著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163245300

感想・レビュー・書評

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  • こちらもまた、戦前戦後の重々しい雰囲気の中に耽美さを感じる短編集。薄暗いイメージだけれど、セピアや白黒ではなく、はっきりと色が感じられるのが凄い。少し怖い内容なのに、それでも目を離せない魅力を感じる。セイレーンの歌声に魅了された船乗りのような…。

  • インパール戦線から帰還した男はひそかに持ち帰った拳銃で妻と情夫を撃つ。出所後、小豆相場で成功し、氷に鎖された海にはほど近い“司祭館”に住みついた男の生活に、映画のロケ隊が闖入してきた…。現代最高の幻視者が紡ぎぎ出す瞠目の短篇世界。(アマゾン紹介文)

    空の色さえ


    想ひ出すなよ
    妙に清らの
    竜騎兵は近づけり
    幻燈
    遺し文

    掲載作品がほぼ2000年代の、比較的新しい短編集。
    すでに何作品も読み、慣れているはずなのですが、1週間も読まないでいると、やはり文章にくらくらします。
    印象に残っているのは、『想ひ出すなよ』。結末に至る女の子同士のやり取りにぞっとしました。
    あと、救いのなさすぎる『遺し文』も。読後感を流すため、急いで他のを読もうと思います。

  • ずっと気になってはいたのですがあまりに格式高いイメージでわたくしめ程度では楽しめないのでは・・と震えながら手に取りましたが、予想以上に読みやすいわ面白いわで驚きました。
    全部良かった・・・戦時中~戦後の日本を舞台に薄暗くもうつくしい記憶たち。
    皆川博子先生作品・・・こりゃはまる人はドはまりするわけだ・・・と知りました。
    ホラーってか幻想小説っぽいんだけど、でも艶っぽくてさびしい・・・。
    人間の業や悪感情みたいなものもさりげなく散りばめられてて暗めなんですけど、でもそれが読んでてキツくなくてむしろ甘美とさえ思ってしまう・・・。
    皆川博子先生は欠陥とか不完全な人体すきな方だったりするのかしら・・・『蝶』収録の「空の色さえ」は内翻足の女の子視点で、「艀」の青年詩人も脊髄を傷つけてたな・・・横瀬夜雨・・・。
    「蝶」の男も自身の中の欠落した部分を自覚して・・・な話だったし・・・。不完全さという薄暗い美・・・。
    「想ひ出すなよ」は女子校の闇(っていうと安直だが)・・・こじらせた文学女子が・・・っていうオチでぶっ飛んだ・・・。
    皆川博子先生は最後まで穏やかに悲しく終わらせるオチだけじゃなくて一気にドンッて突き落とす系オチも書かれるんだなって思った・・・。
    だから「龍騎兵は近づけり」もすき・・・。
    「妙に清らの」が一番薄暗く病んでて、私は好きでしたね!眼球!眼球!!
    オチが超絶幻想的で耽美で病んでてたまらない・・・。
    あとあれですかね・・・皆川先生は「間接的に関わった教養あるうつくしい大人に憧れる少年少女」ネタおすきなのかな・・・いいですよね・・・ドキドキ・・・。
    「幻燈」は日本文学定番の奉公娘と奥様の百合でしたね皆川博子先生もそこは勿論外さないのですねさすがです先生。
    その娘が最後まで・・・っていうオチまで含めて本当に最高すぎますネタバレなのでここでは書けませんがこれだけは言いたいです百合は最高(ここまで一息)
    「遺し文」も「間接的に関わった教養あるうつくしいどこか欠落した女性に淡い憧れを抱く少年」という性癖タコ殴り作品だったんですけど、これもラストで突き落とされました・・・かなしくもうつくしい一瞬の邂逅なんだよなあ・・・最高だなあ・・・(恍惚)
    皆川博子先生作品、興味と期待がでかすぎてどこから手を出せばいいのか不安だったんですけど『蝶』から入って正解だったっぽいです・・・。
    短編集なんですけど長さも丁度いいしめっちゃ読みやすい・・・。
    性癖含めて全部名作だし・・・、先生の読み手を最後までさらさら読ませる技術もすごい・・・。

  • 最近皆川博子にやられっぱなし。
    少女性を持ち続けられるのは本当にすごいことだ。

    義眼と目の穴のお話「妙に清らに」に萌えた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「少女性を持ち続けられる」
      それだけじゃなく、八百比丘尼のように超越した感じにゾクっとなります。
      「少女性を持ち続けられる」
      それだけじゃなく、八百比丘尼のように超越した感じにゾクっとなります。
      2012/08/02
    • 美希さん
      >nyancomaruさん☆

      なんか超越してますよね皆川さんって。
      今はミステリを書いていらっしゃるけど昔からの皆川さん特有の妖しい...
      >nyancomaruさん☆

      なんか超越してますよね皆川さんって。
      今はミステリを書いていらっしゃるけど昔からの皆川さん特有の妖しい文学性も生かされてるし。これは特に好きな短編集です。
      2012/08/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「皆川さん特有の妖しい文学性」
      はい。
      妖しさに惹かれています、文庫になった「薔薇密室」を読みたいと思っているところ、、、
      「皆川さん特有の妖しい文学性」
      はい。
      妖しさに惹かれています、文庫になった「薔薇密室」を読みたいと思っているところ、、、
      2012/08/04
  • 凄かった。特に最後の「幻燈」と「遺し文」は胃に来る仄暗さ。読了後、うわぁ…って言ってしまう感じ。戦争の時代、狂気じみた美しさと哀しさの中にある人々を短編で書き上げてる。
    詩や俳句を読む知性が私にあればもっと読み込めたろうなぁ。わたしの読解力の無さよ。

  • 幼少時の記憶をテーマにした短編集。幻想的であり、悪夢的であり、記憶の持つ禍々しさも感じた作品でした。

  • この人にしか書けない短編集だった。
    戦後の喪失感にあふれている。

  •  前向きでもなく、後ろ向きでもない。ただ「生き残ってしまった」「生きているのだ」という思いのもたらす鈍い痛みと悦びに、身を委ねるだけ。

     戦争が終わって、世の中の価値観はひっくり返って、けれど過去までもが消え去ってくれるわけではないのだ。
     ふわふわと彷徨い続けてはいるものの行き先はなく、鮮烈に焼き付いた記憶の影を未だ知らず追いかけているかのようだった。

  • 綺麗だけど薄暗くて、思わず覗き込むと生々しいこわいものを見てしまった…みたいな雰囲気。

  • 暗い中の先に、絢爛な妖しいものがうかがえるような世界。目眩ましにあったように、ちょっとぼんやりする。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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