- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096388
感想・レビュー・書評
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すごくハラハラドキドキするノンフィクションだった。最新曲を盗んでアップしている人たちって、曲を無料で聴きたいとかそんなところは通り越して、スリルジャンキーになってしまうんだなあ。音楽はこのような段階を踏んで無料になってしまったけど、他の分野も似たような経緯を辿るんだろうな。こないの
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音楽コンテンツにまつわる三つの話がクロスする。
◯MP3という規格を誰がどんな経緯で作ったか。
◯MP3が登場して高音質なまま圧縮できるようになったことで、組織的に音楽を盗んでアップロードする集団が登場。彼らの手口と組織の最後。
◯同時期に活躍した大物プロデューサーの視点からみた業界の移り変わり。
特に音楽コンテンツ窃盗団の話が興味深かった。これじゃ作る側はやってられない。 -
音楽がタダになった理由
(1)音楽の圧縮技術の向上
(2)音楽リークグループの出現
(3)広告収入という新しいモデルの登場
MP3の意図しない広がり
悪気なくやっていたことがまさかの展開に
音楽ビジネスの儲け方の変化
VEVOの発想、アップルの台頭
裁判ではほぼ無罪に -
この20年開で大きく市場規模が縮小した産業を1つ挙げるとすれば、それは音楽産業を置いて他にない。その要因は当然、mp3とファイル共有サービスの登場にあるわけだが、本書ではその歴史を「mp3という極めて優れたファイル圧縮フォーマットの開発」、「1990年代後半から2000年代のヒップホップの台頭を独占したユニバーサル・ミュージック」、「ありとあらゆる音楽をリークし続けたインターネット海賊集団」の3つの軸から紐解くノンフィクションである。
mp3の開発を巡っては、巨大レコード会社がバックにつきmp3よりも明らかに劣った技術規格であったmp2との熾烈な規格競争をいかにmp3が勝ち抜いたかが描かれるし、ユニバーサル・ミュージックについては天才的なビジネスの才覚を持つジム・モリスがどのようにヒップホップのここまでのブームを予期して、多数のラッパーやトラックメーカーを傘下に収めることに成功したか、など、様々な角度から、音楽産業が破壊されていく偶然の物語が紡がれていく。
特に「シーン」と呼ばれたインターネット海賊集団の話は、実は自分がダウンロードしたmp3も、どこかでこの「シーン」がユニバーサル・ミュージックのマスターCD工場から盗まれ、ウェブ上にリークされたファイルにたどり着くという点で、全ての人間がその祖先を辿っていけばミトコンドリア・イブに辿り着くのと同様のミステリアスさがある。 -
mp3を開発した技術者、音楽業界の大物、そして海賊たちの三者、それぞれの視点を切り替えながら描いていく手法は、ドキュメンタリーでありながら小説のようで、筋立ての面白さが特徴。事態の推移は勿論、彼らの人物像や人間関係まで描き出している。「盗み」を容易にした圧縮技術やP2Pソフトは、そういえばそんなのが流行った時代もあったなと、CD時代を通り越して、それすら懐かしく感じられ、ストリーミングが主流になりつつある今、世の中の移り変わりの激しさを実感もした。
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【所在・貸出状況を見る】 https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/207197
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苦労の末、音楽の圧縮ファイルを生み出した技術者と研究仲間、
新たな音楽領域を開拓してのし上がってきた大手レーベルのCEOとその周囲の人々、
音楽共有ファイルの世界でリークにのめりこむ、CD製造工場の従業員とリーク仲間、
一見全く関連なさそうな3つのグループがあるきっかけで絡まっていた糸がスルスルとほどけるようにつながる。
音楽にもテクノロジーにも全く詳しくないですし、
次々と出てくる登場人物を追うのもなかなか大変ですが、
ストーリーに入り込んで一気に読んでしまいました。
ネットから音楽や映像がダウンロードできたり、
ストリーミングてきたりするというのは、
今では当たり前のようにできますが、
色んな方が関わって可能になったのだと感じた次第です。 -
技術的な話から始まったので、はじめはなかなかエンジンがかからなかったが、読んでいくうちに止まらなくなった。mp3ってそういうものだったのか!と初めてわかったし、それがCD売上に依存する音楽業界をいかに「ぶっ潰し」たか、そしてそのキーを握っていたのは一握りの男たちだったということが書かれていて衝撃を受けた。技術というものはいつも、発明した者の思惑を外れて使用され大きな影響力を持つ。「デジタル時代に資本主義がうまく機能するには、シェア行為は罰せられなくてはならない。」(p.206) 著作権所有者が希少性を作り上げることで利益を生んでいること、しかしそれがテクノロジーの民主化により難しくなっていること。「ソフトウェアが特許で保護されていなければ、mp3は絶対に存在していなかった。」(p.317)という矛盾。これは音楽業界の話だけれども、もっと敷衍すれば、世の中を動かしている経済の話になり、政治や思想信条の話になる。そう考えるとかなり興味深い。それにしても、ダグ・モリスやり手だな~、すげー。
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mp3開発の裏話は非常に面白く、この技術なしには今の音楽の状況はなかったんだと理解出来た。
それにしてもアメリカでこんなにも大胆に新譜のリーク合戦が行われていたとは驚きである。
日本でも発売前の漫画のリークが問題になったが、犯人はお金よりも1番にリークすることが最大の目的である事が共通している。こんなことで音楽業界が衰退してしまっていることは非常に残念。 -
