- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163268705
感想・レビュー・書評
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不倫相手に引き上げられ、才能が開花させるが、徐々に相手は落ち目になる。そうした相手を母親に会わせるといった設定の短編が多かった。
「親にだけは言えない」というような状況で、あえて紹介するのはなぜだろう。受け入れて欲しいという願望?それとも受け入れてくれるはずだという信頼だろうか。
この母は案外スムーズに娘の行為を受け止めるのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
谷村志穂さんは「週刊ブックレビュー」で2度見ました。
「黒髪」のときは特集ゲストでした。
谷村さんの作品を読むのは「黒髪」に続き2作品目になります。
故郷を離れて東京で暮らす6人の女性の物語です。
6人の女性は基本的にはセレブに憧れ、故郷から逃げ出したいと思っています。
不倫の話が多いです。
高1の娘が都会に憧れていますので、あれこれ考えさせられました。
「ネイル」では35歳の主人公はコーヒー1杯1000円のホテルのラウンジで、マニキュアを塗ったり、携帯電話で通話しようとします。
これに対して、対照的な「よけいなことを言わない」利口な友人が描かれています。
「みにくいあひる」の主人公は独身時代はラジオ局勤務で、セレブな生活をし、男性遍歴も重ねました。
堅実な夫と結婚して子供も生まれましたが、「結婚によって仲間を失った」という意識があります。
昔の仲間と電話で話すときには「頭の中の消しゴム」を使って不都合なことを消去します。
夫は酒屋さんですが、酒屋さんがチェーン店になる話が持ち上がったときに、大きな失望を味わいます。
コンビニのような店になることに暗澹たる気持ちになり、昔の友人に話せるものが全てなくなったという絶望感にとらわれます。
この心理の描き方は面白いと思いました。
この短編集は1冊に6編入っています。
1編が30分くらいで読むことができますので、時間の区切りをつけながら読むのに良いです。
谷村さんはこういう短編集を他にも出しているようなので、読んでみたいです。