早川書房 (2011年10月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152092458
作品紹介・あらすじ
新たなるグローバル経済の全貌!ノーベル賞経済学者によるビジネスパーソン必読の書、ついに邦訳。
感想・レビュー・書評
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経済成長の源はイノベーション
知識移転と世界の障壁の消滅によって、発展途上国の経済発展が起きる
経済発展のためには教育とインフラ整備が必要不可欠
中所得国の罠は構造変化によって乗り越える必要がある
資源が豊かな国は擬似民主主義のため、経済が発展しない
中国とインドは、人口規模により低所得でありながら世界経済に存在感がある
先進国の雇用確保には、設備集約型の産業による雇用の創出が必要でありそれは、発展過程にある国の労働集約型産業とは競合しない詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2001年にノーベル賞を受賞した経済学者が、1950年以降に激変した世界経済の動きを詳細かつ俯瞰的に分析した上で、今後の先進国と新興国を含めた世界レベルの持続的な成長のために解決すべき課題とその手段を提言した一冊。
著者は世界銀行の「成長開発委員会」で委員長を務め、数々の新興国のリーダーと共に活動して得た知見から、今日の世界経済では、産業革命以降続く先進国中心の成長とともに、新興国における「包容性」のある成長、すなわち、分配の公平性に一定の配慮をした成長が進んでおり、その結果、一部の国のみに成長が偏る「乖離の時代」から「成長と収斂が同時進行する時代」にシフトしていると説く。
金融危機やネット革命、エネルギー・環境問題といった事象をマクロ経済の観点から紐解くと、益々複雑化する世界経済においては、より多くの変数を、より多元的な軸の中で、より動的にバランスを取ることが重要だとわかる。そしてそのためには先進国と新興国がこれまでとは異なる役割を果たす必要があるとの著者の主張は、アカデミックであると同時に実践的であり、説得力に溢れている。 -
IT化とグローバル化によって先進国の優位性が減って発展途上国間との格差は収斂しつつある、という内容。
しかし新興国の成長を阻害する要因は多い。
不完全な国際市場や金融制度、環境問題やガバナンスの問題など対処すべき問題はまだ残っている。
それらを国際社会が共同で協力して解決していかないといけないし、その道筋は先進国の力に拠ることが多いということも分かる。しかしなあ。。
最近のロシアやイスラム国の動きをみていると、経済より地政学的な要因や大国間の政治問題で経済活動が鈍り、世界経済が振り回される構図が見てとれる。
3年前の著書だし政治まで含めた長い射程がある内容じゃない。でも現状認識に役立つ一冊かも。 -
途上国に焦点を当て、経済成長がどのようなメカニズムで進むのかを解説し、グローバルな経済環境にどのような影響を及ぼすかを考え、成長が頭打ちとなった先進国の戦略転換をシュミレーションする一冊。
読むのに時間がかかってしまった。正直、ハードルが高くてついていけない部分もあった。それでも読み通せたのは、経済理論の翻訳としては珍しく、文章がとても読みやすかったため。内容を完全に理解していなければこの訳はできない。感心して訳者略歴を見ると、日本経済新聞の記者をやっていた人らしい……納得。
内容とは無関係だが、この本を読んでいて、途上国を昔は「後進国」と呼んでいたことを思い出した。最近めっきり聞かなくなった言葉だが、いまの日本ほどこの表現に当てはまる国家はないだろう。「後から進む国」ではなく、「後ろ向きに進む国」という意味でだ。震災や原発事故、欧米信用不安のとばっちり円高で、経済後退の引力は加速度的に増大している。そんな過酷な状況下、国民は前に向かって食うものも食わずに全力疾走している。なのに行政は、その場しのぎとパワーゲームと既得権益の維持に汲々として機能不全に陥っている……そんなふうに見えて仕方ない。 -
21世紀を代表する一冊(になるでしょう)。
とりあえず読んだ方がいいです。