花泉図書館
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今でこそmp3ファイルをダウンロードしたり、CDからリッピングしてスマホで聴くことが当たり前になっているけど、CDやMD、下手すればカセットテープで聴いていた20年前と比べると大きく変わっている。
そんな変化をmp3開発者、音楽業界の大物、海賊ネット(違法ダウンロード)の中心人物達のエピソードを交えて綴られていて、大変興味深く、楽しんで読めた。 -
CDからmp3へ、とか、アルバムからライブへ、とか音楽業界のビジネスモデルは縄文時代から弥生時代へ、ぐらいに変化した、と聞いていますが、音楽の縄文と弥生の間の革命の物語。革命と言っても勇ましいものはなくてぐちゃぐちゃしてて当事者としても何が何だか解らぬうちに進行していく、今と地続きの10年ぐらい前の出来事を著者は丹念に取材しています。テクノロジーサイドからブランデンブルグという歴史の表舞台には出て来ない天才、コンテンツサイドからトレンドを更新し続けた音楽産業の大立者のモリス、そして本人の自覚無しに音楽の状況を変えた海賊としての一市民のグローバー、という3人の交わらないけど結果的に絡み合ってしまう人生を丁寧に拾っています。そう、歴史になる前の今だからこそのドキュメンタリーでした。この本の中ではスティーブ・ジョブズもちょっとしか出て来ない脇役。デジタル革命って数知れぬ無名の人々が意識せずに実現してしまう英雄無き革命なのかも、と思いました。
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画期的な音声圧縮技術MP3が世界水準になっていく前半はベータvsVHS戦争のような様相でさながらプロジェクトX。
後半はMP3とインターネットブロードバンド改革の流れでファイルシェアが進み、新譜を盗みいち早く「無料で」オンラインシェアする海賊リーク集団と大手レーベルの攻防が描かれる。
著作権侵害による業界の衰退と「音楽」の形を変えてしまった功罪が本当に面白かった。 -
大企業フィリップスの政治力の前に標準化に敗れ、mp3をWebに無料で公開した、失意のドイツ人技術者(特許は取得していたので、その後はライセンスで巨万の富を築く)
アメリカの片田舎のCD工場よりCDを盗み出し、全世界に拡散さることになった黒人労働者(実刑判決を受ける)
世間の非難を浴びるラップを売り込みCD業界を牛耳ることになる強欲エグゼクティブ(年収1400万ユーロ!)。
彼らの個々の欲望が、インターネットの発展と結びついて、結果的に音楽産業自体を破壊してしまった物語。
ダウンロードを繰り返し、自分のHDDの中にmp3アーカイブを作った人たちも、CDというもの”物”自体が無くなれば、そんな行為も廃れる。物があってのコレクション。ストリーミングとクラウドの時代には過去の話となりつつある。 -
夢中になって読んでしまった。
本当に映画のようなノンフィクション。
mp3の誕生からそれがどのように拡大していったのか、既存のCDというパッケージの商売をしていた業界がどのように変わっていったのかをこんなにもドラマチックに描けるのは本当にすごいと思った。
企業と海賊達が繰り広げていた争いのピークの時期2000年から2006年くらいの時期は音楽が死ぬほど好きな自分の中でも一番いろんな音楽を聴いていた時期だと思う。
たしかにその時期はP2Pやトレント、CCCDなど色々なものがあったなと思い出す。
インターネットの力が既得権益を崩壊させた大きな出来事であり多くのユーザーが望んでいた形に色々な出来事が複雑に絡みながらも実を結んでいったことに資本主義の真理のようなものを感じる。
またこの本がひとつの企業を主人公にしているわけではなく、しかも関わった人間が身分も分野もまったく関係ない人達であり、そんな人達がある時期に攻防を重ねまたそれぞれの道を歩んでいくことが本当に映画のようだと感じた。
アランエリスが著者に送った最期のメール「あれはボクの人生の一時期のことで、楽しんだけれどもう過去のことだ」の言葉が本当にカッコイイ。 -
mp3という技術とそれを無料でシェアする海賊盤サービスが音楽産業を破壊する経緯を個人のストーリーに光を当てて語った本。mp3の技術者、音楽ビジネスで働く人、音楽を盗む人、シェアする人それぞれの話が並行して進み、中盤からそのドラマが交錯する辺からかなり惹き込まれました。
未だにCDを買い続け自分でも作る人間としてはなかなか受け入れ難い内容ではあるけど、本自体はドラマティックで面白かったので映画になってほしいところ。 -
映画化してほしい
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<目次>
イントロダクション
第1章 mp3が殺される 第2章 CD工場に就職する
第3章 ヒットを量産する 第4章 mp3を世に出す
第5章 海賊に出会う 第6章 ヒット曲で海賊を蹴散らす 第7章 海賊に惚れこまれる
第8章 「シーン」に入る 第9章 法廷でmp3と戦う 第10章 市場を制する 第11章 音楽を盗む
第12章 海賊を追う 第13章 ビットトレント登場
第14章 リークを競い合う 第15章 ビジネスモデルを転換する 第16章 ハリポタを敵に回す
第17章 「シーン」に別れを告げる 第18章 金脈を掘り当てる 第19章 海賊は正義か
第20章 法廷で裁かれる エピローグ
<内容>
音楽がmp3とネットによってどんどん浸食され、現在のようなネット配信(それも1曲ごと)の売り上げとなり、ライブが主流になる(アメリカも日本も変わらないらしい)、その流れを追いかけたノンフィクション。前半はmp3の技術を作ったドイツの技術者がなかなか日の目を見ない話。途中からそのmp3の技術を利用して、音楽のリリース時期より早くその楽曲をネット配信することに惟日をかける世界の若者たち(その中には、ユニバーサルのCD工場からCDを盗み出す話も)の話。最後は彼らは「海賊」として捕まるが、法律的にうまく裁けず(犯人たちも賢くて)、犯罪にはならず、その間にCDセールスが激減して、商売にならなくなる。なかなかエキサイトな展開だった。