- Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093776
作品紹介・あらすじ
〈全米批評家協会賞・PEN/マラマッド賞受賞〉さまざまな時代や土地を舞台に、簡潔で深い筆致で描き出される人のあり方。三十四篇を収録したユダヤ系アメリカ人作家の集大成となる傑作短篇集
感想・レビュー・書評
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34編の短篇集。
ユダヤ系の話が多く、その世界にやっと慣れてきたら、話が終わる。
あまり面白く感じなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「「嘘はね、美しい嘘は、自尊心にはなくてはならないものなんだ」
「ウェイターの自尊心に?」とわたしは訊いた。
「私の自尊心にもだ。嘘を真に受けることは大事な能力なんだよ」」
キェシロフスキの描くようなざらざらとしたあたたかさ。とてもすき。
語られていないはずの心情が、見えていないはずの過去や未来の風景が、なぜだか心に流れこんでくる。静謐なさびしさ。けれど、いままでけっして言葉では埋めることのできなかった心許ない場所が、ゆっくりと満たされてゆくよう。とてもこころづよい。ひとつのセンテンスから、無限の情景がひろがってゆく。わたしたちじしんに託された、小宇宙と叡智。そこからあらゆる感情を刺激してくる魔法がはなたれる。感じたいのなら、識りなさい、と。そして、涙をながすことをゆるしてくれる、marginがあたえられる。
きりとられた人生の断片、こころが動いたあの瞬間、それらがひっそりとしまわれていて、うれしい。苦しみや痛みをとおってきたのは、彼女の作品にゆっくりと身と心を浸すためであったとおもうくらい。埃まみれの疲れた身体に、じわぁんとしみる。あたたかい。けれどさびしい。わたしはこのさびしさと痛みと世界のどうしようのなさを、ずっと忘れずにいたいとおもった。
「「それに、ぼくらの大切なものは砂の上にある。ぼくら全員、それがわかってる。きみもわかっている」
「ダイヤモンドのこと?」
「ダイヤモンドは炭素だ。ぼくが言っているのは形而上学的な砂・・・・・いや、隠喩的な砂だな」そう訂正すると、彼が急に幼く見えた。「流れていくんだ、砂はね。ぼくらを放り出す、あるいはしぶしぶ受け入れる。ぼくらはどこにも属していない。だからそれぞれの世代がほかの場所へ逃亡していく」」
「海の怪物ってことね。わたしたちのような小学校教師はたくさんの事実のまわりを回ってるだけ。似非学者」
「家庭生活が素晴らしいと思えるのは、こうして夜の終わりにその生活が繰り広げられているドアを閉め、廊下を横切り、ふたつ目の、自分の部屋のドアを閉めることができるときなのだ。」
「ふたりは味わわなければならない失望を味わい、与えなければならない許しを与えることを学び、どんなことが相手に不安を与えるのかを慎重に心に留めることになるだろう。」
「ナンシーの体が舞い上がった。切り離され、浮き上がった感じがした。ナンシーにはわかった。打ち負かされることは、重荷を解かれることなのだ。」
「「じゃあ、なにに興味があるの?先生にとって超越的な価値ってなに?」
この台詞が自慢らしい。薄い笑みがそれを物語っている。そう、もし具体的に挙げなくてはいけないなら、正直さの相対的な価値、誠実さの重要性・・・・・「真実だね」彼は知らず知らずのうちに嘘をついていた。」
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よかった。特に「上り線」「連れ合い」「双眼鏡からの眺め」「自恃」がよかった。思わず読み返したくなる。
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より開かれた人間になるきっかけと、未来を信じる強さを与えてくれる短篇の題名を、ひとつひとつ詩のように暗唱したくなった。プロットと人物描写からこぼれ落ちる細部に目を凝らし、何か微妙で、繊細な差異を結ぶと、絵画的な文章は陰影の色彩と動きを伴うようになる。背表紙が語りかけやすいように特等席を設け、イーディス・パールマンと向かい合うことを通じて、書き手の仕掛けや創意工夫を見落とさず、言葉を深く理解する技術を磨いてゆく。
アン・パチェットの序文、古屋美登里さんの訳文を読めたのはとても幸せなこと。大きな拍手を送りたい。 -
「蜜のように甘く」がすごく良かったのでこちらを読んだがそれなりに良かった、というところか。ユダヤ色が濃く作家がユダヤ系だということに初めて気づいた。「蜜のように…」は、日本向けに特定宗教・文化色がないものを選んであったのだろうか。
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Edith Pearlman(1936年生まれ)
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この短編集に出て来る様々な老夫婦の姿は沁みる。『ゴーン・ガール』の夫婦とは真逆だ。ユダヤ社会の話も興味深かった。アメリカ作家なのに、ヨーロッパの香りもする。
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短編集。まあまあ好きな感じ。表題の双眼鏡からの眺めは、短くて印象的な話。好き。
宗教とか、民族のことは、真に理解するのは難しいところもあるけど、押し付けがましくなくて好印象。 -
背景の文化が違うからか、書かれている話が好みでないからか、まったく楽しめなかったので中断。
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アリスムンローと比肩されるだけある、勝るとも劣らない優れた短編。人生が凝縮されている宝石の数々と思った。