三人の逞しい女

  • 早川書房
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本棚登録 : 202
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093134

作品紹介・あらすじ

〔仏最高峰ゴンクール賞受賞〕弁護士のノラは、長年会っていなかったアフリカ系の父のもとに帰郷するが、最愛の弟の姿が見えず……。アフリカからヨーロッパに渡ろうとするカディ・デンパは、数々の苦難に……。芥川賞作家の翻訳で贈る、フランス文学の極北!

感想・レビュー・書評

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  • 心理が多面的に作用し事実や現象は内面の後についてくる。この繊細な捉え方の文体が潔くスリルがあり興味深い。3つの話の繋がりも人格形成に関わる要素を紐付けし謎解きのように没頭した。難民の精神性には肉体の痛みが伴い胸を衝く。

  • 三人の女性(移民ルーツを持つ・難民)が緩やかに、恐らく時代を跨ぎながら、繋がっている。第一部は、その結末の曖昧さ、居心地の悪さに、これが二部三部と続くのか…という感じだった。が、第二部は、なんとか最後希望が見えてよかった。ルディだけが勝手にガンバルゾ!で終わらなかったところがなんだか少し意外で、でもホッとできた一編。第三部はかなりきつい。第一部で一瞬ながらもカディの若い頃のことを知っているから、次から次へと苦難に見舞われる彼女を追うのは辛いものがあった。有刺鉄線を上り、そして死を知覚する、その最後の瞬間まで言葉を尽くす文体は圧巻。カディの壮絶な亡命の旅は、繰り返すケガとその描写に代表されるように、時に非常にリアリスティックに立ち現れるが、大きな鳥の存在など何処か幻想的な雰囲気も漂う。現実的な政治性とは切り離せない冷静な眼差しで淡々と言葉を紡ぎながらも、現実と幻想の境が溶けていくような、唯一無二の文体に惹きつけられた。

  • フランスでトップともいえる文学賞 ゴンクール賞をゲットした秀作。
    初めて聞く名前だった。調べるとアフリカ(セネガル)とフランスの混血という出自。
    当作品も連作集というものの、緩やかに繋がっている感じがなくないといったところ。
    ノラ・ファンタ・カジ・デンバ~の3人の女がそれぞれにヒロインとなって生きていく姿を生き生きと描いている。

    読み始め、いま一つ乗れなかった。
    島国日本ではフランスのような移民社会とは全く異なり、各人の【多彩にまじりあう感情】【相互に、時には闘うことも辞さない日々の時間】を熟知の上で人生街道を闊歩、あるいはひたひたと歩いて行かねばならない。
    1話から、そういった社会の力学に圧倒され、もっとそういった社会を知っていかないといけないなと痛感した次第。

    2話も3話もアフリカと対峙する仏社会~時には神経質な、またある時は悲惨ないばらの道を歩く人生が語られていく。

    私からしたら、「これを逞しいというの?」と感じられずにはならなかった作品だった・・・が。
    訳者小野氏の弁による【正解など、どこにも見当たらない不確実、不可解な状況をひたすら耐え忍ぶ】態度・・・英国詩人キーンが言う消極的能力=逞しさ・・だと!




     

  • 読むのが辛い。
    濃密な混乱と悲しみの現実感の濃さ。
    ひとごとではない理不尽さが痛い。

    本当に読むのが辛く、飛ばしたり、でもまた戻ったりしつつ読みました。
    フランスの小説というものをあまり読んだことがないのですが、米英文学とはずいぶん違い、外国の小説なのにどこか日本純文学小説と似ていておどろきました。

  • 3つの作品だった。この作者の作品は2作読んでいて、もっと刊行されないかなー、筆が遅い人なんだなー、と思っていた所、実は多作な人で翻訳されてないだけだった。待ちに待った新作!かと思ったら10年前の作品。しかも重たい内容。多分フランス生まれの、セネガル人の父親を持つ彼女の、移民としての生活という、本筋から発生した物語であり、起源なんだけど、なかなか苦しい読書で、前作までのユーモアさはどこかに置いてきちゃったのかな。それでもとても好きな作家である。現在は家族とともにベルリン在住とのこと。

  • 全体的に読みやすい文体。しかし、物語とその構造は一筋縄ではない。

    Ⅰ 最後の対位旋律がわからない。妄想?父の傲慢さを際立たせているのは紛れもない事実だ。植民地主義のテーマが物語の根底にある。家父長制への批判も。一筋縄ではない家族像も描かれている。

    Ⅱ Ⅰを現実として、Ⅱはそれを夢にしたような象徴性に溢れている。ここでの対位旋律はわかった。暴力、沈黙の描き方がとりわけ象徴的だ。

    Ⅲ Ⅱとは同時代であることがいくつかの表現から判明する。主人公は自己を生きる。沈黙から言語に移る過程が印象深い。主人公に対して、対位旋律で描かれる若者はなんなのか。男性性の器の小ささをあぶり出すためか。

  • 中編3編
    アフリカとフランスの混血という出自だったり、フランス人と結婚しての移民だったり、流されているだけでは生きていけない状況の中でいろんな感情と闘いあるいは殺しあって目の前の一日一日に縋り付いている。その心理描写が巧みで、情けない男たちに腹立ちながらノラ、ファンタ、カディに引き寄せられる。鳥たちも象徴的だ。

  • アフリカとフランスを舞台にした、三つの中編を収めた作品。三話ともそれぞれの「逞しい女」が登場しする。

    各編のつながりはあるものの、そこはさほど重要ではなく、一編ずつ独立した話として読んだ。
    一話目は、フランス人の母とアフリカ人の父をもつ娘の話。横暴な父親に怯え苦労しながらも弁護士になったが、今も昔も家族に翻弄され繊細な神経を張りつめながら生きている。二話目は、人づき合いが下手で何をやってもうまくいかない神経症的な男の目をとおして、アフリカ系の妻の様子が語られる。最後は、夫を亡くしたアフリカ系の女性が、難民となってヨーロッパを目指し悲惨な経験を重ねていく。

    フランスでは最高の文学賞を受賞ということで初めて読んだ作家だったが、一、二話は病的なほど神経質な主人公の言動に、神経が逆なでされる思いだった。移民の多いフランスの、アフリカとの関係を含めた背景をもっと詳しく知っていれば、より魅力を味わえたのかも。暗喩も多く、深く考えながらの読書で、重厚さに息苦しくなる一冊だった。

  • 2019/7/31

  • ・マリー・ンディアイをはじめて知りました
    ・ガイブンキョウクの読書会の課題本でした。
    ・3つのパートに分かれていて、それぞれアイデンティティの問題を抱えた人々がでてくるんだけどどこかでそれぞれがつながってたりそうは見えなかったり曖昧で五里霧中の中を進んでるようでした。
    ・一話目の弁護士のノラと父の関係。弟のソニーとの関係。話の辻褄が合わなくていったい誰が真実を語ってるのか?って思ったけど、真実なんてないのかもしれない。
    ・2話目の移住先で教師の職を捨てなければならなかったファンタ、沈黙を通すことで主張できる何かがあるのかもしれない。夫のルディの話ばっかりだが、車でひいたノスリはいったい誰の化身だったのかが読書会の話題にでた。そしてときどきでてくる太字の謎
    ・3話目かカディ・デンバの話。自分がカディであるという以外何もなく流されているようにみえるが徐々に力をもっていく。この話賛否両論に分かれた。
    ・マリー・ンディアイに詳しい方が来ていて彼女の生い立ちやらなんやら聞けた。現代フランスの最重要作家らしいが少々読みにくいし読み取ることができればもっと楽しめると思った。

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