- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152099112
感想・レビュー・書評
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下巻は、各種リヴァイアサン(政治権力)のうち、インド、西欧(近代)、アメリカ、中南米、アフリカ、現代スウェーデンの事例を紹介するとともに、理想の国家体制についての取りまとめとそのための方策を紹介。
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国家による暴力・専制や、社会による規範の押し付けや差別などから”自由”を構築するための要件は何かをまとめあげた大作。
上巻では、自由が成立するためには国家と社会の力学が相互に干渉しあいながらバランスする”狭い回廊”の状況下において、自由を圧制しようとする国家と社会の双方の力が制約された”足枷のリヴァイアサン”をいかに生み出すかが自由において重要であるという本書の理論フレームワークが描かれた。
下巻にあたる本書においては、このフレームワークを用いて、国家の暴力・専制が行きすぎた”専横のリヴァイアサン”、及び社会の規範・差別が行きすぎた”不在のリヴァイアサン”から抜け出すためのアプローチについて、実際に抜け出すことに成功した南アフリカやコロンビアの歴史を踏まえつつ、明らかにしていく。
人類の歴史を振り返りながら、自由というものが決して当たり前に得られるものではないという事実を改めて突き付けられつつ、過度なポピュリズムに陥りつつある諸各国の状況への処方箋としても示唆に富む。 -
個々の事例は分かるけど、全体的に何が言いたいかちょっと分かりにくかった。ただ、今現在でも民主主義で自由を享受できる国はかなり少ないのはわかったし、日本ももちろん問題は山積だけど、それでもかなり恵まれてるなと思う
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同じ著者による前著「国家はなぜ衰退するのか」では、リベラル・デモクラシー+自由主義経済が発展するために必要である一方、強権的政治による収奪的な経済制度が衰退に繋がることを説明したが、続編である本著は同様な主張をさらに精緻化して提示している。具体的には後者にも集権的独裁制度や社会主義計画経済、農奴制、無政府状態といった様々なパターンがあり、強権的政治による収奪的経済制度と一括りに説明するには無理があるということである。そこで本著では「国会」と「社会」の力関係の組み合わせという枠組みを提示している。この枠組みにより「衰退する」国家の様相を精緻に説明するととも、「繁栄する」リベラル・デモクラシー+自由主義経済の国家も安泰ではなく、「国家」と「社会」の力関係が変われば、「衰退」する側になりうることを古今東西の豊富な事例を挙げて説明している。
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Amazon Audible にて。ワイマール帝国の民衆がなぜ自ら主権を手放してしまったのか、とか、日本の戦後の民主化が成功した理由、とか、上巻よりも興味が惹かれるテーマが多かった。日本の民主化はエリート層の取り込みがカギだった、と言う話みたいだから、あまり胸を張れるような例ではないけど。
スノーデンについても触れられていて、彼がなにを暴露したのかがようやく理解できた。国家による国民の監視はテロとの戦い云々なんだけど、そもそもアメリカの国家の成り立ちから踏まえないといけないと。
国家と社会それぞれが力を持ち、共に影響を与え合いながら自由を維持していけるよう、赤の女王効果を保っていくことの重要性は理解できた。上下巻と長いんだけど主題が分かりやすいから読みやすくはあると思った。 -
社会と国家の力の釣り合いが取れたところに、人々の自由が守られる世界があるという枠組を作り、それに色々な時代の様々な国を当て嵌めて解説する本。人々の自由が守られる世界を「足枷のリヴァイアサン」(例えばスウェーデン)と呼び、それを実現するのは中々に難しい狭い回廊である。国家の力が強くなりすぎると国民を一方的に支配する「専横のリヴァイアサン」(例えば中国)に、社会の力が強くなりすぎると国家権力が存在せず公共サービスの提供も乏しい「不在のリヴァイアサン」(例えばインド)になってしまい、個人の自由は失われる。国家に必要な公共サービスを提供できるための力を与えつつも、暴走しないように足枷をはめることが自由を守っていくために重要であるという話。今一つピンとこなかった。
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民主的で自由な社会(足枷のリヴァイアサン)は歴史の必然ではなく国家と社会との絶え間ない競争と緊張関係(赤の女王効果)によって辛うじて成り立っているのだというモデルが新鮮だった。豊富な実証はこのモデルへの説得力を生む一方様々な疑問も湧いてくる。