てのひらのメモ

  • 文藝春秋 (2009年5月15日発売)
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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784163280509

感想・レビュー・書評

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  • 裁判員制度を題材にしている。

     夫を自損事故で亡くし、保育所に通う6歳の子どもを一人で育てている広告広告制作会社で働くキャリアウーマン千晶。息子は喘息の持病がある。
     発熱し、保育園から連れ帰ってきたけれど、症状が収まったように見え、大事な会議があった千晶は子どもを家で寝かせたまま、仕事に戻った。夜8時までには帰宅できるだろうと。
     しかし、色々な事情で帰宅したのは夜10時過ぎ。子どもは喘息の発作を起こして亡くなっていた。

     千晶は「保護責任者遺棄致死」に当たるとして訴えられた。主人公福美はその裁判員に選ばれ、彼女の視点から裁判を描いた物語。

     これだけなら、罪に問われないのではないかと思った。子どもの命が奪われた事実は重いが、それでもそう思った。

     でも、裁判が進行していく中で、思いもかけない事実が明らかになっていく。その事実が分かる度に、読みながら「無罪」「有罪」で揺れ動いた。「あなたは母親でしょ」「私ならそんな行動は取らない」と思いたくなる場面もあった。

     母子家庭における育児と仕事の両立の厳しさを感じた。特に子どもに持病があると尚更に。「助けて」と近くに頼れる人がいればいいのだけれど。様々な事情で母子家庭になることがある。その人達をどう支えるか。大切な社会問題の一つだと思う。

     もう一点思ったのは、もし、千晶が「父親」だったら同じように訴えられたのだろうか、と。どれだけ重要な会議があっても、「母親なら」という偏見がありはしないだろうか。父親だったら、重要な会議があったら、それは仕方ないところもあった・・・みたいにとらえてしまうことがないだろうか。子どもの命は変わらないけれど。

  • 裁判員制度に着眼し、裁判の進行を中心に描かれた興味深い内容。
    派手な事件ではなく母親が喘息持ちの息子を不注意から死なせてしまい、母親の過失ににどれだけの罪が課せられるのか注目される。
    読み手によっても、様々な憶測や主観的な意見でそれぞれ違った考えがあると思う。
    盲点によって真実が置き去りにされてしまうかもしれず、人が人を裁くことの難しさを思わずにはいられなかった。

  • 昔に読んで忘れてました。。
    事件ではなくて裁判員制度の実例みたいな
    感じでした。
    こう、消化不良が残りましたな・・・。

  • わーい夏樹静子の新刊だ!ミステリだ!と思って読んだらあまりミステリではなくがっかりしました(図書館で借りたので帯やあらすじを見ていない)。
    裁判色が強すぎて、話題の裁判員裁判を小説にしてみましたって感じ。悪意があるわけでもないし被害者には罪がないし、なんとなく読んでて楽しくない作品でした。ミステリじゃないと思えば、まあ。

  • 子どもを喘息発作で死なせてしまった母親の量刑を問う
    くどい

  • 裁判員になるとこういうことになるわけだ。むむ~

  • 友人より借りた1冊。久しぶりに読んだ小説にてすぐに読破してしまった。導入時は騒がれたが最近あまり耳にしていなかった陪審員制度を取り扱った作品。 ごく普通の主婦の目線か被告、証人、弁護士、検事、そして裁判全体を見つめている。誰にでもあり得そうな心理を繊細に描写しており、ついのめり込んでしまった。貸してくれた友達に感謝。

  • 久しぶりに違う人の本読みました
    勉強になりました

  • 裁判員制度がテーマ。内容の知識なく読み始めたが、ぐんぐん引き込まれてしまった。最後にどんでん返しが来るのかと思ったが、意外とあっさりだった。田中好子主演でテレビ化されたドラマも見てみたい。

  • ……で?と言うのが一番正直な感想でした。
    意外な真実が明かされるところはビックリしましたが、
    この本全体を読んでも何が言いたいのかさっぱり分かりませんでした。
    裁判員制度について詳しくなったり、
    判決を下すことは難しいんだなあなんて思ったり、
    感じただけのような気がします。

    でも、この本を読んでいる間中、私も結構マジになって考えました。
    被告人にどんな罪が相応しいのかとかそういうことではなくて、
    被告人が置かれていた状況で、一体どんな気持ちだったのか。
    そして考えても、もちろん分かるはずはないのです。
    誰かのことを真剣に考えるということは、普段しないと思いました。
    それはあまりにも疲れることだし、答えのないクイズのようなものです。
    それに張本人ですら自分の気持ちなんて正確には把握してなかったりします。

    けれど真剣に慮ることは必要なのです。
    些細なことでも人を左右してしまうかもしれません。
    被告人だって、前々からこんな風に周りの人に考えられていたら、
    被告人席に立つことも無かったかも知れないなー

    なんて、つまりこういうことを考えさせたかった本なんでしょうか笑

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著者プロフィール

一九三八(昭和一三)年東京都生まれ。慶応大学在学中に長編『すれ違った死』が江戸川乱歩賞候補に選ばれる。七〇年『天使が消えていく』が再び同賞の候補になり、単行本化され作家デビューを果たす。七三年『蒸発』で日本推理作家協会賞、八九年に仏訳『第三の女』でフランス犯罪小説大賞、二〇〇七年日本ミステリー文学大賞を受賞。主な著書に『Wの悲劇』『』や「検事 霞夕子」シリーズなどがある。二〇一六年没。

「2018年 『77便に何が起きたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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