零號琴

著者 :
  • 早川書房
4.14
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本棚登録 : 475
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098061

作品紹介・あらすじ

特種楽器技芸士のトロムボノクと相棒シェリュバンは惑星〈美縟〉に赴く。そこでは首都全体に配置された古の巨大楽器〈美玉鐘〉の五百年越しの竣工を記念し、全住民参加の假面劇が演じられようとしていた。上演の夜、秘曲〈零號琴〉が暴露する美縟の真実とは?

感想・レビュー・書評

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  • すごい。すごい壮大なニチアサ合同劇場版を見てるような作品だった。
    街全体を巻き込んだヒーローショー風大スペクタクル仮面劇って舞台立てがまずアツい。光景を想像するだけで超楽しい。
    その劇を取り巻く様々な人々の思惑や情念や、主人公ペアの驚き・戸惑いが渾然一体となって迎えた本番がまた最っ高のエンターテインメントなんだわ!
    神話の世界に特撮や魔法少女の表層を重ね合わせて、さらにその下の地層には美褥という星に秘められた凄惨な歴史と住民たちの秘密があって……
    何重ものメタファーをそっと剥がしながら「今の描写ってまさか……」と考察するのもまた楽しい、幾重にもレイヤーがかさなったこの感じ。表現する言葉はきっと色々あるけれど、敢えて作品のテーマに則って音楽に喩えましょう。

    最強のマッシュアップ・トラック、全人類必聴!

  • 感想はこちらに書きました。

    https://www.yoiyoru.org/entry/2018/11/18/231237

  • 音楽、とくに歌劇の要素をSFに取りこみ、飛さんらしい人体破壊の要素もあり、なぜかプリキュアらしきアニメ文化への愛もつまっといる、とても混沌とした作品だ。作者はこの作品を『エキゾチックな異星の世界におけるドタバタをえがく娯楽読み物である』と書いているけれど、正直その言葉から想像するような軽い読み物ではない。秋の破壊的な台風の時期に、個室にこもって読みふけったのは、環境としては最高だったなと思う。

  • こんなの書ける人がいるんだな……という。驚嘆。

    特殊楽器技芸士のトロムボノクと、超人的な力を持つよう遺伝子操作された種族・第4類改変態の美少年シェリュバン。
    彼らはとある大富豪の招きを受けて惑星<美縟>へ赴き、幻の巨大楽器<美玉鐘>の再建に関わる。首都<磐記>の開府五百年祭に合わせて演奏される秘曲<零号琴>、同時に演じられる特別な仮面劇<磐記大定礎縁起>。

    物々しく、重厚で、豪華絢爛な物語。
    凄いのは、こういうものを想像してみてと言われても覚束ないような、神話の世界みたいな光景が、文章を読むことよって簡単に、鮮やかに、脳裏に浮かんでくる。ミラクル情景描写。

    美玉鐘が鳴らされるシーンはこの物語の肝でもあるのだけど、信じられないことに、どんな音が、どのように鳴らされたのか、無数の鐘の音がどんな風に響き合って空間を埋め尽くしたのかさえ読むことによって”聴く”ことができる。

    こんなの書けるって……凄い。

    妙に情けなくてとぼけた感じのシェリュバンのセリフがちょっと息抜きさせてくれる。
    とにかく素晴らしかった。一日で一気に読んだというのではないけど、まるで中弛みしない、息もつかせない600頁だった。

  • すごかった… 4層ぐらいのレイヤーが重なりあって話が展開するところはただただ圧倒されました。読み終わって、しばらくぼんやりしてから冒頭を見返したら「おおっ!」となりました。すごかった。

  •  非常にスケールの大きなSFだった。といっても、銀河を股にかけて、という感じではないけれど。良い意味でぶっとんだSFだった。
     大假劇が始まってからの盛り上がり方が凄くて、図らずも(図れるものでもないけど)何度も鳥肌が立った。超ド級のヒーローショーを見ているような感じ。
     話が進むに連れて、一つの言葉や事物に幾つもの意味・価値が付与されていくので、あらゆるものが何かのメタファーなんじゃないかと、疑ってしまう。隠喩自体は一般的な技法だろうけれど、ここまで多重の意味を内包させるのはなかなかないんじゃないかな、と思う。
     面白く読んだけれど、一方で終わり方は少し寂しかった。感情的な意味でも、少し尻すぼみな印象を受けた、という意味でも。美縟という舞台に関しては、かなり仔細に(見える限りでは)余すところなく使い切った贅沢な話だったけれど、それを取り巻く轍世界や、ギルドの全貌、主要な人物についてももう少し掘り下げて欲しかった。長編シリーズの一本、っていう感じ。

  • 何層に渡るのか全く分からない程の重層的展開。それでいて物語を貫く一本の線。作者も言うとおり「新しい」ものではない。ではないが、このパイのような、ミルクレープのような...なぜか甘いものしか比喩に出てこないが、新しくないものでもひたすら重層的に編むことで、見たことのない世界が創出された気がしてならない。
    「あしたもフリギア!」など、その際たるものである気がする。誰もが知っているはずのもの、その枠組みの中に、どこかで見たことのあるものの中に初めてのものを見出す感覚。
    それでいて、読みやすい。複雑ではある。何だっけ、誰だっけと思うこともある。しかしその語り口、キャラクターの強さ、そして浮かぶ光景と鳴り響く音。大長編の中に、立体的な世界が確かに見え、聞こえた。
    SFに詳しくないので、細かい解題はできないのが悔しいけれど、圧倒的に押されて読んだ。読まされた。楽しい読書体験だった。

  • トロムボノクがまさかのどろろの百鬼丸。
    完全なウーデルス生まれであるパウルとクレオパトラたちの去り際が良い感じでした。良い意味でこの世界の続きが気になり、悪い意味で尻切れトンボ。

  • 闇鍋の詳細な食レポを読んだ。美味しいものは脂肪と糖でできている。
    いつものことながら高すぎる解像度で2部3部あたりはほんとむせ返るような文章なのだけれど、今回に関してはムチがあまりなくアメばかり与えられ続けて激甘のフィナーレを期待していたところ突然の無味!ああ!
    なので読後はちょっとしょんぼりしており星はこんなだけど、もしも次のアメがぶら下げられたら全力で喰いつきしゃぶり続けるに違いない。

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著者プロフィール

1960年島根県生まれ。島根大学卒。第1回三省堂SFストーリーコンテスト入選。『象られた力』で第26回日本SF大賞、『自生の夢』で第38回同賞を受賞。著書に『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』。

「2019年 『自生の夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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