オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

  • 早川書房
4.43
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本棚登録 : 322
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099884

作品紹介・あらすじ

癖があり頑固だが、ときにやさしく勇敢なオリーヴ・キタリッジ。老境を迎えた彼女の日々と、海岸沿いの町クロズビーの隣人たちの悲喜こもごもをつづった傑作ぞろいの13篇を収録。ピュリッツァー賞を受賞した傑作『オリーヴ・キタリッジの生活』11年ぶりの続篇

感想・レビュー・書評

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  • 『オリーブ・キタリッジの生活』に引き続き、この続編を読み始めるや否や、やっぱり好きな作品だと感じた。オリーブに限らず、作中の人物が感じることに腑に落ち、行動に起こすことへの共感度が半端ない! とりわけオリーブのキャラクターに惹かれるというのでもないし、彼女と似たような人生を過ごしている訳ではない。まあ、彼女の年齢を○周り遅れで追いかけてはいるのだけれど。

    では、どうして、どこにそんなに惹かれるのか前編の感想で簡単に挙げたが、本作ではこんなフレーズにハッとした。p156「秘密は、いつでもあるものです。…」、このシリーズは、誰にも言えず自分だけで抱え込む秘密を持った人がよく登場する。そういうことってあるよね、と作者が肯定してくれるように。p286「ボブの内部で、ずっと忘れていた悲しみが動いた。彼はこの兄のことを懐かしみ、その兄はメイン州を懐かしんだ。ところが兄が妻にしているのはメイン州を嫌う女だった。…」(ボブはメイン州、兄夫妻はニューヨーク在住) 自分の身近な人々であっても共有できない部分がある。それを肯定も否定もせずにただ寄り添うというこの場面。お互い無理しなくてもいい、ただ尊重しあえたらいいんだよとという、作者のメッセージと解釈した。

    やっぱりエリザベス・ストラウトの人間観察は鋭く深い。『オリーブ・キタリッジ』という人物を創作し、彼女に人物の心情を載せているのかなと感じる場面も。当時の大統領に我慢がならないオリーブ。出版が2019年だから、成程と予想がつく。
    私自身、このシリーズにハマったのか、それともエリザベス・ストラウトの描く作品との相性であろうか? 是非とも別の作品を読んで彼女の描く世界観を楽しんでみようと思う。

  • 「老いる」ことが、切実に我が身へと迫ってくる作品。前作にあったオリーヴの「人となり」は、変わらないが、老いが彼女を絡めとって行く様が少し痛々しく感じた。だけど、これが現実なのだな、と思わせるところが、この作品の凄さだと思う。オリーヴの周辺で生きる人々にも焦点を当てているが、それぞれに問題を抱えつつ懸命に生きる様子になぜか勇気をもらえた。生きることはしんどい。けれど、たまには良いこともあるさ。という、オリーヴの声が聞こえるようだ。

  • 1作目は自分の読書歴オールタイムベストに入る作品。人生に寄り添ってくれる小説というのでしょうか、中高年の方に強くお勧めできる小説です。で、その続編が10年ぶりに出て迷わず買ってから2年放置しましたが、初読から10年、細部を忘れてるので、今回最初から読み始めやっと通読できました。
    構成はオムニバスと言われる連作短編集で、オリーヴは主役、脇役、チョイ役と年齢順に出てきます。2冊で40代から86歳までのオリーヴが、架空の街、メイン州クロズビーの人々と共に描かれます。その意味で2作はきれいにつながっています。1つの短編を時間をかけてしっかり読んでいくことが吉。
    オリーヴは、かなり嫌味な毒吐き女性で感情移入は難しい人物設定です。感動とは程遠い、普段の生活が淡々と進むなかで、ちょっとした波乱や、老いや寂しさを感じさせるトラブルが丁寧に描かれていきます。
    前作の完成度は素晴らしい分、続編は楽しみだけど本当は知りたくない、という感じでしょうか。続編は晩年の枯れを語る物語で、老いや病気、あきらめ、寂しさが前作よりさらに色濃くなって、それが読者の気持ちに反映してくる。誰しも老いていくし、気が付いたら自分はそういう歳になったけどまだまだ心は若く20歳、まさかすぐに死ぬなんて思いもしてない。でもいつかは現実に死を自覚する時が来る。その時にどう向き合うのか、それを問うてくる小説。
    そういったジャンルがあるかわからないけど、老境文学として胸に深く染みわたる本。もし10年後にまた読めたとき、現存在における老いと寂しさはどう自分に迫ってくるだろうか。
    沈思して黙考したい。

