紅雲町ものがたり

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163266503

作品紹介・あらすじ

離婚や息子との死別を乗り越え、老いても自分の夢にかけた大正生まれのお草。知的で小粋な彼女が、街の噂や事件の先に見た人生の"真実"とは-。オール讀物推理小説新人賞受賞作を含む連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 東京から上越新幹線で1時間ほどの丘陵の大観音像を川向うに拝む紅雲町で、和食器とコーヒー豆の専門店「小蔵(おぐら)屋」を営む老主人・杉浦草(そう)76才の物語です。

    【紅雲町のお草】
    無料でコーヒーが一杯飲めるのが評判の和食器とコーヒー豆の店「小蔵屋」の杉浦草は、客が話している紅雲町のマンションの出来事に不信を持ち調べて行くと、少年が虐待を受け死にそうなのに気が付く。マンションの近くを調べていると痴呆による徘徊と思われて警察官が現る。意を決してマンションに忍び込むと盗人と鉢合わせになり、草は、盗人を雇って…。➡これは面白い、ほんわかしたミステリーだね。

    【クワバラ、クワバラ】
    10年前に小蔵屋を作るために古民家を買いに行った先で、小学校で2年ぐらい一緒だった桑原秀子と再会した。草の秀子への思い出は、さんざん嫌がらせをされた……こと。古民家は、秀子さんの父が住んでいたもので、草が頂いた屏風に秀子への想いが綴られていた。その秀子が失踪した……。➡嫌な思い出から静かに心が落ちつく。こんな物語もあるのですね。

    【0と1の間】
    草を煩わせているものが2人いる。一人は、草がコンピータの操作を習うために週二回家庭教師を頼んでいる、国立大の学生白石と。千葉で医師をしていたが、土砂崩れで診療所が潰れて娘の所に厄介になっている宇島だ。白石は、傍若無人な妹に金をせびられとうとう無一文になってアパートを出て神社で寝ている。宇島は、医師としてのプライドが高く、やる事もなく無為に小蔵屋で居続ける。草は、解決できるか……。➡困っている時は、人を頼ることが必要だと草は諭す。

    【悪い男】
    窃盗事件が頻発する紅雲町で小蔵屋に荷物を運んでくるドライバー寺田の昔の親友大竹は、窃盗の罪で逮捕された。が、本人がアリバイを主張しない。寺田は、なぜアリバイを言わないのか疑問に思い、草と一緒に調べて行くと。意外な事実にいきあたる。➡ガラの悪い大竹は、アリバイを言うとある人に迷惑が掛かると思った。

    【萩を揺らす雨】
    草の幼馴染み清ちゃんこと衆議院議員大谷清治は、草に別れた女染谷鈴子が死んだことと、清治と鈴子の間にできた清史を連れ来るように頼む。鈴子は、清治の子を身籠ったまま染谷と結婚して染谷の子として育てる。京都へ着いた草は、自分が清治を想っていることに戸惑う。が、清史は……。➡人の子を自分の子として育てるご主人は……。

    吉永南央さんの本を読むのは始めてです。
    この本が吉永南央さんのデビュー単行本です。

    【読後】
    はじめての作家さんです。「紅雲町のお草」の話はとてもよかったです。ほんわかとした物語が続くかと思っていましたら、いろんな物語が織り込まれていて面白かったです。

    「図書館」
    紅雲町ものがたりー紅雲町珈琲屋こよみシリーズ1作目《単行本》
    2008.01発行。字の大きさは…中。2023.10.29読了。★★★★☆
    紅雲町のお草、クワバラ、クワバラ、0と1の間、悪い男、萩を揺らす雨、の短編5話。
    図書館から借りてくる2023.10.22
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    紅雲町珈琲屋こよみ一覧
    11.雨だれの標本
    10.薔薇色に染まる頃
    09.月夜の羊
    08.初夏の訪問者
    07.黄色い実
    06.花ひいらぎの街角
    05.まひるまの星
    04.糸切り
    03.名もなき花の
    02.その日まで
    01.紅雲町ものがたり 2023.10.29読了
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    参考
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    著者紹介
    吉永南央(よしなが なお)は、1964年埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年初めて書いた小説「紅雲町のお草」(「紅雲町ものがたり」に収録)で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。
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  • 紅雲町という町は群馬県前橋市に実在するというのが意外だった。てっきり架空の場所かと思って読んでいた。
    主人公の杉浦草は76歳の老婆。
    彼女が様々な事件に遭遇しながら解決?していく。
    シリーズ物として8作出ていて、その第一作。
    二作以降を読むか?と言われると微妙だが、老婆が主人公で事件と関わるという設定は興味深い。