  • 「わからないことは、わからないままに受け止めて、心静かに耐えること」

    どろり、じとり、とした読後感

    1作目から歳をとったけど、オリーブはオリーブだった

  • これは前作同様、深いのに軽やかで、人生の真実に近づける感じ。老年に達したオリーブと周りの人々の暮らしが描かれるが「なんでもない日常」なんてないのだなと思わされる。今日が人生の変わり目かもしれないのだ。
    80過ぎまでのオリーブの晩年は穏やかとはいいがたい…いや、境遇的には満たされてるけど…で、老いを感じる私としては、そうかこうなっていくのかというリアルな恐れと諦念を感じるが…そうね、それでもいいことも起きるし、自然は美しいし、進んでいかないとね。
    訳が見事!会話の自然さにうなる。

  • “「わからないことは、わからないままに受け止めて、心静かに耐えること」”(p.172)


    “人間はそもそもさびしい。そのことを軽く考えてはいけない。暗闇がぽっかり口を開けたようなさびしさから逃れたくて、人はさまざまな選択をする。その判断は尊重されるべきものである。”(p.287)

  • 221201*読了
    「オリーブ・キタリッジの生活」が好きだったので、続編が出たと知った時は喜びました。

    この2作が好きな人のことは、きっと好きになれると思う。
    メイン州クロズビーにいる、なんてこともないおばさん、オリーブ。癖が強いといえばそうなのだけれど、それでもどこかには必ずいるであろうおばさん。
    前作ではおばさんだったのだけれど、今作では夫に先立たれ、新しい恋をし、再婚をして、おばあさんになり、死と向き合う。
    その様子がとてもオリーブ的で好もしく、ほっとしました。

    連作短編集の中で、どのストーリーが好きかと考える。どれも好きだなぁ。中でも印象的なのは、新しい旦那さんとの関係が築かれるお話と、最後のお話かな。

    自分がまだ経験していない老いて、死が目の前に迫ってくる感覚。
    きっと自分も長生きできたら、こんな気持ちを味わうことになるのだろう。
    それは静かな諦めと覚悟なのだろう。

  • 「オリーブ・キタリッジの生活」の続編。主人公オリーブはさらに年老いて、前回の中高年小説からついには死や孤独という不安にとらわれる老人の小説になっている。だが、ここに書かれる人間関係の葛藤やオリーブの気持ちの変遷は、老人だろうが若者だろうが人間は同じだということを感じさせるもので、むしろ前作よりも普遍的な内容になっている。

    夫の元愛人をこき下ろしたくなる。フレンチ系の住民に対するちょっとした偏見、でもそんな教え子が有名人になっていたらちょっと誇らしく、会ったことをみんなに言いたくなる。一方でソマリ人を差別しちゃいけないという正義感。老人ホームに入っても、一緒に食事する相手や仲良しがなかなか見つからない。医者にほのかな恋心を抱き、優しくなった息子のところの孫も可愛く思えてくる…年齢層やら設定は違えども、描かれる人間模様は学園ものに当てはめてもあり得そうだし、年老いても人間くさいオリーブとその周囲の人たちの言動が面白い。

    前作よりもメイン州の特徴(カナディアンフレンチの存在、スコットランド系、ソマリ人コミュニティ)が濃く描かれていて、米国地理に全く無知なので、地図でメイン州の場所を確認しながら読んだ。なるほどこんなにカナダに近くて北にあったのか、と今更。ケベック州の町並みを思い浮かべながら、架空の町感が減ったクロスビーを満喫できた。

  • 「オリーヴ・キタリッジの生活」書評 ふつうの人々 後半、神業の「化け」|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11648062

    オリーヴ・キタリッジ、ふたたび | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014705/

  • 最高。前作よりも一般ウケしそう感が増した。言ってみれば、分かりやすくなった。他人のことを、あーだこーだ言うんだけど、あーだこーだの話を聞き、聞かされるんだけど、揺るぎない自分、迎合しない自分が残る。

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