    内容(「BOOK」データベースより)
    離婚や息子との死別を乗り越え、老いても自分の夢にかけた大正生まれのお草。知的で小粋な彼女が、街の噂や事件の先に見た人生の“真実”とは―。オール讀物推理小説新人賞受賞作を含む連作短編集。

  • 離婚や息子との死別を乗り越え、還暦過ぎてから自分の夢を実現した大正生まれの杉浦草
    その夢とは、実家を古民家風にリノーベーションし、
    コーヒー豆と和食器のお店を開くこと
    店の名は「小蔵屋」.無料でコーヒーを一杯飲めるサービスが評判の店だ

    お店の仕様がとっても素敵
    高い天井、剥き出しの古材の梁、漆喰壁、磨き竹と和紙でできた照明
    コーヒーのいい香りと全国の窯元から買い付けた趣味の和食器
    こんな感じかな?と脳内で想像しながら読むのが楽しかった
    私も訪れてみたい 
    いつもすっきりと和服を着こなし、大学生を家庭教師に
    コンピューターにもチャレンジするスマートさ

    お客の話には極力口を出さず、静かに見守るが、ここぞという時には、危険を顧みず一肌脱ぐ

    見る人によっては、「年寄りの冷や水」
    「若いものに任せて、年寄りはおとなしくしていて」
    と言うだろうが、お草さんに年齢が近い私には、とても眩しくかっこよく、憧れてしまう、

    昔は、見たからには放っておけないこんなお世話焼きのおばあちゃんがどこにでもいたんだろうなと思う



  • 一人で凛と暮らしているお草さん、カッコいいですね。重めのストーリーですが、76歳自営業で生きていくには、のほほんとしていられないということなのかなぁ。見習うのは…私は自信がありません。

  • どの短編も読み終えて、「はぁ~」となりました。文庫の表紙のイメージからもっとのんびりとした物語だと思っていましたが、そんな想像を覆されるお話たちでした。主人公のお草さんは、もう高齢という位置にいますが、まだまだ30代、40代のような雰囲気です。ご近所のさんや地域との関係や、自分や親友の老いに心を痛めていたり、淡い恋心にちょっと苦しんでいたり、過去の傷を癒し切れずに抱えながら生きていたりします。設定では76歳ですが、この年齢でもこういうことでじたばたしながら生きているんだなと思いました。

  • 和食器とコーヒー豆を販売しているお婆ちゃん日常ミステリー。
    短編集だったから、謎ときまでが早い。もう少し一話一話長い方が個人的には楽しかったな。
    ひとりひとりの心に迫る推理は好きなだけに、惜しいと思う。

  • 還暦過ぎてから、好きなことでお店を切り回す。
    素敵な生き方ですね。
    ちょっと周りが良く見えすぎていろいろ関わってしまうけど、基本的には関わらず、見守るようにしてくれていて近くにいると安心できる人だと思いました。

  • このおばあちゃん、俺は苦手だわ。ちょっと、見下ろされて気がする。でも、俺にもこういうところあるって思う、悲しい人間の性が出てる。人間関係って、やっぱり、難しい。

  • コーヒーを売る雑貨店のおばあさんの話

  • 老いても自分の夢にかけた大正生まれのお草は、
    マンションの一室で虐待が行われていると気づき、
    ひとり捜索まがいのことを始める。知的で小粋な
    彼女が、街の噂や事件の先に見た人生の”真実”とは…?

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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